インテリジェントコンテンツ管理(ICM)プラットフォームのBoxは、企業のコンテンツ管理にAIを活用する一連のイノベーションを発表した。
今回の発表には、企業独自の要件に合わせて個別にカスタマイズされたBox AIエージェントを作成・展開できるBox AI Studioや、契約管理、請求書処理、従業員のオンボーディングをはじめとする、重要なビジネスプロセスを扱うアプリケーションを開発できるBox Appsなどが含まれる。
また、新たに最上位プランとして、ひとつのプランでBoxのインテリジェントコンテンツ管理プラットフォームのすべての機能を利用できるEnterprise Advancedプランも発表した。
Box AI Studio
Box AIは、MicrosoftのAzure OpenAI Service、AWSのAmazon Bedrock、AWS上で利用できるClaude、Google CloudのVertex AIなど、大規模言語モデルと柔軟かつ安全に統合でき、将来登場するモデルにも対応できるようになっている。
2025年1月に提供が開始されるBox AI Studioでは、企業がコンテンツにAIを適用する際のカスタマイズ性とコントロール性を強化することが可能になる。管理者はAI Studioを使用して、Boxのパートナー一覧からもっとも適したAIモデルを選択してカスタムプロンプトとパラメータを微調整するだけで、業界固有のニーズやワークフローに基づいた自社のBox AIエージェントをノーコードで作成できる。
このようなBox独自性を活かして、企業はさまざまな信頼できるAIパートナーのAIモデルを組み合わせて、固有のユースケースのニーズに対応するようにカスタマイズされた特殊なAIエージェントを、安全性と権限管理された状態で展開できるようになる。
管理者はBox AI Studioを次のように活用できるようになる。
- 組織全体のワークフローを改善するBox AIエージェントの作成、テスト、導入
- シンプルなドロップダウン式のメニューで、さまざまなAIモデルをシームレスに切り替え
- カスタムプロンプトを開発し、特定のタスクや部門のパフォーマンスを向上
- モデルパフォーマンスデータを追跡、分析することで、各ユースケースでもっとも適した結果が得られるAIモデルを決定
- ユーザーの権限を設定してアクセスを制限することで、インテリジェントソリューションの使用やカスタマイズが可能な組織内のユーザーをシームレスに管理
- サービスを中断することなく、Box AI Studioを既存のテクノロジースタックやワークフローと統合
Box AI Studioでは、次のようなユースケースが考えられる。
営業:プロンプトの指示がカスタマイズされたBox AI営業エージェントは、過去の契約書や顧客データのインサイトをもとに、AIが生成した契約の要約フォーマットや適切かつ求めている質問への回答を手伝うことで、営業の効率を高める。
マーケティング:自社のブランドガイドライン、ターゲットオーディエンスの嗜好、コンテンツのフォーマットに基づいてカスタマイズされたBox AIマーケティングエージェントは、自社のメッセージやブランドガイドラインに沿ったブログ記事、ソーシャルメディアのコンテンツ、マーケティングコピーを、AIエージェントに生成させることができる。
カスタマーサービス:Box AIサービスエージェントには、製品カタログ、顧客データのインサイト、過去のやり取りに基づいてカスタマイズされたプロンプトが表示されるため、従業員はスピーディーに正確な回答を共有でき、対応時間を削減できる。
人事:会社のバリューや従業員規則に基づいてカスタマイズされたBox AI人事エージェントは、タイムリーなフォローアップによる候補者の体験向上や従業員のフィードバックやパフォーマンスデータから実行可能なインサイトを提供することができる。
製品:現在および将来提供される製品を含む製品情報に基づいてカスタマイズされたBox AI製品エージェントは顧客からのフィードバックを取り込み、ギャップを要約して、顧客の質問に対応するのに役立つナレッジベースの推奨記事を提供することができる。
Box Apps
