共有よりも重要な、「吸収」のどん欲さ
第1回、第2回で解説してきた4つの水準が個人で高めていくものだったのに対し、 今回解説する「吸収」は直接ほかの人から学ぶ、「吸収のどん欲さ」の水準です。誰かが得た気づきや情報を、ほかの人が活用できる組織になれば、1の受注や工夫が10にも100にも変換されるようになります。
ノウハウ共有の必要性は言うまでもなく理解されており、ノウハウ共有会を開いている組織も多いかと思います。ただ、我々はあくまで重要なのは「共有」ではなく「吸収」だと考えています。「共有」は、情報を持っている人が発信する行為、「吸収」は情報が必要な人が求めにいく行為です。後者のほうが、必要性に迫られており、売上につながりやすいため、文化として根づかせていくべきでしょう。
吸収の貪欲度が高い組織をつくるには、次の2ステップが必要です。
- 情報とその所有者(Know Who)に誰でもアクセスできる状態をつくる
- 必要な情報を取りに行く重要性を理解する
そもそも「1」ができていない組織も実は多いのではないでしょうか。たとえば、競合A社とコンペになった際、社内の営業100人の中でもっともA社とのコンペを経験している人が誰か、CRMの情報からわかるでしょうか? 誰が情報を持っているか(Know Who)がわからずとりあえず周囲の人に聞くよりも、CRM上で聞くべき人を見つけて聞くほうが情報の精度が高いのは間違いないです。
そのうえでステップ2として、社内で必要な情報を共有することの重要性が理解されていなければなりません。たまに、「ノウハウをほかの人に教えたくない」とおっしゃる営業の方もいらっしゃいますが、それは個人最適の考え方であり、全社視点での行動ではありません。評価制度によっては、個人最適な行動が正しいとされてしまうため、評価制度を変える必要もあるでしょう。会社としてもマネージャーとしても「同じ組織の営業として活躍する以上、ノウハウは共有するべきもの」と正しい行動を推奨していく必要があります。
「周りの営業から何か吸収できないか」虎視眈々と狙う
とある、全国に営業所がある営業組織では少し特殊な売り方をすると、ほかの営業所の人から内線で次のような電話がかかってくるそうです。
「◯◯営業所の◯◯です。◯◯さん、昨日A社からBという商品を受注してると思うんですが、ちょうどいま自分が攻略したいのが似た会社さんなんです。どんな使い方が刺さって、どんなネックがあったのかなど、教えていただきたいです」──話したこともない先輩からこんな電話がかかってくることが場合によっては1日数回あると言います。
また、もっと日常に溶け込んだ水準の例もあります。オフィスで「◯◯さん、受注しました!」という報告があると、すぐに周りにいるメンバーから「おめでとう!なんで売れたの?」と質問攻めにあうという組織もあります。「周りの営業から何か吸収できないか」、常に虎視眈々と狙っている非常に良い文化だと感じました。