今求められているのは「心臓」ではなく「脳」型の営業企画
今回は、新卒でキーエンスに入社して営業リーダーを務め、現在はログラスの新規事業部で営業研修などを担当している髙橋氏が持続的な利益成長を実現する営業企画の条件やポイントを解説した。
「会社組織において利益創出のために動いていない人はいません。その前提を踏まえて利益創出のポイントを語る前に、人体における『心臓』と『脳』の違いについてお話させてください」(髙橋氏)
心臓は、人体においてポンプの役割を担っている。全身に血液を送り出すポンプであり、心臓がなければ人体は活動できない。ただ、心臓が動いているだけでは思考が生まれないと高橋氏は話す。そんな知性や知能をコントロールしているのが脳だ。人体の司令塔でもあり、何をすべきかを脳が考えて伝えることで、行動が生まれる。
こうした例えを踏まえて、髙橋氏は「あなたは会社の心臓ですか? 脳ですか?」と問いかける。
「会社に血を巡らせれば、自動的に利益を生み出せるわけではありません。持続的な利益成長には“脳”の存在が欠かせません」(髙橋氏)
つまり、これから企業が継続的に利益を伸ばしていくためには、脳のような機能を持った営業企画が求められているのだ。では、脳のような営業企画とは具体的にどういったものなのか。髙橋氏は「営業効率を上げるためのターゲティングと投資注力点を発見するための分析」ができる組織であると解説する。
一般に、営業企画の業務ではまずデータを収集して、さらに加工・統合する。そして、加工・統合したものを分析していく。中でもデータの加工や統合は非常に重要な工程であるが、この部分にリソースを割かれてしまい分析にまで手が回っていない企業が多い。
「心臓型の営業企画は、営業現場から着地見込みに関するデータを収集し、目標などと突合することに膨大なリソースを費やしています。現場のマネージャー層からあがってきたデータを収集したり、統合したりすることに追われてしまい、分析をできている企業はなかなか少ないのではないでしょうか。人体でたとえれば、心臓を動かして血を全身に巡らせるところで終わってしまっているようなイメージです」(髙橋氏)
こうした背景には、過去データとアクチュアルなデータの比較が煩雑であることや、手作業に依存していることなどが挙げられる。また、膨大なデータを扱うことで表計算ソフトの処理が遅くなり、作業効率の低下にもつながっている。
カギは「自動化」 分析に集中できる環境を整えるべし
手が行き届きづらい分析までをしっかり完遂できるような脳型の営業企画とはどういったものなのか。髙橋氏によると、まずデータの収集などの作業は完全に自動化することで、本質的かつ脳的な業務であるデータ分析や現場とのコミュニケーションが活発になる。現場の1次情報に触れる機会も増え、より精度の高いターゲティングや着地見込み予測も可能になるのだという。
「あくまで心臓のポンプ機能、データ収集や加工・統合は自動化することがポイントです。それによって、市況を基にした分析や、売上が伸びている得意先の要因特定が可能になります」(髙橋氏)
では、心臓型の営業企画から脳型の営業企画へとシフトするにはどうすべきなのだろう。
よくある失敗が、とにかく分析をしなければと考えてBIツールなどを導入するパターンだ。「分析ができていない」のではなく、あくまで「分析する時間を捻出できていない」という課題を理解する必要がある。心臓を手動で動かしている限り、いくら高品質な脳を導入しても意味がないのだ。そのため、まずはデータの収集や加工・統合にメスを入れ、自動化や効率化を進める必要があると言えるだろう。
「見通し」の精度を高めるために必要なふたつの要素
さらに、これからの営業企画には、より会社の未来をクリアに見通し、着地見込みなどを精緻化していくことも求められる。どの領域にアタックするか。そして、どのような施策を打つか。このような戦略策定には、見通しの精度を高めることが不可欠だと髙橋氏は強調する。
「見通しの精度が高まれば、1年先の未来が見えている状態にもなります。継続的に利益を上げている企業は、この見通しを立てることに圧倒的に長けているケースがほとんどです」(髙橋氏)
見通しがクリアになれば、ターゲティングや投資判断が的確になる。最適な生産金額を基にコスト削減をすれば、商品価格に反映でき競合優位性にもつながるだろう。問題は、この精度をいかに高めるかだが、髙橋氏は見通しを「売上」と「原価」の2軸に分解して考えるべきだと解説する。
