経営者は、「アセスメント」で年1回の営業組織の健康診断を
自分自身の健康状態について年に1回健康診断を受診しているのは、自らの健康状態を正確に数値・データで確認をするためである。営業組織においても、その営業組織の“健康状態”について年1回はアセスメントを活用して数値・データで営業組織の成長を確認すると共に問題点を明確にすべきである。
我々が東京大学・筑波大学の先生方と営業組織に関する共同研究の中で開発した「セールス・ダイアグノシス」を例に、いくつかの事例を紹介したい。
「セールス・ダイアグノシス」を使った調査では、次のような【1】~【4】の4つのカテゴリーと❶~❽の8つの分析項目について検査を行う。全144問の質問で構成されており、34個のグループにまとめることができる。
- エンゲージメント「❶仕事意識」
- マーケティング「❷市場環境理解・戦略立案」
- マネジメント「❸仕事の進め方」
- セールススキル「❹事前準備」「❺アプローチ」「❻ヒアリング」「❼プレゼンテーション」「❽クロージング」
営業組織のメンバーにすべて設問に解答してもらい、営業成績や営業組織に関するいくつかの情報を提供により、アセスメント結果と相関分析を行う。すると、営業成績の上位群・中位群・下位群でのアセスメント結果の差が浮き彫りとなる。
これはある企業に対して行った組織報告書のサンプルだ。赤が成績上位群、黄色が注意群、青が下位群となっている。
きれいに上位群、中位群、下位群と結果は並んでおり、上位群はすべてての項目で中位群・下位群を上回っている。左図は、上位群と下位群とのスコア差で大きかった項目別ランキングになっている。もっとも大きかったのが、1位「仕事意識」、2位「仕事の進め方」3位「事前準備」との結果であった。行動面では、「仕事の進め方」や「事前準備」での改善が下位群を上位群に近づけ、成長させるための強化ポイントとなっていることがわかる。
しかし、社内での比較でなく、過去受験者の中で営業成績が上位10%以内である「トップセールスモデル」というさまざまな業種業界のトップセールスの社外データと比較すると、トップセールスモデルと下位群との差は、1位「市場環境理解・戦略立案」、2位「事前準備」、3位「仕事の進め方」となる。つまり、井の中の蛙のようにならず社外と比較すると、マーケティング部分の能力差が極めて大きく、同社の上位群ですら劣っている点であることがわかるのだ。
同社の商品は比較的競合他社との差別化がしづらい商品であったため、PUSH型営業となっており、「クロージング」と「プレゼンテーション」で即決を促す営業であった。他社と比較した場合、「事前準備」や「仕事の進め方」もさることながら、「市場環境理解・戦略立案」を強化する必要がある。より成約率を高めるために、競合比較分析を実施し、自社の強みを明確にし、訴求力を強化することで、課題解決を行った。