「大規模プロジェクトを進行」カスタマーサクセスの価値づくり
解説に先立ち、まだプ譜をご存じない方に、カスタマーサクセスにおけるプ譜の使用方法についてかんたんな説明を行います(詳細な解説や活用方法は『買い手の意思決定をスピーディーに! 成果につながる「文書術」』の連載をご覧ください)。
●プ譜とは
紙1枚にプロジェクトの目標、成功の定義、構成要素、所与の条件、実行する施策などの情報をおさめ、プロジェクトの全体像や諸要素の関係性を俯瞰で把握できるフレームワーク。
カスタマーサクセスの活動では、顧客がSaaSを導入する際に期待するアウトカム、そのために必要なアウトプットやインプットの因果関係をプ譜で表現することができます。今回のHacobu社では、MOVO(ムーボ)というソリューションのカスタマーサクセス活動にプ譜を用いました。MOVOは物流拠点における待機時間などによって「トラックを効率的に稼働させられない」「トラックが手配しにくい」といった課題を解決するSaaS型の物流管理ソリューションです。
MOVOのカスタマーサクセス担当の高岡さんにプ譜の活用背景についてうかがいました。
──今回、なぜプ譜を活用してみようと思われたのですか。
高岡 課題は大きくふたつありました。ひとつめは、当時規模の大きなエンタープライズ企業様からの受注が増えつつあったこと。その動きに対応するために、提案資料のテンプレート化やお客様とつくる業務遂行のためのチェックリストのひな形づくりは進めてきたものの、どんな考えや基準で実際のアクションを決めていくべきかがわかりませんでした。また、お客様との会話内容や意思決定のプロセスもうまく把握できていない状況だったのです。
エンタープライズ企業では主担当者はいるものの関与する部署や担当者が多くなります。そのため、オンボーディング期間中にお客様の社内関係者を巻き込み、目標や必要なタスクなどの認識を揃えていくことが必要です。しかし、社内の成功事例や失敗事例を見まわしてみてもその時点では、それぞれのカスタマーサクセスの属人的な対応になってしまうと感じていました。
増える受注に対して、対応できる能力を持ったカスタマーサクセス担当者をあてられないと、オンボーディングがうまくいかず、解約リスクが高まってしまいます。そこで、体系化された、非属人的なプロジェクトの進め方がないかを探していました。
ふたつめにあったのは、カスタマーサクセス価値を高めたいという考えです。現在、カスタマーサクセスの代行企業が増えてきており、代行企業の存在を否定しませんが、代行企業の品質がHacobu社の品質と変わらない場合、Hacobuのカスタマーサクセスとしてやってきた価値が目減りしていくと思いました。
活動の内容と品質がお客様からすると同じものだと、比較対象が生産性、コストになってしまいます。カスタマーサクセスとしての提供価値を高めるためにどのようなことができるか? どんな能力を獲得していくべきか? を考えていたのですが、そのうちのひとつに、「大規模プロジェクトを進行管理できるカスタマーサクセス」というものがありました。