世界大手と遜色なき水準で増収増益を更新するヤクルト
「ヤクルト1000」などのヤクルト類やジョア、タフマン類などを販売しているヤクルト本社は、毎年のように売上高と利益を拡大中だ。2019年3月期の売上高4,070億円は、10年3月期2,906億円からは40%増である。およそ10年で売上高を4割アップしてきたわけだ。新型コロナウイルスの感染拡大による影響が懸念されるものの、20年3月期も増収増益予想である。
米国勢のペプシコ(7兆3,877億円)やコカ・コーラ(4兆992億円)、資本関係にあるダノン(2兆9,581億円)、それに食品飲料世界最大手のネスレ(10兆4,601億円)などと比べると売上規模は劣るものの、各種利益率は世界大手と遜色ない水準だ。
業種は異なるが、世界を代表するトヨタ自動車と比較してみよう。売上高営業利益率でいえば、トヨタ自動車の「7・2%→8・1%→8・1%」に対して、ヤクルト本社は「9・8%→10・8%→11・2%」という推移である。
つまり、ヤクルト本社は乳製品やジュースなど、100円の商品を販売するごとに10円前後の儲け(営業利益)を実現してきたわけだが、その売上高営業利益率を含め、売上高経常利益率、売上高当期純利益率は、3期連続ですべてトヨタ自動車を上回る。
経常利益が営業利益を上回っていることにも注目したい。経常利益は、本業による会社の儲けを示す営業利益に、営業外収益と営業外費用を加減して求める。財務面を含めた会社の総合的な収益力を見る指標だ。ヤクルト本社の経常利益は、営業利益を上回る状態が続いている。受取利息や受取配当金が、支払利息などより多いということである。
ヤクルト本社の主要経営指標の推移
ヤクルト本社が毎年投じる研究開発費は100億円規模。年間の設備投資額は300億円弱での推移である。それらを含めた現金ベースの出入りを示すキャッシュフロー計算書(CF計算書)も確認しておこう。
3期累計の「営業活動によるCF」は1841億円の黒字だ。原材料費や人件費、税金などを支払っても、乳製品などの販売で獲得したキャッシュが上回っていることを示している。
「投資活動によるCF」と「財務活動によるCF」は、入金より出金が上回っている赤字(△)状態だ。
ヤクルト本社は16・17・18年度の3期において、新たに獲得したキャッシュ1,841億円を活用して、投資活動と財務活動に1,598億円を投入。中国やインドネシア、ミャンマーなどにおける生産設備増強や借入金の返済、株主への配当金の支払いなどにキャッシュ投じてきたが、結果として3期累計で241億円のキャッシュを社内に積み増ししたわけだ。