パーソルイノベーションが展開するリスキリング支援サービス「学びのコーチ」は、全国の企業に勤める人を対象に、「リスキリング」に関する定点調査を四半期ごとに実施している。2回目となる今回は、リスキリングの成果を実感している企業の特徴などを分析した。
※本調査で言う「リスキリング」とは、「新しい職業に就くために、あるいは、今の職業で必要とされるスキルの大幅な変化に適応するために、必要なスキルを獲得する/させること」と定義する
大企業のリスキリング実施率は、中小/スタートアップ企業の2倍以上
回答者が主に勤めている企業において「直近1年の間で、従業員のリスキリングに関する取り組みを行いましたか?」とたずねたところ、「実施した」と回答した人は前回:39.1%、今回:41.6%と微増した。
企業規模別の回答を見ると、大企業に勤めている人では「実施した」との回答が、前回:60.5%、今回:64.1%に対し、中小/スタートアップ企業に勤めている人では「実施した」との回答が前回:28%、今回:27.1%となり、企業規模別で2倍以上の差が開いた。前回に引き続きリスキリングには大企業が先行して取り組んでいる実態がうかがえる。
リスキリングの取り組みは約80%が「トップダウン型」
リスキリング実施者の企業において、「リスキリングの取り組みは、トップダウン(経営主導)型・ボトムアップ(個人主導)型のどちらで行っていますか?」とたずねたところ、「トップダウン型」との回答が、前回:80.2%、今回:79.5%と、高い割合を維持した。
企業規模別の回答を見ると、大企業のほうがトップダウン型比率はやや高い結果となった。また、業種カテゴリ別では、製造業と通信情報サービス業を比較すると、製造業のトップダウン型比率がやや高い結果となった。
重視するスキルは「データ活用」「ITプロジェクトマネジメント」
リスキリング実施者の企業において、「リスキリングの取り組みでは、どのスキルを取得することを重視していますか?」とたずねたところ、1位「データ活用(35.6%)」、2位「ITプロジェクトマネジメント(34.1%)」、3位「クラウド活用(31.4%)」となった。
企業規模別の回答を見ると、中小/スタートアップ企業では「データ活用」「リーダーシップ」が28.4%、「業務プロセス設計」「デザイン思考」が24.5%と、「ITプロジェクトマネジメント」の22.5%よりも高く、前回同様に企業成長への土台づくりとなるスキルが上位となった。一方、大企業では前回「ITプロジェクトマネジメント」が50%以上であったところ、今回は重要視しているスキルに大きな偏りがなく、全体的に取得したいスキルが幅広くなったことが読みとれる。
リスキリングの取り組みに成果を感じている企業は60%以上
リスキリング実施企業において「企業としてのリスキリングの取り組みはどのように評価されていますか?」とたずねたところ、「大きな成果が出たと感じている」との回答が18.2%、「成果を実感できた」との回答が45.5%となり、合計63.7%がリスキリングの取り組みに成果を感じていることがわかった。
また、成果実感がある企業のリスキリングの取り組み方は、トップダウン(経営主導)型が多いことも読みとれる。
リスキリングの成果は「業務の効率化」で実感
リスキリング実施企業において「具体的にどのような効果があったと感じていますか?」とたずねたところ、「業務の効率化(49.4%)」「新しい職種・役割にアサインできた(44.0%)」「新事業の立ち上げ(43.5%)」などに効果が出ていることがわかった。
企業規模別の回答を見ると、全般にリスキリングの成果を感じている割合が高いのは大企業であり、中小/スタートアップ企業は「新規事業等の立ち上げ」の成果実感が高いことがわかった。
「AIを活用している、または導入を検討している」企業が51.5%
回答者が主に勤めている企業において「どの程度AI(ChatGPT等)を業務で活用していますか?」とたずねたところ、「AIを活用している、または導入を検討している」との回答が51.5%となった。企業規模別の回答を見ると、大企業では69.7%が活用または、導入を検討していることがわかった。
リスキリング実施、未実施別で回答を見ると、リスキリングを実施している企業の約7割が積極的に活用・検討していることがわかった。活用している業務シーンとしては、メーカーは問い合わせ対応、IT通信は情報検索をメインに活用していることがわかった。
調査概要
- 調査手法:インターネットリサーチ Fastask(株式会社ジャストシステム提供)でアンケート調査を実施
- 調査対象:全国の企業に勤めている人
- 調査期間:2023年5月23日~5月30日
- 対象人数:660
- 企業属性
1)大企業:従業員数が300人以上の企業
2)中小企業とスタートアップ:従業員数が300人未満で、新規事業開発と成長を経営の主軸に置かない企業と従業員数が300人未満で、新規事業開発と成長を経営の主軸に置く企業。大企業の子会社やグループ会社は含まれない。