昨今、「セールス・イネーブルメント」というワードを耳にする機会が格段と増えました。セールス・イネーブルメントに特化した本も出版されたり、専任部門が設置されたりするなど、日を追うごとに注目度が高まっています。他方で、名前だけが独り歩きし、本来の意味とは異なる解釈をするビジネスパーソンも増え始めているように感じます。
私自身、これまでさまざまな企業の営業の仕組み化を支援してきた経験から、真に営業力を高めるための正しいセールス・イネーブルメントの考え方を広める使命感に駆られ、本稿の執筆に至っています。ゆえに、本連載では、私が考える「本質的なセールス・イネーブルメント」を1つひとつ紐解いていければと思います。
前提として、セールス・イネーブルメントは進化し続ける領域であり、組織によって最適解も異なります。本稿はあくまでひとつの考え方としてご参照ください。
不足事項の因数分解から始めよう
本稿では、セールス・イネーブルメントを「売れるための業務知識やオペレーションフロー、商品知識を営業担当に習得してもらうための一連の支援」と定義します。とはいえ、イネーブルメントの担当者が取り組むべきことは、それだけではありません。
セールス・イネーブルメントを考えていくうえで重要なポイントは、現場課題をベースに「業務やアクション」を定めるのではなく、事業の目標やビジョン、売上目標達成のために何が不足しているかを因数分解し、逆算することです。
まず、「売上」という要素を因数分解すると次のような方程式が成立するでしょう。
売上=営業人数×売上単価×受注件数
会社によっては「効率性」にまつわる要素が追加されるなど、より複雑な方程式で示されるケースもありますが、本稿ではあえてもっともシンプルな方程式を用いて考察していきます。
数式に示したように、売上を高めるうえでは「営業人数」「売上単価」「受注件数」をいかにして高めていくか、という視点が非常に重要です。今回は、とくにセールスイネーブルメントを活用した改善に取り組みやすい「営業人数」と「売上単価」をそれぞれ掘り下げていきます。