リードセールスの型化とAI導入で「誰でも」実践可能に
──今回の変革を進めるにあたって、貴社の営業組織がどのような課題を抱えていたのか教えていただけますか?
中山 2021年ごろから、富士通Japanとして狙う市場が変化し、ハードウェアを中心としたビジネスから、ソフトウェアやサービスを組み合わせて販売するビジネスへと大きく転換してきました。営業(同社ではビジネスプロデューサー、以下BP)が、お客様の経営課題解決に貢献できる提案をするためには、コンサルティング型のセールスプロセスが必要になります。
私は営業企画の部署において、長年コンサルティング型のセールスプロセスの開発や現場実践を行ってきました。そこで今回、生成AIも取り入れた新しいプロセスを開発し、展開しています。
金澤 現場のマネージャーの視点では、変化についていけているメンバーとそうでないメンバーの差が大きいことが最大の課題でした。以前は「情報システム部門の担当者に対してサーバーを売る」営業をしていたところから、現在は経営層を含めた多様な役割の方と対面するようになり、幅広い知見が求められています。
しかし、目標の規模が大きくなりスピードも求められる中では、メンバー育成の時間も限られます。AIを活用することで、うまくその差を埋めていこうとしているところです。
──そんな中、まずはAIを活用する前に「コンサルティング型アプローチの再定義」から変革をスタートされたとうかがっています。どのように進めたのでしょうか。
中山 エンタープライズセールスのプロセスを、前半の「リードセールス」、後半の「コアセールス」に分けて考えます。
富士通のBPはコアセールスは得意であるものの、リードセールス側のプロセスは体系化されておらず、現場のいわゆる“才能がある人”に、新規獲得が任されていました。
とはいえ、私の前職の富士通マーケティングでは、リードセールスのプロセスがある程度型化されており、専門の商談支援チームもありました。天才と言われるトップセールスの行動をひも解いた結果、ある程度プロセスを型化できたんです。この経験をベースに当社のエンタープライズセールスを言語化し、タスクに落とし込み、プロセスの型や資料テンプレートを作成しました。
これにAIツールを組み合わせて現代版にアレンジし、現場のBPに取り組んでもらったところ、すぐに実践できたんです。
金澤 マネージャーの立場で良いと感じたのは、これまでなんとなくやっていたことが言語化・体系化されて、部下に伝わりやすくなったこと。メンバーはこうしたプロセスの型があれば自分で走り出すし、スキルを身につけて次につなげている様子です。
中山 リードセールスのプロセスは、3つのステップに型化しています。最初は「商談の発掘」、次にお客様の優先度の高い課題に対する「仮説提案」、最後に対面のキーマンだけでなく、お客様企業を巻き込んでいく「ワークショップの開催」です。
──プロセスが型化されたことで、とくに強化できてよかったポイントはありますか。
金澤 「仮説提案」は、これまでとくに弱かった部分です。仮説を立てるためのネタを集めることや、立てた仮説の確かさに不安があったんです。「ゼロイチ」のハードルは高いですよね。そこに適切なアプローチ方法を導入したことで、まず「それらしい」状態をつくることができたのが良かったと思います。
また、最近は中途社員も増えており、育成の標準化にも難しさがあります。そんな中、別業種から中途で入社して半年しか立っていないBPが、一連のアプローチ方法を実践したところ、商談発掘から仮説提案にかけて、一人前のBPさながらのアウトプットを出しています。やる気概さえあれば、誰でも成果につながるということを実感しました。
中山 一方で、こういった新しいアプローチ方法とそのメリットを理解して現場に伝えられるマネージャーの存在も重要です。マネージャーへの理解の浸透が、これからの課題ではありますね。