「営業が話すコンテンツ」だけでは営業は育たない
これまでの連載では、営業の属人化が必ずしも悪ではない点に触れながら、「営業育成でチーム全体を底上げするのも悪くないが、まずはスーパー営業を輩出しよう」とお伝えしてきました。本稿では、スーパー営業を育成するための具体的なメソッドを解説します。
昨今のセールス・イネーブルメントでは、スーパー営業を育て上げる、というよりは営業組織の中央値を高め、組織全体の営業力を向上させることに注力する取り組みが多いように感じています。しかし、実は複数人の営業力を引き上げるよりも、1、2名のスーパー営業を輩出するほうが育成コストが抑えられ、より効率的でもあるのです。
スーパー営業の育成について、目を向けるべき要素や具体的な手法は多く存在していますが、今回は具体的に「何を教えれば良いか」「どのような点に目を向けるべきか」をピックアップし、ご紹介します。
スーパー営業とそうでない営業を分かつのは、「スーパー営業として大事にするべきポイントを認識できているかどうか」です。そのひとつに、ノンバーバルコミュニケーションがあります。 「スクリプト整備」「ロープレ」「提案書のブラッシュアップ」など、一般的な営業育成の手段として挙げられるもののほとんどは、営業が「話す」コンテンツに関係しています。言い換えると、まずはバーバルコミュニケーションの改善を育成の第一歩として考えがちです。
もちろん、バーバルコミュニケーションのトレーニングを重ねることは非常に重要です。なぜなら、説明内容が顧客に刺さらなければサービスの魅力が十分に伝わらず、顧客に納得していただけないためです。
他方で、提案内容の濃さ・適切さは、動画素材の活用や適切なプレゼンを真似して練習を重ねることで誰でも一定のレベルに到達することができます。むしろ、最低限のスキルさえあれば、顧客に過不足なくメッセージを伝えることができるでしょう。
今回声を大にしてお伝えしたいのは、バーバルコミュニケーションではなく、「スーパー営業の真髄」と言っても過言ではない、ノンバーバル・コミュニケーションの重要性です。
人の印象をつかさどるのは、バーバルコミュニケーションが7%、聴覚・視覚情報などのノンバーバルコミュニケーションが93%であることが提唱された「メラビアンの法則」をご存知でしょうか。これに基づいて考えると、ほとんどの営業がたったの7%を鍛える方法を考え続けていることになります。