営業組織にデータ活用が必要なワケ
2021年に三井住友海上のマーケティングの組織を立ち上げ、現在はCMOを務める木田氏。通信やソフトウエアから、百貨店、通販までさまざまな業種・職種の経験を重ねてきたが、最初のキャリアは「営業」だったという。
「データサイエンティストの経験もあるのですが、営業経験は成果を上げるデータ活用に非常に活きています。営業出身、データ分析未経験だった私がプロフェッショナルになれた背景もお伝えできれば」(木田氏)
まず、木田氏は企業におけるデータ活用の現状について語った。営業領域に限らず「データ活用」や「DX」などの言葉だけが先行し、システム導入が目的化しているケースが散見される。鳴り物入りで導入されたシステムの使い勝手が悪く、現場で不満が溜まり、データサイエンティストがダッシュボードをつくっても誰も見ていない──そんな悪循環が各企業で発生しているのだ。
一方、データ分析・活用スキルの取得ニーズは年々高まっている。2022年には「リスキリング」というキーワードが注目を集めたが、2023年春に全国の17大学でデータサイエンス系の学部が新設されている。
そのような状況を踏まえ木田氏は、「環境の変化が大きい今、営業の頑張りだけですべてをカバーするのが難しい時代になってきた」とも語る。たとえば、顧客が求める価値の多様化。ウェブ上にはさまざまな情報や口コミが掲載されているため、営業パーソンよりも顧客のほうが情報を持っているケースも増えてきた。ここで、木田氏は自身の営業パーソン時代のエピソードを共有した。
「私がソフトウエアの営業をしていた際、周囲の営業は売り込みが中心でした。頼み込んで、値引きして、電話をかけて……。私はセールストークが苦手でしたが、売上はトップでした。目の前のお客様に満足いただいて、追加の購入をいただいたり、紹介をしてくださったりしていたからです」(木田氏)
成果のために木田氏はどのようなことに取り組んでいたのか。まず、「お客様はどのようなことを疑問に思い、課題を抱えて、どのような理由でソフトウエアを使いこなせないのか」そのような問いを立てたという。そして、その問いへの対応策として、お客様の応対ログの分析を始めた。
「やはりそこに、お客様の悩みを解決するためのヒントがあったんです」(木田氏)