一気に結果を出して、急降下してしまう営業とは
短期的にトップをとる営業スタッフがいる。一気に結果を出してスポットライトを浴びるものの1年もしないうちに急降下してしまう。あなたの会社にもきっといたはず。
この手のトップ営業スタッフは「どんなかたちでもいいからとにかく契約をとる」と考えている。時には「このお客様には当社の商品はマッチしていない」とわかっていても売ってしまう。お客様が多少反論しても、応酬話法でねじ込んでしまうのだ。
しかも契約時にはアップセル(追加の契約)をして、できるだけ金額を吊り上げる。その商品がお客様にとって必要ではないものだとしても成績を優先させるのだ。
このやり方で一時、売上は上がってもお客様の信頼は得られない。すぐに息切れし、地獄に落ちていく。このやり方でトップでい続けることはできない。
なぜ、そうハッキリと言えるのか。それは短期で終わる営業スタッフをさんざん見てきたからだ。
研修先の営業スタッフは懇親会で「お客様は数字にしか見えない」と言っていた。さらには「お財布が開いたときにすべて奪い取るのがトップ営業だ」などとも言っていた。お酒が入っていたので多少の冗談もあったのかもしれないが、笑えなかった。この人は短期間トップをとったものの、すぐに失速。あっという間に転落したのだ。
無理やり獲得した案件はクレームになり……
私自身もハウスメーカーの営業スタッフ時代に何度も経験した。
あるとき、3ヵ月間の販売コンテストでトップをとったことがある。なぜか幸運が重なり同率でトップをとった。トップといっても限られたエリアでの話。だとしても当時の私には奇跡だった。
結果は良かったものの、内容には問題があった。ひとつは当社の建物では対応が難しい案件だったのだ。それはわかっていたのだが「あとひとつとればトップになれる」という欲に目がくらんだ。お客様が渋る中「私が責任をとりますから!」と押し切った。
トップの成績での表彰式。指名され表彰台に上り、拍手喝さいを受ける。初めての経験だ。本当に気分が良かったものだ。
そしてトップをとった翌月からまた新たな競争がスタートする。まわりの人たちから期待されるし、真価が問われる。気合いを入れてスタートした。しかし、無理に契約したお客様とトラブルになった。出鼻鼻をくじかれる。営業スタッフにとってトラブルは命取りだ。
ダメージはこれだけではない。さらには問題ないと思われた残りの案件もスムーズには進まない。
難しい案件に時間をとられ、フォローが手薄になっていたのが原因だ。細かい不満が積み重なり、クレームの嵐に。毎日クレーム処理に走りまわるハメになった。
次の3ヵ月は契約ゼロどころか、キャンセル物件があり“マイナス1”になる。ダントツの最下位。まさに天国から地獄を味わったのだ。
自分の欲のために強引にとった契約は必ずトラブルの元になる。痛い目に何度もあったものだ。無理して契約をとれば、その時は数字が上がる。短期であればトップをとることも可能だろう。しかし、その後必ず地獄を見ることになる。