案件が"止まっている"とき、お客様は何をしているのか?
冨田(SALES ROBOTICS) 本セッションでは営業のプロフェッショナルであるTORiX 高橋浩一さん、ナレッジワーク 桐原理有さんをお招きしました。インサイドセールスとエンタープライズセールスをテーマに、生々しい本質的な部分をお伝えできればと思います。モデレーターを務める冨田です。よろしくお願いします。
ひとつめのテーマは、エンタープライズセールスにおいて求められることです。
高橋(TORiX) やはり総合力が求められますよね。お客様の組織が非常に大きく、思うように商談が進まないこともあると思います。営業組織内では「あの案件どうなっているの?」というマネージャーの問いに、メンバーが「止まっています」と答えるシーンがよくあるのではないでしょうか。
個人的には、これがまかりとおってはいけないと考えています。では、どうするか。私の場合は、「案件が止まっているいま、お客様は代わりにどんなことに取り組んでいるの?」と聞きます。この質問に対して明確に回答ができる営業はお客様とコミュニケーションをとることができていますね。
冨田 なるほど。答えられない営業はそもそもお客様と会話ができていないわけですね。
高橋 加えてあまり使ってほしくないのは「待つ」という言葉です。もちろん、大企業の時間軸はあるのですが、それでもお客様と話す時間をつくるなど能動的な動きは必要ですね。
冨田 ソリューションを売り込むのではなく、まずはどれだけお客様としっかり向き合えるかがスタート地点かなと感じました。この点はエンタープライズセールスとしてお客様に向き合っている桐原さんからポイントをうかがっても良いですか。
桐原(ナレッジワーク) 高橋さんのおっしゃること、よくわかります。大手企業側は日々さまざまな商談やパートナーとのやりとりに対応しています。その状態で、営業(売り手側)都合の商談・営業活動を始めると、顧客との間にずれが発生し始めるんですよね。お客様が実現したいことを支援する、課題ととらえていることをともに解決する立場に立ち、いわゆる検討フェーズからプロジェクトチームとして伴走型で支援する感覚が必要です。
BANT-Cを聞くのは「大嫌い」⁉
冨田 大手企業は商談化までの道のりが非常に長いイメージがあります。どれくらいの回数、対話を重ねるのでしょうか。
桐原 インサイドセールスがとってくれたアポが初回の打ち合わせとなりますが、まずお客様の状態や課題についてヒアリングをさせていただくことが多いです。お客様が「課題を解決したい」「検討を進めたい」とおっしゃってくだされば、初回から「商談化」ととらえますね。
ただし、お客様の状況によっては我々から「お客様が検討を始めるのは、いまのタイミングではないですね」とお伝えし、商談化させないケースもあります。その場合も「この状態になったら再度検討いただく」という状態やネクストアクションは明確にしています。
冨田 現状やネクストアクションについて、1つひとつ丁寧に合意することも重要ですね。一方で、そのための情報をお客様からどれくらい引き出せるか、という点に難しさを感じている方も多いです。お客様を組織・個人の両面から理解するための工夫はありますか。
桐原 26年間大手向けの営業を行ってきましたが、お客様が抱える課題は年々複雑になっています。自分たち個人の問題でさえとらえづらい時代、会社・組織の課題となればさらに難易度が上がる。そこで、私たちは市場の状況や他社事例を提示しながら、お客様と一緒にそこを探っていくような動きをしています。
冨田 なるほど。フィールドセールス側からインサイドセールス組織にどのような項目の聞き取りをお願いしていますか。いわゆる「BANT-C」などの情報など……。
桐原 BANT-Cは……大嫌いです(笑)。なぜなら予算やタイミングを電話で聞かれてストレートに答えてくださることなんて、ほとんどないと思うんですよ。我々は、「こんなヒアリングを必ずしてきてね」というリクエストはほとんどしていません。