売れないのは「知識が足りない」から?
営業で結果を出すためにはさまざまな能力が必要になってくる。トーク力やコミュニケーション能力から始まり、ヒアリング力やクロージング力などなど。
また自社商品の知識だけでなく他社の商品についても精通しなくてはならない。ただし、その知識を“どのような言葉で伝えるのか”がさらに重要になってくる。
ハウスメーカーの営業スタッフ時代のこと。私が扱っていたのは注文住宅で、ほとんどのお客様にとって一生に1回の大きな買い物だ。どのお客様も「絶対に失敗したくない」と思いながら営業スタッフと話をしている。少しでも知識が甘いと「この人で本当に大丈夫かな……」と不安に思われてしまう。
私は機械科出身で建築の知識はまったくなかった。お客様から質問されて「すみません、ちょっと調べますね」と言って即答できないことも多かった。それが続くとお客様は不安になる。
最終的には当たり障りなく「菊原さんは良い人だったのですが、他社の建物を気に入りましてね。すみません」とお断りされてしまっていた。そのたびに「知識不足だとお話にならない」と痛感したものだ。
それから経験を積んで知識は増えていった。しかし思うような結果は出ない。そのときは、「まだまだ知識が足りないんだ」と思い込んでいた
そんなある日のこと。その考えがガラッと変わってしまった出来事があった。
他の営業所に新人営業スタッフAさんが入社した。4月に入社して5月のゴールデンウイークに配属。知識はほぼ素人と変わらない。それにもかかわらずお客様と約ヵ月商談をしたのち、5,000万円の建替えの契約を獲得した。
その1件の契約であれば「ビギナーズラックだな」と思う。しかしその後も順調に契約をとり続ける。5月からの12月末までの約7ヵ月で5棟の契約を取ったのだ。そのとき、私は1月~12月までの12ヵ月で4棟の契約。一気に抜かれてしまった。
Aさんは建築学部卒ではない。まったく関係ない学部でしかも文系。建築については完全に素人だ。Aさんの上司に「なんでAさんはあんなに契約を取れるのですか?」と聞いたことがあった。すると「素直な性格だし、変な癖がついていなかったのが良かったんじゃないかな」と言っていた。
たしかにそうかもしれないが、そんな新人営業スタッフは山ほどいる。私だってそうだった。素直な性格は、すぐに結果を出す理由にはならない。
会社の営業会議でのこと。休憩時間にAさんと話すチャンスがあった。