Box Appsは、企業内の各所に存在するコンテンツ中心のビジネスプロセスを管理するインテリジェントなアプリケーションを、容易に作成できるノーコードソリューション。Box Appsを使用して、さまざまな機能のダッシュボード、カスタマイズされたコンテンツビュー、ワークフロー自動化機能などを備えた用途に応じたアプリケーションを作成できる。
Box Appsは、コンテンツ中心のワークフロー管理に、次のようなプロセスをもたらす。
人事部門:就業規定、社内手続き、福利厚生の情報にメタデータをインテリジェントに適用するポリシーアプリを作成して、頻繁に使用される関連書類の作成、更新、保守のプロセスを体系的に管理できる。
マーケティング部門:資産管理アプリを作成して、グラフィックス、画像、ビデオなどのリッチメディア資産を管理できる。これにより、データの取り込み、保存、検索、取得や、ユーザーとのコラボレーションが容易になる。
法務部門:Boxに保存されている契約書のメタデータを自動的に抽出する契約アプリを作成できる。このアプリには、期限切れを警告する機能や、契約書を生成してレビューと承認を経た後に署名を送信するまでの標準プロセスを組み込むことができる。
経理部門:受領した請求書からメタデータをインテリジェントに抽出する取引管理アプリを作成し、抽出したデータを簡単に既存の発注書と関連づけたり、承認から支払いに至るまでの取引を追跡するプロセスを効率的に管理できる。
営業部門:アカウント管理アプリを作成して、NDA、提案書、見積書、契約書を検索して取り出せるため、取引サイクルを加速することができる。
Boxは、複雑なワークロー自動化ソリューションの開発を支援するために、ベータ版の利用が可能なBox FormsとBox Doc Genというふたつの新機能も発表した。Box Formsでは、効果的なウェブおよびモバイル向けフォームの作成や公開を容易に行うことができる。Box Doc Genでは、フォームやサードパーティ製アプリ、カスタムアプリ、メタデータからデータを抽出して自動的にカスタムドキュメントを作成し、Boxに保存できる。このようなツールをBox Apps、Box Relay、Box Signと組み合わせることで、統合型ワークフロー自動化ソリューションをBox Platform上に構築できる。
セキュリティとコンプライアンス関連の機能強化
Boxは今回、データセキュリティとコンプライアンスを扱う新機能として、Box ArchiveとBox Content Recoveryも発表した。コンテンツの長期保全を容易に行えるBox Archiveは、企業における法規制とコンプライアンス義務の遵守に役立つ。Content Recoveryは、ランサムウェア被害からスピーディーかつ正確にコンテンツを復旧する。1月よりベータ版が開始されるBox Archiveは、管理者に次のメリットをもたらす。
- 企業がアーカイブされたコンテンツへの所有権を持つことで、それらのコンテンツへのアクセス制御を確実にし、また、ユーザーのファイルや検索結果から削除することで、ユーザーがアクティブな共同作業に集中できるようになる。さらに従業員の入れ替わり時にコンテンツが失われるリスクを低減できる
- アーカイブ済みのコンテンツにアクセスできるため、アクティブなファイルと同じ応答時間でアクセスできるようになる
- エンドツーエンドのコンテンツライフサイクル管理により、コントロールとポリシーを強化し、ライフサイエンスにおける文書管理、金融サービスにおけるFINRAの保持義務、公共部門におけるNARAのアーカイブ要件など、規制業界の文書保持要件に対応しながら、作成から破棄まで、ガバナンスとコンプライアンス基準を容易に維持できるようになる
- 規制要件に対応:Box ZonesとBox Archiveを利用すると、アーカイブされたコンテンツを任意の指定地域に保管して、データの保管場所に関する組織のニーズをサポートし、規制要件に対応する
- コンプライアンス要件を満たし、監査時のプロセスを短縮するために、最終版が変更できないようにコンテンツを保護する
サイバー犯罪者にとって、ランサムウェアは組織の侵害を試みる際の常套手段であり、それがもたらす損害は深刻なものになりかねる。最近の報告によると、ランサムウェアによる攻撃は2023年に62%急増し、企業に対する脅威が増大していることが明らかである。
