営業の魅力は「自由度が高い」こと
――松木さんも、キャリアは営業からスタートしていたんですね。
外資系生命保険の営業職として、宇都宮、根室、仙台と全国を転々としていました。たいへんだったのは、金融商材を扱うため、金融庁に定められたルールに従って活動を行う必要があったことです。会社所定以外の提案資料をつくるには本社の複数部門の承認を得る必要がありました。
数年間、営業としてのキャリアを積んだのち、当時社内にあった「フリーエージェント制度」に応募しました。そこで、本社のマーケティング職へと転向し、いくつかの職種にもチャレンジしていきました。30歳ごろ、今後のキャリアを考えて自分のやりたいこととできることを整理してみたんです。そこで「人の育成に関わること」「クリエイティブな仕事」というキーワードを導き出し、リクルートマネジメントソリューションズに出会いました。現在はコンサルタントとして、企業の顧客接点である営業組織の強化から、人事制度改定や従業員調査まで幅広い支援を行っています。
実は、当社に入って3年めのタイミングで「コンサルタントから営業に異動したい」と自ら申し出て、2年半ほど在籍したんです。まったく異なる市場から転職してきて、マーケットやお客様のことを深く知らずに仕事をしているなという違和感があったからでした。営業の仕事は想像以上に楽しくてずっといたかったのですが(笑)、コンサルタントの人員も必要なので、現在のポジションに戻りました。
――松木さんは、営業という仕事のどのようなところに魅力を感じますか。
大きくはふたつです。ひとつは意外に思う方もいらっしゃるかもしれないのですが、「自由度が高い仕事」であること。商品自体は変えられないことも多いかもしれませんが、どんなお客様にどんな提案をし、どんな対話をするか――これらを自分で考えることができる仕事はなかなかありません。たとえば、コンサルタントの仕事だと「この案件を担当してください」と案件が決まったところから仕事がスタートすることも多いです。その点営業は課題を発見する早い段階から仕事に携わることができる魅力があります。
そのなかで、さまざまな人に会うこともできます。当社の営業でも金融業界・IT業界さまざまな業界の課題や現状を知ることができました。社内でも、営業をハブにしてさまざまなアウトプットが行われますし、人から情報を得て成長できるシーンが数多くあると思います。言われたことを淡々とこなす「不自由な仕事」だと思い込まないで欲しいと思います。
もうひとつは、「成果が見える」ということですね。最前線で自社の商品やサービスが社会的価値を発揮しているか、目にすることができます。これは、やりがいにつながる魅力です。
――数多くの企業の営業組織を支援してきた立場から、営業組織がこれまでどんな課題を抱えてきたのか教えてください。
ある時期まで、「営業はお客様と仲良くなるのが仕事だ」という風潮もありましたが、バブル崩壊後の不景気が続き、営業も費用対効果を問われるようになっていきました。自社は他社とどう違い、それが顧客のどんな成果につながるか、と提供価値を顧客に伝える力が必要となったのです。顧客の事業の方向性や課題を深く理解して提案できる「顧客本位な」ソリューション営業――平たく言えば、顧客の担当者が経営会議に提出できる稟議書をつくる支援ができない営業は、売上を上げられない時代となりました。当社も、1990年代から数多くの営業向け研修を開発し、提供してきました。