型破りな営業スタイル「デザイン・イン」とは?
──材料メーカーでは、ディスプレイメーカーなどの「直接顧客」へアプローチを行う「スペック・イン」が一般的です。一方、デクセリアルズでは自動車メーカーなどの「最終顧客」ともコミュニケーションする「デザイン・イン」に取り組み、成果を上げたと聞いています。スペック・インとデザイン・インについても教えてください。
もともとデクセリアルズはソニーケミカルという社名で、ソニーグループのマテリアルを中心に扱っており、たとえばソニーが新たにビデオカメラを発売するときに、搭載するタッチパネルのデザインを共同で作り込むこともありました。
こうした取り組みは当時、ほかのマテリアル系企業ではなかなか珍しい動きでした。まさに製造業は、役割分担が明確に決められたバリューチェーンがあり、マテリアル系の企業であれば、商品を採用して開発する「直接的な取引先」にアプローチするスペック・インが一般的だったからです。
完成品を販売するメーカーへのアプローチであるデザイン・インは、営業経験が長いベテランの方からすると「とんでもない」と思われるような取り組みだったかもしれません。ある意味で怖いもの知らずに、果敢に営業をかけていました。ただ、完成品においてマテリアルの情報を基にしながら、設計面の会話を深掘りすることは非常に重要です。完成品の方向性をしっかり考えて、落とし込んでいったほうが良いものができるのは間違いありませんから。
──当時珍しかったデザイン・インのセールスは、どのように行っていたのでしょうか。
もうドアノックからやる、といった意気込みで営業をかけていました。待っていてもドアは開きませんから、営業をしたいお客様のキーパーソンにコネクションを持っていそうな人を見つけて、一緒にルートを開いていく、といった方法です。
手探り状態で始めた営業スタイルでしたが、完成品メーカーのお取引先からの反応は非常に良かったです。完成品メーカーにはマテリアルの開発担当がいらっしゃって、専門知識に飢えているような方も多く、会話が非常に弾みました。まさに、完成品メーカーにとっても求められている動きだったのです。