BoxのContent Recoveryは、ランサムウェアの影響を軽減するためのソリューション。企業は、個人や規模を問わず、侵害されたファイルをスピーディーかつ正確に復元し、ビジネスの継続性を確保することができる。
Content Recoveryは、次の特徴を備えている。
- ファイルの復元に必要な時間を短縮し、インシデントの規模に関係なく、数日または数週間から数時間単位にまで復旧時間を短縮する
- 特定された時間枠の間に変更または破棄されたファイルの包括的な可視性を示すダッシュボードを提供することにより、潜在的なランサムウェアインシデントを察知する
- スナップショットに基づいてシステムをロールバックするのではなく、Content Recoveryでは、日付範囲のカスタマイズ、実行された操作ごとのファイルのセグメント
- 復元プロセスを合理化することで、管理者は復元したいコンテンツを特定したら、少ない工程で復元できる
- コンテンツは復元後、Box Driveに自動的に同期されるため、ビジネスの中断を抑える
Enterprise Advanced
今回、新たにEnterprise Advancedプランを発表した。これは、顧客がひとつのパッケージでインテリジェントコンテンツ管理プラットフォームのすべての機能を利用できるプラン。Enterprise Advancedプランには、現在Enterprise Plusプランで提供されているすべての機能に加え、今回BoxWorksで発表された、次の新しいインテリジェントコンテンツ管理機能が含まれる。
- Box AI Studio
- Box Apps
- Box Forms
- Box Doc Gen
- Box Archive
- 500 GBファイルのアップロード
- 開発者向けツールの機能強化とAPI割り当て上限の引き上げ
なお、新しいEnterprise Advancedプランは、1月から購入可能になる予定。
The Box Impact Fund
4年目を迎えたBox Impact Fundでは、児童福祉、災害対応、環境というBox.orgの3つのテーマ分野でデジタル変革プロジェクトを遂行している組織を支援する。非営利団体の重要なミッションを支援し、組織内のデジタル変革を進めるための資金として、ひとつの対象団体につき25,000ドル、合計150,000ドルが給付される。今年は新たに、AIを利用したデジタル変革の提案を含むプロジェクトに注目が集まっている。過去に資金を獲得した団体としては、Foster America、NatureServe、Sesame Street、国際難民支援プロジェクトなどがある。
Box 共同創業者兼CEO アーロン・レヴィ(Aaron Levie)氏のコメント
企業が保有するデータの90%は非構造化データ、つまりコンテンツです。大規模言語モデル(LLM)のイノベーションにより、それらデータを構造化させることが容易となり、非構造化データのサイロを取り除き、ビジネスプロセスに結びつけることが可能になりました。このようにコンテンツの扱い方を一変させるのが、Boxのインテリジェントコンテンツ管理です。お客様の事業規模にかかわらず、レガシーシステムの数分の1のコストで、コンテンツの価値を最大限に引き出し、ファイルに含まれるデータを活用して、イノベーションの推進、プロセスの自動化、重要な情報の保護を推進できます。これは業界初のソリューションです。
IDC ワークプレースソリューショングループ バイスプレジデント ホリー・ムスコリーノ(Holly Muscolino)氏のコメント
Boxは、直近ではメタデータ管理や非構造化データからビジネスの付加価値を生み出す生成AIの機能など、コンテンツのライフサイクル全体をサポートするインテリジェントコンテンツ管理プラットフォームに対する革新的な機能の実装に継続的に取り組んでいます。Boxの使いやすさ、地域展開、強力なセキュリティ機能は、最新のSaaS型インテリジェントコンテンツクラウドサービスプラットフォームを求めるあらゆる規模の企業にとって、現実的な選択肢となっています。