日経BPは、マーケティング&イノベーション専門メディア「日経クロストレンド」が作成した「技術」「マーケティング」「消費」の潮流を見極める「トレンドマップ 2021下半期」を発表した。
技術、マーケティング、消費の3分野は変化が激しく、さまざまなバズワードが飛び交う。このなかから、中長期的に注目すべきトレンド(潮流)の見極めを目的とし、日経クロストレンドの活動に助言する外部アドバイザリーボード約50人と、編集部の記者など各分野の専門家の知見を集約。その分析結果は、「現時点での経済インパクト」と「将来性」の2つのスコアでマッピングしている。
前回の2021年上半期調査と比較し、今回、将来性スコアがもっとも伸びたのは、技術分野では「トークンエコノミー」「GNSS(測位衛星システム)」、マーケティング分野では「CRM(顧客関係管理)」「OMO・オムニチャネル」、消費分野では「オタク消費」となった。
また、経済インパクトで今回スコアを伸ばしたキーワードは、技術分野では将来性スコアと同じく「GNSS」「トークンエコノミー」でした。マーケティング分野では「OMO・オムニチャネル」に加え、「D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)」が浮上。消費分野では「サブスクリプション消費」が躍進した。
今回の調査で新たに追加したキーワードは、マーケティング分野の「UGC(ユーザー⽣成コンテンツ)」「MEO(マップ検索エンジン最適化)」、消費分野の「TikTok売れ」という3つのキーワード。また、マーケティング分野では前回調査まで「オムニチャネル」としていたキーワードを今回は「OMO・オムニチャネル」と変更し、消費分野でも「サステナブル消費」「エシカル消費」と分かれていたキーワードを「サステナブル・エシカル消費」とまとめている。
今回のトレンドマップ2021下半期調査は、首都圏などに3度目の緊急事態宣言が発令された21年8⽉に実施された。主なトピックスは次のとおり。
「トレンドマップ2021下半期」の主なポイントは次のとおり。
技術分野の将来性、経済インパクトで「トークンエコノミー」のスコアが伸長
21年に入って国内でも企業の参入が相次いでいる「NFT(非代替性トークン:Non-Fungible Token)」のブームが、「トークンエコノミー」に注目が集まった背景にあると見られる。NFTは、ビットコインなどの暗号資産と同じくブロックチェーン(分散型台帳)技術をベースとし、取引データをネットワークにつながった多数のコンピューターで共有するため、改ざんが非常に困難なのが特徴。デジタルデータもリアルな美術品などと同様に希少性が担保され、資産的な価値を持つようになることで、デジタル上のマーケットプレイスの拡大が期待される。
同じく、21年にビジネス上の注目度が高まったキーワードに、インターネット上でアバターなどを介して参加者同士の交流が可能な「メタバース(仮想空間)」がある。そのメタバースとNFTの相性はよく、バーチャルな世界に巨⼤経済圏を⽣み出す技術として今後も注目を集めると予想される。
マーケ分野では、「OMO・オムニチャネル」が将来性、経済インパクトのスコアで躍進
新型コロナウイルス感染症拡大の影響で外出自粛が広がり、EC市場が急速に拡大している。ネット化が進んだ消費行動は元に戻らないといわれるなかで、コロナ後を見据えた事業戦略として店舗とECサイトを誘導した「OMO・オムニチャネル」への関心が高まっている。
同調査では「CRM(顧客関係管理)」の将来性スコアが急浮上しているが、OMO・オムニチャネルが推進されることでオンオフ問わず顧客データを蓄積できるようになると、CRMの行動化にもつながる。今後はデジタルで消費者と直接つながり、関係性を築いていく仕組み作りが一層求められる。
消費分野は「オタク消費」の将来性スコアが急上昇。Z世代の「推し活」が背景に
消費分野で将来性スコアを伸ばした「オタク消費」の背景には、Z世代で広がる「推し活」が挙げられる。好きなアイドルや俳優、キャラクターなど、特定の対象を熱狂的に応援する動きで、Instagramではハッシュタグ「#推しのいる生活」が81万7000件以上も投稿されている。
また、幅広の透明テープに油性ペンで推しの名前を書いてグラスに貼り付けた「推しグラス」や、トレーディングカードを入れた透明ケースをシールやラインストーンで飾る「トレカケースデコ」など、推しグッズの制作にハマる人も続出。こうした消費者の強いこだわりをいかに自社商品・サービスに取り込むか、あるいは作り出すことが今後はヒットの条件になると推察される。