会社の「重要指標」を育成のKPIに
セールス・イネーブルメントを継続的な取り組みとして社内に定着させ、発展させていくには、経営陣の理解が欠かせません。今回は「セールス・イネーブルメント組織の貢献度を測る指標」について考えてみましょう。
結論からお伝えすると、セールス・イネーブルメントの効果を測る項目は、その企業で重要指標としているものにするのがおすすめです。企業によって重要指標は異なりますが、GA technologiesの場合はARPA(セールス1人あたりの売上収益)や、個人の成約率・目標売上達成率などを重視しているため、その観点で効果を測定しています。また、離職率など、組織として課題に感じている数字も良いでしょう。
GA technologiesの場合、最初から経営陣がセールス・イネーブルメントについて「まずはやってみよう」という姿勢だったため、取り組みを始めやすかったという前提があります。社内で初めての取り組みであり、かつ他社の先行事例も少なく、どのくらい改善されるかは未知数でした。しかし、「何か良い影響があるだろう」という見立てでスタートを切れたのは、当時の経営陣の決断力と先見の名のおかげだと思います。
その期待に応えるべく、「AGNT by RENOSY」という自社開発のCRM(顧客関係管理)システムで、セールス活動に関するあらゆるデータを取得し、導入後の変化を数字でチェックできるよう準備を整えました。
セールス・イネーブルメント導入後半年で振り返ったところ、導入前と比較して、オンボーディング終了時(入社後3ヵ月)のARPAが大幅に改善されていました。課題だった中途入社者の立ち上がりに効果があることが数字上で認識でき、コンテンツの強化などにもより協力してもらえるようになりました。その後も半年単位で振り返りを実施していましたが、いつでも経営陣に報告できるように中途入社者の立ち上がり状況を数字でまとめていました。
このように、経営側も重視している部分で効果を証明できれば、取り組みを続けることはもちろん、体制強化にも協力してもらいやすくなります。経営陣があまりセールス・イネーブルメントに乗り気でない場合、まずはスモールスタートとして、導入前後のデータをきちんと集めていくのが非常に大切です。その後、データをもとにしっかりと成果が出ていることを伝えたうえで、人員や予算などの認識を合わせていくのがベストでしょう。
なお、データによる「セールス活動の見える化」がまだできていない場合、少なくともセールス・イネーブルメント導入時には着手しておくことを強くおすすめします。セールスに関するあらゆるデータをとっておくことで、効果測定はもちろん、何かセールス活動に問題が起きた際に対処しやすくなります。個人やチームごとの活動量や成約率などを推移で見ることで、個人や組織の課題が圧倒的に把握しやすくなるのです。
また、「必要なデータを取得する人」「それをもとに仮説を立てる人」「取り組みを推進する人」がいると、よりPDCAが回っていくでしょう。そのうえで、セールス・イネーブルメント担当者は、セールスに関する数字をいつでも自由にチェックできる状態をつくることがとても重要です。