「失敗は成功の元」は本当なのか
新規事業を担当する営業パーソンの皆さんは「失敗は成功の元」という言葉にどのような印象を持つだろうか。失敗してもその原因を追究し、欠点を反省して改善していくことで、かえって成功に近づくことができるとした、発明王トーマス・エジソンの言葉である。
新規事業の成功率は2割程度だと言われている。答えのない新規事業の営業に、何の戦略もなしに挑んでは、思い描いていたとおりに売れず「失敗」を経験するのも当然である。むしろ新規事業の現場では、想定どおりに売れることのほうが珍しいくらいだろう。
本稿では、新規事業の営業現場において、成功確率を高め、できるだけすばやく仮説を検証していくための「アジャイル型営業」の手法を解説していく。
生産数や受注目標から逆算し、なんとなくKPIを決め、がむしゃらに数字を追ってしまい、ただ時間を浪費してしまっていないだろうか。本稿を通して、仮説検証に基づいた「正しい失敗の仕方」を身につけ、少しでも成功までの時間を縮めてもらえれば幸いだ。
「トーナメント形式の仮説検証」で成功確率を高める
私たちは多くのスタートアップや大企業の新規事業を支援する中で、「失敗を前提とした営業プロセス」こそがいちばんの近道だと捉えている。そのうえでアジャイル型営業と通常の営業の違いは、「片道通行型」と「急がば回れ型」だと説明できる。
新規事業では、何が起こるかわからないにも関わらずタイムリミットは短いため、「より早く、より正確に」売り方と売り先を定めていかなければならない。あるいはその製品がどのように市場に受け入れられるのかを把握しなければならない。そのため、失敗のたびに「戦略を考えてからまた走る」では遅い。「走りながら考える」前提で営業プロセスを設計し、重点的に攻める場所が見つかって初めてリソースを割く必要がある。
よくあるのは、「良いものはできた。売り先の仮説も立てたから、〇ヵ月計画で営業をどんどんかけていこう」という営業プロセスの設計。そして得てして「今はまだ我慢のときで、いずれこの想定どおりになる」あるいは「ここまでは予定を決めたからプロセスを変えられない」という状況に陥りがちだ。期限を迎え、また新たな戦略を考える。そうしていくうちに関わる人は疲弊し、事業は消費期限を迎える……。
この状態を回避するために必要なのが、「トーナメント形式での仮説検証」という考え方。プロセス上で重要になり得る論点を事前に想定し、それを満たす要素を実務レベルまで落とし込んでいく。そうすることによって自身の営業活動はうまくいっているのか、遅れがあるとすれば次の打ち手はどうするべきか、ボトルネックを常に把握しながら、よりブラッシュアップした営業活動を展開することができる。
トーナメント形式の仮説検証を行うためには、多くの仮説検証のオプションを初期から持っておくことが重要だ。たとえばアウトバウンド営業ひとつとっても、「〇〇業界vs△△業界」「〇人規模vs△人規模」「〇〇の訴求vs△△の訴求」など、営業活動の中でどのオプションをかけ合わせることで最も成果が出せるのかを常に検証する必要がある。マーケティングのA/Bテストのようにトーナメント方式での仮説検証プロセスが行っていくと言うと、イメージは沸きやすいだろうか。
ここから、アジャイル型の営業プロセスを作成する際の実際の手順を公開していく。