超人ほど陥りやすい「ガンバリズムの罠」
売上が伸びないのは「努力が足りないからだ」と思っていないだろうか。圧倒的な営業力と行動力、精神力で成果を出す“超人的”なマネージャーほど「あたりまえのことをすれば良いだけなのに」と首を傾げる。そのため、メンバーへの指導も「目標達成を意識せよ」「行動量を増やせ」「お客様と関係構築せよ」といった抽象的な精神論(p36)になりがちだ。
『営業の科学 セールスにはびこるムダな努力・根拠なき指導を一層する』(高橋浩一 著、かんき出版)では、営業1万人+お客様1万人の2万人調査を実施した。
同調査によると、ローパフォーマーは「お客様の言うことへ丁寧に耳を傾ける、いわゆる『真面目な営業』タイプが顕著に多かった」(p29)という。成果が出ないのは努力不足ではなく、間違った努力を続けているから。そうであるにも関わらず、マネージャーは具体的な指導を与えず「がんばれ」と叱咤激励ばかりする。これが「ガンバリズムの罠」だ。
「ガンバリズムの罠」とは、営業が思考停止したまま行動し続け、的外れな「がんばり」によって苦境に陥っているのに、武器(=的確な提案活動)を増やすことが見落とされている現象です。(p32)
本書において高橋氏は、「ガンバリズムの罠」が生まれる背景と、組織に与える影響について解説。そして「ガンバリズムの罠」を脱するための「武器」として、「購買者の仮面を外す」提案活動を説明する。
「購買者の仮面」を外し、顧客と関係構築する
真面目にがんばる営業ほど、顧客の言葉を真摯に受け止める。しかし、それが顧客の「本音」とは限らない。
表面的なセリフとして「検討しますのでお待ちください」と言ったお客様のうち86.3%は、心の中では(特定の条件が満たされれば)話を聞いてもよいと思っています。「お待ちください」と言われてそのまま待っていても、受注は増えないのです。(p53)
リスクや負担を避けて表面的なセリフを口にする「とっさの防衛本能」を、本書では「購買者の仮面」と定義する。営業は「購買者の仮面」を外し、その裏にある本音に応えなくてはならない。そうして「仮面が外れ、素顔になったお客様と一緒に検討活動を進めていくプロセスが、『お客様と関係構築する』ということ」(p68)なのだ。
この「購買者の仮面」の外し方こそ、営業マネージャーが教えるべき「武器」だと高橋氏は解説する。
成果をあげる営業組織では、「購買者の仮面」を外す行動が「勝ちパターン」として認識されています。そして、プロセスの見える化により「お客様の仮面を外せているかどうか」をチェックし、必要に応じて支援や介入を行っているのです。(p74)
本書では、「購買者の仮面」を「はぐらかしの仮面」「忙しさの仮面」「いきなりの仮面」「とにかく安くの仮面」「検討しますの仮面」の5つに分類。ひとつずつ章を立て、“ありがち”なシーンと仮面の裏に隠れた顧客の本音、仮面を外すアプローチ方法について解説している。
実は著者である高橋氏自身も、かつては「ガンバリズムの罠」にはまっていたという。その経験も踏まえ、「『がんばることを否定する本』ではなく、『がんばりが実るための応援歌』」(p426)として本書を執筆したそうだ。ぜひ本書を参考に、日々の営業活動における「がんばり」を「成果」として花開かせてほしい。
高橋氏も登壇![7/12]SalesZine Day 2024 Summer開催!
ウェブメディア「SalesZine」オープン5周年を迎え、すべての営業パーソンに向けた特別なオフラインイベントを開催!豪華スピーカー陣が贈るセッションを通して、「顧客」との向き合い方・営業が果たすべき「役割」を探ります。参加費は無料!ぜひイベント特設ページよりお申し込みください!