コロナ禍における顧客自身の価値観・行動の変容
2020年1月に日本国内で第1例目の新型コロナウイルス感染症の発表があってから早くも1年以上が過ぎたが、この1年間はこれまでの生活やビジネスなどを大きく変えるものとなった。
人々の変化は、EYが調査した「新型コロナウイルス感染症による国内消費者の行動変容調査」の結果からも明らかだ。2020年4月の緊急事態宣言以降、在宅勤務が一般化し、自宅で過ごす機会が大幅に増えるなど、消費に対する価値観や企業に対する価値観が大きく変化し、企業経営は苦境に立たされている。
帝国データバンクの発表によれば、コロナ禍に約82%の企業が現状もしくは、将来の経営状況の悪化を認識している。日本能率協会の2020年の調査結果によれば、新型コロナウイルス感染症拡大による事業への影響について、90%以上の企業が、国内営業・販売について「大きな影響があった」「影響があった」「やや影響があった」と回答している(図1)。
これらの影響は、業種業界によって多少異なっているが、総じて営業・販売において新型コロナウイルス感染症の影響がビジネスに暗い影を落としていることが読みとれる。
たとえば、某生命保険企業では、700ヵ所以上の営業拠点が休業となり、営業職員約2万人近くが営業の自粛を与儀なくされた。また、製薬業界では、コロナ禍において病院への訪問規制が行われ、従来型の訪問営業による活動を行うことができなくなった。
しかしこのような環境下において、生命保険業界では、対面型の営業を主体としてきたこれまでの常識を打ち破り、オンライン型(非対面・非訪問型)の販売を始めた企業も出てきている。また社会情報サービスの調査によれば、製薬業界では「MRの訪問規制について、メールやWebで代替えしているため困っていないとする医師が7割と多いが、コロナウィルス感染と関係ない医薬品の情報が入手できないなどの不便さを感じている医師が3割存在する」と、従来型の営業・販売モデルを継続させる必要が必ずしもないという結果が浮き彫りとなってきている。
保険業界や製薬業界の例にあるように、コロナ禍では顧客自身の価値観や行動変容が進んだ。つまり、顧客との接点でもある「営業・販売」は変革を与儀なくされ、顧客接点の見直しは避けられないのである。