成果起点の営業育成 セールス・イネーブルメントとは
山下 SalesZine Day 2020 Summer基調講演、「チームを強くするデータ戦略」をテーマに始めていきます。アールスクエア・アンド・カンパニーで代表を務めています山下です。弊社は、恐らく日本で初の「セールス・イネーブルメント」に特化した会社です。私は前職のセールスフォース・ドットコムで、イネーブルメントチームの代表を務め、昨年末に書籍『セールス・イネーブルメント 世界最先端の営業組織の作り方』(かんき出版)を出版しました。この「イネーブルメント」のアプローチを市場に広めるべく日々活動をしております。
徳田 NTTコミュニケーションズの徳田です。平成13年の入社後、営業に配属され、大手担当の法人営業を15年間経験しました。「いいかげんにしろ」と言われそうなタイミングで(笑)、新規開拓営業組織の事業戦略と人事戦略を担当となり、組織能力開発に注力する中で、山下さんに出会いセールス・イネーブルメントについて教えていただきました。2019年5月に「Data.Camp」という新しい組織を立ち上げ、大手法人向け営業全体のイネーブルメントやマーケティングを任されています。
山下 まさに営業現場から、企画と人事の仕事を経験し、全社横断のイネーブルメントをリードするという、イネーブルメントの王道を歩んでいるような印象です。
徳田 当社の育成方針に合わせ、全社的な視野を持つ立場も経験させてもらえたこと、長く営業をやってきたことのふたつが合わさり非常によかったなと。いつまでも現場感覚を忘れずに営業改革に取り組むことができていることにつながっていると思います。
山下 ありがとうございます。本日はその現場感をもとに、どう施策を打ってきたのか伺わせてください。その前に、「イネーブルメント」というキーワードを初めて聞く方もいらっしゃるかもしれません。まずはこの概念について簡単に説明させてください。そのあと、伝統的な大企業であるNTTコミュニケーションズの営業組織が抱えていた課題と変革、そして変革をリードする徳田さんたちの組織Data.Campやテクノロジーの活用について伺っていければと思っています。
最近、イネーブルメントという言葉は徐々に広がりつつあることは感じますが、なかなか日本語に訳しづらい言葉です。営業の組織開発や人材開発など、広義に使われるケースも多いですが、端的に言えば「成果起点の営業育成」です。育成は当然古くからあるテーマですが、実際は成果につながったかを振り返るところまで到達していないことも多いと思います。
営業育成においては、期待する成果や行動は何であり、そのために必要な知識やスキルはどんなものか設計することがまず必要だと我々は考えています。そうすることで、育成のプログラムによって行動が変わり成果につながったかを検証するサイクルをつくることができます。イネーブルメントは、この営業の成果と行動、知識とスキルをシステムとデータを活用しながらしっかりとつなげ、PDCAサイクルを回す営みです。徳田さんたちのようなイネーブルメント組織は、今後営業支援を行うコア組織になっていくと思います。
育成がテーマだとお伝えすると、「人事とイネーブルメントはどう棲み分けるのか?」と質問をいただきます。人事部門は、全社共通の課題、たとえば「リーダー育成」「新卒教育」など営業以外の部分をリードする役割があり、営業特化のイネーブルメントと人事はうまくコラボレーションもできるはずです。