国内大手IT富士通とNECが進めてきた撤退と選択
富士通が理化学研究所と共同開発しているスパコン「富岳」が、国際的な性能ランキングで第1位を獲得。処理速度などを含めて世界トップと評価されたわけだ。
JAXA(宇宙航空研究開発機構)が14年に打ち上げ、小惑星リュウグウでのタッチダウン・サンプル採集に成功し、年末に帰還予定の小惑星探査機「はやぶさ2」の製造を担当したのはNECである。相次ぐトラブルを克服して小惑星イトカワから帰還した初代「はやぶさ」に続く快挙だ。
こうした輝かしい実績とは裏腹に、富士通とNECは大きな課題を抱えているのも事実。負の遺産整理である。
現在採用の会計基準(IFRS)とは異なり日本基準によるものだったが、両社は過去に年間売上高5兆円超を複数回マーク。そのピーク時から富士通はおよそ1兆円、NECは2兆円ほど売上高を失ってきたことになる。
リストラにともないグループ従業員も富士通は6万人弱(20年3月期12万9071人)、NECは4.5万人(同11万2638人)減員させてきた。
2社ともIT企業大手としてそれなりの存在感を示しているものの、韓国・中国企業、それにアマゾンやグーグルなど米国勢の台頭を受け、国際的な地位低下を余儀なくされている日本企業の代表ともいえるだろう。
実際、富士通とNECの2社は、世界的に上位シェアを占めていたこともある半導体事業から事実上撤退し、携帯電話事業も手離した。国内トップ級のパソコン(PC)事業についても縮小・撤退。両社はブランドは残しつつも、それぞれに中国企業のレノボとの合弁に移行させているのが実態だ。
両社の事業撤退・組織再編はそれだけにとどまらない。富士通はHDD(ハードディスクドライブ)や個人向けプロバイダ、カーエレクトロニクス事業などを売却。電子部品を手がける富士通コンポーネントの経営も、ファンド主導に切り替えた。
NECも日本航空電子工業の子会社化を進める一方では、半導体製造装置子会社などの売却も実行。日産自動車との合弁で進めてきたリチウムイオン電池事業からも撤退した。
薄型テレビなどの中核技術の開発に早い時期から取り組んだものの、最終的には2社とも当該事業や子会社を譲渡・売却したことを覚えている人も少なくないだろう。