パーソルホールディングスは、全国の男女800人(男女各400人)に対し、「キャリアオーナーシップに関する実態調査」を実施した。キャリアオーナーシップとは、「個人が自分の『キャリア』に対して主体性(=オーナーシップ)を持って取り組む意識と行動」のことを指す。今回の調査では、自分の仕事内容やはたらき方を、自らの意志で決めること(=「自己決定」)と仕事の満足度や価値観、職場環境などとどのような関連があるかを調べた。
調査概要
- 調査名/「キャリアオーナーシップに関する実態調査」
- 調査手法/調査会社モニターを用いたインターネット定量調査
- 調査時期/2023年11月11日(土)~13日(月)
- 調査対象/全国 男女20~59歳 正社員(コンサルティング・調査業界は除く)
- サンプル数/800人(20代から50代までの男女それぞれ100人ずつ)
※人口構成比によりウェイトバックして集計
仕事やはたらき方を自らの意志で決めることを意識している人は約半数、40代から急激に増える
「自分の仕事やはたらき方を自らの意志で決めることを意識していますか」とたずねると、およそ半数が「意識している(「意識している」と「やや意識している」。以下、自己決定を意識している層)、30%弱が「意識していない(「あまり意識していない」と「意識していない」。以下、自己決定を意識していない層)と回答。年齢別では40代から高くなり、50代になるとやや落ち着く傾向が見られた。年代と性別では、40代男性がもっとも高く58.3%、次いで40代女性の56.7%、50代女性の53.7%となった。
自己決定を意識している層は、意識していない層と比べて、実際に「仕事内容を決めることができた」と回答した人が43.5ポイント多い
これまでを振り返り、「仕事内容を自分の意志で決めることができたか」という質問をしたところ、全体では53.6%の人が「自分で決めることができた(「おおよそできた」と「わりとできた」)、以下、自己決定できた」と回答。また、自己決定を意識している層と意識していない層を比較すると、意識している層のほうが、「自己決定できた」と回答している。その差は43.5ポイントだった。
「はたらき方」において、自己決定を意識している層のほうが、意識していない層と比べて、「自己決定できた」と回答した人が50.8ポイント多い
「はたらき方について、自分の意志で決めることができたか」という質問では、全体では50.3%が「自己決定(「おおよそできた」と「わりとできた」)できた」と回答。また、自己決定を意識している層と意識していない層を比較すると、意識している層のほうが、圧倒的に高い結果となった。
「はたらき方」を自己決定できた層は、ほかと比較して全体的に仕事への満足度が高い
「仕事への満足度について、該当するもの」を選んでもらい、「仕事内容」を自己決定できた層(「おおよそできた」と「わりとできた」)と「はたらき方」を自己決定できた層(「おおよそできた」と「わりとできた」)を比較分析。「はたらき方」を自己決定できた層は、ほかと比較して全体的に満足度が高い傾向にあることがわかった。とくに「総合的に今の仕事に満足している」「仕事にやりがいを感じてきた」などでスコアが高い。
仕事内容を自己決定できた層が自己決定できた場面の1位は、「仕事を通じた自身のスキルおよび経験蓄積」
「自己決定できた場面」をたずねたところ、全体、仕事内容を自己決定できた層ともに「仕事を通じた自身のスキルおよび経験蓄積について」がもっとも多く、次いで「最初の就職での仕事内容について」、3番めに「学習や研修を通じた自身のスキルおよび経験蓄積について」、「勤務先内での仕事・プロジェクトの担当について」と続いた。「仕事を通じた自身のスキルおよび経験蓄積について」は、全体と仕事内容を自己決定できた層との差がもっとも大きかった。
仕事内容を自己決定できた理由は、「会社の風土」や「上司の理解」が上位で、キャリアオーナーシップの発揮には本人の意識だけでなく、周囲の支援が重要と考えられる
仕事内容を自己決定できた層に、「自己決定できた理由」を選んでもらったところ、「希望する仕事についての知識・能力・経験」が1位になった一方、「自身の考えや意見を自由に言いあえる風通しのよい風土」や「勤務先内の上司の理解や柔軟性」といった勤務先内の風土に関する項目も上位に。キャリアオーナーシップの発揮には、本人の意識に加えて、周囲の支援が重要と考えられる。
仕事や会社への価値観は、仕事内容を自己決定できた層では、仕事仲間を大切にする意識が高い
「仕事や会社への価値観について該当するもの」を選んでもらったところ、「仕事内容」について「自己決定できた層」と「自己決定できなかった層」で、上位3つの項目は同じだった。一方で、スコアの差が大きいものを見てみると、もっとも差が大きいのは「専門性を上げることが大切だ(25.4ポイント差)」で、次いで「仕事で色々チャレンジすることが大切だ(24.4ポイント差)」など仕事への意識が目立った。一方、3番めには「仕事仲間が大切だ(22.0ポイント差)」が入るなど、仕事をスムーズに進めるうえで必要なことにも、目を向けていることがうかがえる結果だった。
仕事内容を自己決定できた層は、自分がやりたいことを探し、それを実現するために人脈づくりや自己啓発に取り組んでいることがうかがえる
「仕事内容を自分で選ぶための努力・取り組み」については、仕事内容を自己決定できた層もできなかった層も、上位4つが「会社内で人脈をつくる」「自分がやりたいこと・成し遂げたいことを探す」「資格を取る」「ビジネス・経済ニュースを多く読む・視聴する」と同じだった。しかし「会社内で人脈をつくる」の項目では、スコアに大きな差があるほか、「会社外で人脈を作る」でも差がある。前項目でも、仕事内容を自己決定できた層は、仕事仲間を大切にする価値観が高いスコアとなるなど、人とのつながりを大切にして、自らの可能性やチャンスを広げていることがうかがえる。
はたらき方を自己決定できた場面は、雇用形態が1位、日々の労働時間の長さが2位
「はたらき方を自己決定できた場面」についてたずねたところ、仕事内容を自己決定できた層では「雇用形態」や「日々の労働時間の長さ」、「退勤・出勤時間」などが上位にあがっている。それらと比較すると、「出産・育児・介護休暇の取得」においては、自己決定できた場面として挙げる人の割合は少ない結果となった。
はたらき方を自己決定できた理由には、勤務先の風土や周囲を気にしない価値観が上位に
はたらき方を自己決定できた層に、「自己決定できた理由」を選んでもらったところ、1位に「テレワークしても良しとする風土」、5位に「時短勤務・育児休業は取って当然という風土」、6位に「早く退勤してもよい風土」と勤務先内の風土が10位以内に3つ入った。また3位には、「周囲の目をあまり気にしない割り切り・価値観」と強い意志がなければ、はたらき方を選択しにくいことがうかがえる結果が見られた。
はたらき方を自己決定できている層は「仕事が楽しく仕事は熱心にという人が多い」一方、はたらき方を自己決定できていない層は「仕事があまり好きではなく最低限のことだけやる」
仕事へのスタンスについての質問では、「はたらき方」について「自己決定できた層」と「自己決定できなかった層」では、4つの項目で大きな差が出た。差が大きい順に、「成長のために仕事は熱心にやる(22.4ポイント差)」「仕事が楽しいので熱心にやる(22.1ポイント差)」「家族を支えるために仕事は熱心にやる(21.2ポイント差)」。「はたらき方」を「自己決定できた層」は、仕事を楽しみながら熱心にやる傾向がうかがえた。