パーソル総合研究所は、リスキリングに関する個人の実態を定量的なデータで把握し、経営・人事に資する提言を行うことを目的に調査を実施。その結果を公開した。
調査概要
調査結果
リスキリングの実態
20~59歳の正社員3,000名を対象に、リスキリングの実態をたずねた。「一般的なリスキリング経験」のある人は3割前後、「デジタル・リスキリング経験」のある人は2割程度。また、「リスキリング習慣」がある人は3割弱という結果になった。
一般的なリスキリング経験
- 新しいツールやスキルを学んだ経験がある:32.6%
- 知らない領域の知識を新しく学びなおした経験がある:32.1%
- 新しく仕事の専門性を広げた経験がある:29.9%
デジタル・リスキリング経験
- 新しいデジタル技術やテクノロジーを習得した経験がある:21.0%
- ITツールやプログラミングなど、デジタル領域の知識を学びなおした経験がある:20.0%
- 統計データ解析やAI・機械学習などを用いた分析スキルを新たに身に付けた経験がある:15.9%
リスキリング習慣
- 仕事の専門性を広げ続けている:29.4%
- 知らない領域の知識を新しく学び続けている:28.1%
- 新しくでてくる業務上のツールやスキルを学び続けている:27.2%
一般的なリスキリングとデジタル・リスキリングの経験の実態について、リスキリングが盛んな業種は「情報通信業」「教育、学習支援業」「金融業、保険業」。リスキングが盛んな職種は「IT系技術職」「経営・経営企画職」「営業推進・営業企画職」「商品開発・研究職」「企画・マーケティング職」という結果に。
性年代別では、女性の40~50代においてリスキリングの経験・習慣が減少する傾向が見られた。
リスキリングを促進する人事制度・人事管理の在り方
リスキリングを促進する人事制度や人事管理の在り方について、一般的なリスキリングには「目標の透明性」がもっともポジティブに影響し、デジタル・リスキリングには「キャリアの透明性」がもっともポジティブに影響していた。また、「処遇の透明性」はどちらのリスキリングにもポジティブな影響が見られた。一方、「会社都合の異動の多さ」は、一般的なリスキリングに対してネガティブに影響した。
リスキリングを促進する上司の在り方
リスキリングを促進する上司マネジメントの在り方について、一般的なリスキリングには、上司自身の「探索行動」「ビジョンの体現」がポジティブに影響していた。一方、デジタル・リスキリングには、「探索行動」のほか、上司からの「キャリア支援」がポジティブに影響していた。
リスキリングと変化抑制意識
リスキリングを阻害する要因について、「変化抑制意識」が高いほどリスキリングをしない傾向が見られた。
変化抑制意識の実態について、36.5%が「今の組織で仕事のやり方を変えることは大変だ」と思ったことがあると回答(「ある」15.0%、「たまにある」21.4%の合計)。32.3%が「自分だけが仕事のやり方を変えてもしょうがない」と思ったことがあると回答した(「ある」12.5%、「たまにある」19.8%の合計)。
リスキリングとアンラーニング
リスキリングと「アンラーニング」の関係性を探った。
アンラーニングとは
これまでの仕事にかかわる知識やスキル、考え方を捨て、新しいものに変えていくこと。「それまでの仕事のやり方を続けても、成果や影響力の発揮につながらない」など、自身の限界を感じる経験(限界認知経験)によって促される。
具体的な業務経験として、顧客との大きなトラブル・損失計上といった「業務上の修羅場」、他組織との共同プロジェクトや副業・兼業等の「越境的業務」、新規事業やプロジェクト立ち上げといった「新規企画・新規提案業務」などがある。
アンラーニングを頻繁に行っている人のほうが、リスキリングも多く経験している傾向が見られた。
役職滞留年数とアンラーニングの関係を見たところ、役職に就いて3ヵ月~半年未満でアンラーニングはピークに達し、その後現状する傾向が見られた。また、人事評価について、5段階中4の評価を受けている就業者がもっともアンラーニングが低かった。