「セールス・イネーブルメント推進者」はどんな人が適任か
連載1回めとなった前回の記事「一人当たりの売上93%アップを実現! 内製でセールス・イネーブルメント組織を立ち上げた道のり」では、内製でセールス・イネーブルメントを立ち上げるメリットや、私がイネーブルメント組織を立ち上げた経緯を紹介しました。今回からは、セールス・イネーブルメント組織立ち上げでやってはいけないことと、重視すべきポイントについて解説していきます。
そもそもの話になりますが、「わざわざセールス・イネーブルメント専門の部署を設けなくても、営業部門内で育成の仕組みを考えて実践すれば良いのでは?」と考える人もいるかもしれません。しかし私は、セールス・イネーブルメントの部署は設けるべきだと考えています。こうした大規模での新しい取り組みは、責任の所在がいつの間にかわからなくなっていることが往々にして起こり得るからです。
部署を設ける際には、営業部門のすぐ近くに設置するのがおすすめです。離れてしまうと現場の状況も課題もわからず連携がとりづらくなり、現場のセールスメンバーも受け身になりがちです。セールスメンバーと密なコミュニケーションをとり続けられる体制を整備していきましょう。
さて、セールス・イネーブルメント組織を立ち上げるとなれば、最初の悩みどころは「誰を推進担当者にすべきか」ではないでしょうか。ここでいちばんやってはいけないことは「自社の営業組織で、高い成果を出した経験のない人」を選ぶことです。
私がセールス・イネーブルメントを始めるより前に、営業経験のない他部署のメンバーが、セールスの考え方や商談前に必要な準備などを掲載したガイドラインをつくったことがありました。現場にヒアリングしてつくったものの、やはり営業経験がない人がつくったためか、理想化されすぎており現実味がなく、浸透しませんでした。現場感覚を備えたリアルな育成コンテンツをつくる意味でも、自社でのセールス経験はマストです。
さらに言えば、その担当者が持っている「セールスへの影響力」も重要です。もし「うちの会社は営業が花形職種だ」と思う場合は余計に、セールス・イネーブルメントの責任者選びには慎重になるべきです。自社のセールス組織で高い実績を出した人に言われて初めて「やってみよう」と思うセールスは多いもの。質の高い育成コンテンツももちろん重要ですが、それと同じくらい責任者の人選は大切なのです。