苦戦している営業スタッフはお客様の言葉を真に受ける
トップ営業スタッフはお客様からよく話を聞く。いわゆるディープヒアリングと言われるもので、深く要望を聞き取ることができる。
しかし、お客様の言ったことをそのまま信じるのではなく「これは本当のことなのだろうか?」と常に疑っている。言葉の裏から真実をつかみとるのだ。
一方、苦戦している営業スタッフはお客様の発言を真に受ける。わかりやすい例でいえば、お客様から「まだ先の話なんですよ」と言われればそれを信じ、「なんだ、まだ検討中ではないのかあ」と判断する。そこで気を抜きチャンスを逃す。気がついたときには他社と契約されてしまっていた、ということになる。
私自身がそうだった。
ハウスメーカーで営業をしていたときのこと。当時の私は「なかなか良いお客様と出会えない」と悩んでいた。商談をするお客様もいないし、新規で出会うお客様はほとんど見込みが薄いと感じた。そのときは本気で「オレって本当に運がない」などと思っていた。
ある週末、50代のご夫婦が来店した。入店するなり「キッチンのリフォームをしたい思っているので、見せてもらっていいですか?」とたずねられた。
私は新築住宅の営業だ。キッチンのリフォームの契約を取っても大した実績にはならないため、やる気は出ない。名刺こそ丁寧に渡したが「ご自由にどうぞ」と放置した。
ただこのお客様は「情報だけはほしい」とのことで住所を記入していった。その後、一度だけ訪問する。家を見れば築20年ほどでまだまだ住めそうだ。訪問した際も「リフォームを検討しているだけで、購入はすぐの話じゃないので」ということだった。この時点で「このお客様は見込みゼロだ」と判断した。
その後、自分ではフォローはしなかった。会社からのダイレクトメールだけは送る程度。完全に記憶から消えていた。それから半年後、このお客様から会社に「もう案内は送らなくて良いですよ」という連絡が入った。まあ、こんなことはよくある。
それからしばらくして、たまたまそのお客様の家の前を通ったところ、新築の工事が始まっているではないか。しかもライバル会社だった。なんとも悔しい……。「リフォームだけを考えている」という言葉を鵜呑みにした私がバカだったのだ。