ポジティブな営業こそが、お客様の背中を押す
――和田さんは外資系の教育会社で国内1位、世界142ヵ国中2位という営業成績を収められ、まさにトップ営業として活躍されていましたが、最初から営業職志望だったのですか。
もともと積極的な性格ではなく、自分が営業職に就くとは想像もしていませんでした。学生時代に英米文学を専攻していたので、英語を使った仕事のできる外資系企業に入社し、そこで営業という仕事と出会いました。そんな調子だったので最初はなかなかうまくいかず、上司に「営業に向いていないから辞めたい」と伝えたところ、「最初から自分に向いている仕事なんてない。向いていないと感じるなら、自分で努力して向いている仕事にしていけばいい」と返された言葉が私のターニングポイントでした。
得意分野を伸ばすことも大切ですが、伸びしろは苦手なことに取り組むとさらに大きくなりますよね。特に、営業はどの企業でも必ず必要とされる息の長いポジションなので、力をつけておけば自分のキャリアにとってもプラスになると考え、努力を重ねていきました。
――営業の仕事のどういうところに苦手意識をお持ちだったのでしょうか。
人に断られたり嫌われたりすることがとにかく怖かったんです。商品を勧めたくても、相手にとって迷惑かもしれないと思うと、なかなか積極的になれなかったのですが、「情報を伝えるのが営業の役目。せっかく出会ったお客様に自分の持っている情報を提供しないのは、非常に失礼な行為」というあるトップ営業の言葉を聞いて、マインドを変えました。自分が少々嫌われても相手の役に立つ情報を伝えようと意識し始めたところ、コミュニケーションの設計が変わり、成果にもつながっていきました。
――周囲の言葉をきっかけにマインドを変えることができたのですね。かつての和田さんのように、相手の顔色を窺うあまり積極的になれない営業の方が意識すると良いポイントがあれば教えてください。
私が日頃から提唱している「陽転思考」、つまりポジティブに物事を捉える姿勢はすごく大事だと思います。たとえば、あるお客様から提案を断られたとします。そこで感じたネガティブな気持ちを引きずったまま別のお客様に会うと、人間は相手の行動を見て自分も同じ行動をとっているような反応を示すミラーニューロンを持っているので、ネガティブが伝播してお客様のやる気を削いでしまいます。未知の商品を検討するお客様の不安な背中を押せるのは、トークのうまい営業ではなくポジティブな営業です。
最近はコロナの影響で誰もが鬱々とした気分や不安を抱えていると思いますが、陽転思考以外にポジティブな状態を保つコツが能動的な振る舞いです。オンライン会議で積極的に発言したり、通勤が減って浮いた時間に企画をつくってみたり、能動的に振る舞うと気持ちが上がるので、意識してみると良いのではないでしょうか。