売上の見通し精度を高めるためには、さらに多く・細かくデータを集めることがポイントになる。たとえば、営業担当者が出す見通しデータを過去のものと比較し、差分を分析・把握していく。また、社内にいる見通し精度が高いメンバーのスタンスや行動を仕組み化し、横展開することも有効だ。そのうえで、データを集める頻度を増やせば、レビュー頻度も増えるため、PDCAサイクルも高速化するだろう。
原価の見通しでは、過去実績から予測することが有効だ。仕入れ先の原価確認を通したコストコントロールや原価部門の人件費のコントロールで、見通しの精度を高めていける。「過去3年の推移などを見ながら『今度はこうなりそうだよね』など、実績を基にファクトでコミュニケーションすることにより、確実に精度が変わっていくはずです」と髙橋氏。
乗り越えるべきふたつの課題とは
ただ、こうした取り組みは一種「青写真」のようなものでもあり、実際に取り組む際には課題も存在する。たとえば、営業企画側においてデータ収集業務がこれまで以上に煩雑になり、現場とのコミュニケーションが希薄になってしまうことだ。この点は、先述したような自動化を駆使した脳型の営業企画へシフトしていくことで、ある程度乗り越えられるだろう。
もうひとつの課題が、営業担当の負担が増えてしまうことだ。営業企画側が新たなシステムを導入してデータの収集から分析までを自動化しようとすると、営業側がこれまで行っていた業務フローを変える必要がある。
「現場はこれまでのデータ入力方法などを変えたくないと考えがちです。そのため、無理にシステムを導入してもなかなか入力をしてもらえず、かえってデータ収集が大変になったり、導入費用が無駄になったりするケースも多いのではないでしょうか」(髙橋氏)
そのため、営業企画としては「いかに現場の入力負荷を高めずにデータ集計を行う方法を導入するか」とともに、「属人化せずに誰でも容易にできること」、さらに「集めたデータを誰でも自由に分析できること」を念頭に置く必要がある。
現場負担を高めない効率的なデータ分析
なかなか難題であるように感じるが、こうした点を解消するのがログラスの提供する「Loglass 販売計画」だ。髙橋氏はLoglass 販売計画を「次世代の利益管理データベース」と表現し、次のように紹介する。
「Loglass 販売計画を使えば、これまで使っていたExcelなどのツールと同様の入力方式を維持したまま、現場の負荷を高めずにデータを収集・管理できます。また、収集したデータをクリック操作でかんたんに分析できることもメリットです。伸びている取引先と似ている商品構成や、同業界・同規模の取引先をグルーピングした比較分析も容易に行えます。
また、利益の最大化を考えるうえで重要なのが人員配置です。一般にデータを管理するシステムはマスタの組み換えが難しく、配置換えや組織変更をしたくても消極的な企業は多かったはずです。一方、Loglass 販売計画であれば、組織構造を変えた際のシミュレーションも可能です」(髙橋氏)
Loglass 販売計画の導入事例として、住商メタルワン鋼管のケースが紹介された。同社ではこれまで、国内外の拠点PLを管理している中で、組織変更がある際にはマスタメンテナンスに丸2日を要していた。また、経営陣から質問があった際、複数のファイルを確認する必要があり、コミュニケーションにタイムラグが生じていたという。
Loglass 販売計画の導入によって、長時間かかっていたマスタメンテナンスがわずか10分に短縮。データ集計から予実要因分析もスムーズに行えるようになった。「これまでデータ収集で生じる異常値や入力ミスの確認に追われていたが、分析に集中できる環境が実現できた」という声が上がっており、導入から3年近くが経過するが、肝心の利益も伸び続けている。
データ分析の重要性に気がつきつつも、まだまだ収集から加工・統合という前段階で止まっている企業も少なくないだろう。髙橋氏は持続的な利益成長にチャレンジする組織へのメッセージとして、「営業企画は“心臓”ではなく“脳”になること」「脳をフル活用するには“見通し”の精度を上げること」「なるべく変化なく、変化していくことが重要」という3点の重要性をあらためて強調し、セッションのまとめとした。