データドリブンによってマネジメントするもの
「データドリブン」は「目的達成に必要なデータを収集し意思決定に活用するためのサイクルとプロセス」と定義されています。「明確な目的がない」「データはあるが活用していない」「活用していたが、意思決定サイクルやプロセスとして組織に定着していない」という状態を脱する必要があります。「データドリブン」によって組織を成長させるという明確な意思を持ち、継続的な取り組みを目指していきましょう。
そしてマネジメントは、資源や資産・リスクを管理し、経営上の効果を最適化する手法です。営業組織のマネージャーは売上や利益目標などの設定されたミッションを達成するために、最適化された手法を用いていくことになります。最適化する対象を「インプット」「プロセス」「アウトプット」という要素で考えてみましょう。
「インプット(経営資源の投資)」は投資計画に基づくものです。プロダクトの開発計画や見込み客と接点を持つためのマーケティング費用などを、各企業の戦略や意思決定プロセスに沿って決定します。「インプット(投資)」された経営資源が、活動による「プロセス(工程)」を経て「アウトプット(成果)」として出力されるイメージです。
つまり、組織のマネージャーは経営資源を適切に投資配分しながら、プロセスを改善することで組織が目標とするアウトプットを成果として出す必要があります。もちろん、営業個人の活動も、自身の資源を有効に活用しながらプロセスを見直し、成果を最適化するという図式に当てはめることが可能です。
では「アウトプット」を目論見どおりに制御すること、つまり計画どおりに毎回想定された結果を出すことは可能でしょうか。結論から言えば、できません。再現性を高めることはできても、毎回想定どおりの結果を出すことはできないのです。
アウトプットを出力するためのプロセスには、自身でコントロールできる「内的要因プロセス」と、自身ではコントロールできない「外的要因プロセス」が存在します。たとえば、パンデミックの発生は予測できたとしても、正確な時期や影響度合いを正確に把握することはできないでしょう。先端テクノロジーを利用したシミュレーションの活用や、有識者の議論でも、結果を完全に言い当てることはできません。
そこで、我々がマネジメントするのは「内的要因プロセス」になります。自分では制御できない変数である「外部要因プロセス」による影響を予測しながら、「内部要因プロセス」を最適化していくことが重要なのです(以降は「内部要因プロセス」を「プロセス」と記します)。
マネジメントすべき要素は多々あります。組織文化や風土、人材採用や定着・育成、戦略や組織体制、運用システムやステークホルダーマネジメント、組織エンゲージメントなど、組織成長のためのアイデアを考えると限りなく要素が出てきます。
データドリブンの考え方は、これらの要素すべてに活用することができます。たとえば、組織文化や風土が自らの組織が示す方向性に適しているかを測る際には、目指すべき状態の組織文化や風土を想定し、そこから指標化できるものを探します。メンバーの行動やアンケートの結果、起きている事象、メンバー同士の交流状態……もっとも適している指標を定め、その動きを追いかけます。設定した指標が適していたか、定期的な見直しも実行します。
この前提をもとに、ここからは「売上」を例にどのようにプロセスを分解し、マネジメントすることができるか解説していきます。