ALL DIFFERENTおよびラーニングイノベーション総合研究所は、同社の管理職向け研修の受講者415名を対象に「管理職意識調査」を実施した。本レポートでは、管理職が課題とする「部下育成」のうち、「部下へのフィードバック」に焦点を当てた結果を公表する。
<背景>部下は成長につながるフィードバックを求めている
ALL DIFFERENTが実施した新入社員意識調査(※)によると、自身が成長するために「上司や先輩からの事後のフィードバック」が必要だと回答した新入社員が半数以上いる結果となった。
フィードバックへのためらい
半数以上の管理職がフィードバックをためらう
課長クラス以上の管理職(以下「管理職」と記載)に、部下へフィードバックする際、ためらったことがあるかたずねた。その結果、53.2%が「はい」と回答し、半数以上の管理職が部下へフィードバックすることをためらうことが明らかとなった。
新任管理職の約6割がフィードバックをためらう。ステージ初期の管理職ほど割合が高まる
管理職のうち、1~3年目の課長クラスを「新任管理職」、4年目以上の課長クラスを「ベテラン管理職」、部長クラスを「幹部候補」と3つのステージに分類し、ステージ別に違いがあるか調べた。
部下へフィードバックする際、ためらったことがあるかステージ別に比較した。「はい」と回答した割合は、新任管理職は63.2%、ベテラン管理職は53.2%、幹部候補は39.3%となった。ステージが低い管理職ほど、フィードバックをためらう傾向にあることが明らかとなった。
ためらう理由、新任・ベテランは「部下の反応」、幹部候補は「自分の正しさ」への不安が上位に
次に、フィードバックをためらった理由をステージ別に比較した。
新任管理職は47.8%が「部下の反応に対して不安があるから」と回答。次に「自分が本当に正しいかに自信がなかったから」が40.3%、「適切な伝え方がわからなかったから」が38.8%と続いた。
ベテラン管理職は「部下の反応に対して不安があるから」が55.9%、「適切な伝え方がわからなかったから」が45.8%となり、どちらもほかのステージより突出する結果となった。
幹部候補は、「自分が本当に正しいかに自信がなかったから」が54.2%、「部下の反応に対して不安があるから」「もう少し様子を見てからでも良いかと思ったから」が同等の割合で41.7%となった。
フィードバックの頻度
新任は「週1」「特に決めていない」、ベテランは「即時」、幹部候補は「特に決めていない」と回答
部下にどれくらいの頻度で業務に関するフィードバックをしているかたずねた。新任管理職は「週に1回フィードバックしている」「特に決めていない」がともに23.6%。ベテラン管理職は、「即時にフィードバックしている」が26.1%、次に「特に決めていない」が19.8%。幹部候補は「特に決めていない」が26.2%、「即時にフィードバックしている」が24.6%となった。
フィードバックの伝達方法
全体の8割以上、幹部候補の9割以上が「対面・口頭伝達」
フィードバックの伝達方法について質問したところ、8割以上が「対面で、口頭伝達している」と回答。ステージが高まるほど対面・口頭伝達を選択しており、幹部候補は9割以上となった。同時に、3割以上が「チャットやメールなどで文書伝達している」と回答し、新任管理職ほどその割合は高くなった。
フィードバック時に心がけている伝達内容
7割以上の管理職が「事実や結果に基づく具体的な内容」を心がける
フィードバック時にどのようなことを伝えるよう心がけているか質問したところ、各ステージとも7割以上が「事実や結果に基づく具体的な内容」と回答。とくに幹部候補は8割以上が回答した。
ステージ別に比較したところ、新任管理職は「事実や結果に基づく具体的な内容」(72.6%)の次に、「フィードバックの意図や理由」が56.6%、「日頃の感謝や努力への労い」が47.2%と続いた。
ベテラン管理職では、「事実や結果に基づく具体的な内容」(70.3%)の次に、「日頃の感謝や努力への労い」が53.2%、「フィードバックの意図や理由」が51.4%と続いた。
幹部候補は、「事実や結果に基づく具体的な内容」(82.0%)がほかのステージよりも高い結果となった。
フィードバック後の部下の行動に対する悩み
「課題を認識しているが、行動につながらない」がトップ
フィードバック後の部下の行動について悩んでいることを質問したところ、46.8%が「自分の課題を認識してはいるが、すぐに行動につながらない」と回答。次に「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」(28.9%)が続いた。
幹部候補はフィードバック後の部下の行動に悩みを感じる割合が高い
上記の悩みの割合を、管理職のステージ別に比較したところ、各ステージとも「自分の課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」と回答した割合がもっとも多く、次に「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」が続いた。
新任管理職では、「自分の課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」と回答した割合が44.3%となり、次に「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」が34.0%となった。
ベテラン管理職では、「自分の課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」が49.5%、「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」が27.0%と続いた。
幹部候補では、「自分の課題を認識しているが、すぐに行動につながらない」が77.0%、「質問や反論はないが、自分の課題を認識してもらえないことが多い」が59.0%と続いた。幹部候補は全項目においてほかのステージよりも悩みを感じる割合が突出していた。
調査概要
- 調査対象者:ALL DIFFERENTが提供する管理職向け研修の受講者
- 調査時期:2024年5月20日~7月17日
- 調査方法:ウェブ・マークシート記入式でのアンケート調査
- サンプル数:415名
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属性:
- 業種:建設業32人(7.7%)、製造業64人(15.4%)、電気・ガス・熱供給・水道業5人(1.2%)、情報通信業100人(24.1%)、運輸業,郵便業16人(3.9%)、卸売業,小売業74人(17.8%)、金融業,保険業17人(4.1%)、不動産業,物品賃貸業12人(2.9%)、学術研究,専門・技術サービス業17人(4.1%)、宿泊業,飲食サービス業2人(0.5%)、生活関連サービス業,娯楽業1人(0.2%)、教育,学習支援業1人(0.2%)、医療,福祉3人(0.7%)、複合サービス事業11人(2.7%)、サービス業(他に分類されないもの)37人(8.9%)、公務4人(1.0%)、その他18人(4.3%)、わからない1人(0.2%)
- 企業規模:~50名44人(10.6%)、51名~100名53人(12.8%)、101名~300名202人(48.7%)、301名~1,000名90人(21.7%)、1,001名~5,000名18人(4.3%)、5,001名以上6人(1.4%)、わからない2人(0.5%)