営業に心理学は役立つのか?
営業に心理学は役立ちます。
営業職の仕事は、自社の商品をクライアントに提案し購入してもらうことです。ただ闇雲に商品を紹介して特徴を説明しても購入にはつながりません。心理テクニックを活用し、クライアントから信頼を獲得して抱えている課題をスムーズに聞き出しましょう。自社の商品を提案するときにも心理テクニックを取り入れると、安心感と納得感を与えられ、商談をスムーズに進められます。
どのような場面で心理学が役に立つか、みてみましょう。
クライアントと距離を縮める心理テクニック3選
クライアントと打ち合わせをするとき、いきなり「御社が抱えている課題はなんですか?」と聞いても表面的な回答ばかりで、本質的な答えを聞き出すのは難しいでしょう。本質的な答えを聞き出すには、クライアントから信頼を得る必要があります。
短い時間で信頼や好感を持ってもらえる心理テクニックを3つ紹介します。
1.オープンクエスチョン
「はい」や「いいえ」ではなく自由な回答を得られる質問です。クライアントが抱えている本質的な課題を探るうえで効果的と言えます。
最初の質問以降、会話の方向性はクライアントの回答を広げる形で進めます。回答を広げていくことで、クライアント自身も気づいていなかった課題の発見につながることもあります。
オープンクエスチョンは相手に考えさせる自由回答形式なので、すぐに回答できない質問や大量の質問をすると相手が疲弊してしまいます。あらかじめ相手が回答しやすい質問のパターンを想定しておくことが大事です。
2.ミラーリング効果
相手の行動や話し方に同調して信頼感や共感を得る心理テクニックです。人は、自分と似ている人や共通点がある人に好感を持つ傾向があります。この心理を利用して相手から好感を得て信頼関係を築くものです。
たとえば、商談時に相手が水を飲んだら自分も水を飲む、髪に手を触れたら自分も髪を触るなど相手の行動を真似します。しかし不自然な演出になると、バカにしていると思われて信頼を失いかねません。声のトーンや感情、話す速度を相手に合わせるだけでも好感を得ます。無理のない範囲で取り入れましょう。
3.バックトラッキング(オウム返し)
相手の言葉をそのまま繰り返して信頼関係構築につなげるテクニックです。相手が話した内容を繰り返すことで、安心感や親近感を与えられます。
相手の話している内容から、感情の表現や繰り返し使われている言葉にフォーカスしてバックトラッキングを活用しましょう。
ポイントは、相手の話した言葉を返すときに余計な解釈を入れないこと。しかし、機械的な返事では効果がありません。相手が気持ちよく話せるテンポを意識します。
オープンクエスチョンに、バックトラッキングを掛け合わせると会話を弾ませながら、相手の情報を聞き出せるでしょう。
提案~成約に活用できる心理テクニック4選
商品紹介はできるけど成約に結びつけることが苦手な人は、どうしたら相手が「欲しい」「使いたい」と思うようになるのか、心理をうまく誘導する方法を学びましょう。
これから紹介する心理テクニック4つを取り入れて、自身の営業トークを見直してみてください。
1.バンドワゴン効果
たくさんの人が購入して高評価をつけている商品・サービスに安心感を覚えて「欲しい」「使いたい」と感じさせる心理効果です。
バンドワゴン効果を使用するときには、具体的な数字を入れることも重要です。「販売数100,000個突破!」や「お客さま満足度99%」など、さまざまなシーンで使用されています。
多くの人が良い商品として使用していても、相手が抱えている課題によっては最適な商品と言えないこともあるでしょう。相手の課題解決に合わないときは、人気商品を紹介しつつ課題解決に向いた別商品を紹介することで信頼を得られます。
2.分析麻痺
選択肢が多く選べなくなることを分析麻痺と言います。買い物に行ったときに、商品が多くて決められない経験を持つ人もいるのではないでしょうか。選べなくなってしまう理由は、選択肢が多くなるとリスクなどに目がいってしまう人の心理が影響しているからです。
分析麻痺は、ビジネスシーンでも起こります。クライアントへ商品を提案するときに、たくさんの商品を紹介すると最善の選択が判断できなくなり、機会損失につながるでしょう。
商品が複数ある場合は、クライアントの課題にあった商品を3つほどに絞って提案することです。選択肢が絞られることで、意思決定しやすい状態になります。
3.カリギュラ効果
禁止や制限を掛けられると、気になってしまい逆に行動に移してしまう心理効果を言います。一方的な命令や制限・強制などによって選択の自由を奪われたときに、反発しようとする心理を利用するテクニックです。
カリギュラ効果を営業で活用する場合には、対象者の限定や数量、期間の限定をおすすめします。「今だけ」や「先着〇名さま限定」などの文言は比較的取り入れやすいでしょう。
4.偽の合意効果
自分の意見や考えが、常に多数派であり正常だと思い込む認知の偏り(バイアス)です。人は、自分が多数派だと思うと安心感を得ます。また安心感を得るために、自分は多数派だと思い込んでしまうこともあります。
偽の合意効果には、自分の意見や考えが多数派だと思い込む認知の偏り(バイアス)により、他人の意見を受け入れにくくなる問題点があります。対策として、商品を提案するときに口コミやアンケートなど第三者の客観的なデータを提示しましょう。相手に「自分の意見や判断は多数派ではない」と気づきを与え、説得することで成約につながりやすくなります。
客観的なデータがない場合、相手によっては「都合の良い説明しかしてない」というネガティブな認知バイアスが働く可能性もあります。客観的なデータを準備して商談に臨みましょう。
心理テクニックを身につける方法
営業トークに心理テクニックをうまく取り入れるコツを紹介します。最初からすべての心理テクニックを取り入れるのは、難しいです。自分が使えそうな心理テクニックをピックアップして、商談までに準備を整えましょう。
トークスクリプトに取り入れる
トークスクリプトは、商談のときに「何を話すか」をあらかじめ決めた台本です。
トークスクリプトの構成を考え、どこにどの心理テクニックを取り入れるか整理してセリフを書きましょう。また相手の回答を想定して、フローチャート形式でトークパターンを用意するとスムーズに会話を進められます。
ロールプレイングを行う
商談の場面を想定しながら、ロールプレイングを行いましょう。
一人でも練習できますが、同僚や上司に協力してもらい実際の商談のような会話形式で練習すると効果的です。ひととおりロールプレイングをしたら、フィードバックをもらい営業トークの見直しを図ります。フィードバックの内容を反映させて営業トークを磨き、心理テクニックを活用しましょう。
心理テクニックを使うことに慣れるには、トークスクリプトの改善とロールプレイングを繰り返すことがおすすめです。
まとめ
営業に役立つ心理テクニックを紹介しました。
一見、営業と心理学はかけ離れているように感じますが、営業に心理学を取り入れると効果的です。成績優秀な営業マンは、自然と心理テクニックを活用しています。
ミラーリングやバックトラッキングはビジネスシーン以外でも活用できます。ぜひ普段のコミュニケーションの中で練習してみてください。今回紹介した心理テクニックを活用して、営業トークの質を高めて成果につなげましょう。