製品導入開始後に、顧客企業で起きること
まず、CS段階の「不確実性の量」を見てみましょう。製品が導入されたということは、買い手が自社製品を使用してプロジェクトを進めるためのあいまいさや不確実性が、縮減していると言えるはずです。
しかし実際のところは、「製品を導入すれば目標実現や課題解決ができる」といった手段と目標の論理に飛躍やモレ・ヌケがある状態で売れて(買われて)しまったり、買い手企業の導入担当者が、現場で製品を使用する担当者のニーズや課題をよく理解しないまま導入してしまったりしています。このような状態で製品が導入されると、CS担当者は次のような問題に見舞われます。
- 買い手企業の現場担当者の製品利用目的の設定や、継続利用の評価指標の合意に時間がかかる(決まらないまま進むこともある)
- 目標達成のためのリソースの把握、手段の選定、スケジュールの策定といった計画づくりに時間がかかる
- 買い手企業の導入担当者と現場担当者の上記の認識擦り合わせに時間がかかる(導入したら現場にお任せ)
- CS担当に入る情報が少なく、あいまいなため、予測を多分に含んだ資料を作成することになる。結果、資料作成に時間がかかり、買い手企業の担当者にとって適切ではない・読まれない資料をつくることにもなる(無駄にページ数が増える)
これらの問題は、目標や評価指標の設定、認識の擦り合わせや合意といった「計画策定」にあたるものです。カスタマーサクセスでは「オンボーディング」(顧客が自社の製品を使いこなせるようになっている状態)を完了させることが解約防止に必要とされていますが、計画策定にかかる時間が長くなれば、その分製品を使用する「実行」の時間は短くなります。SaaS製品は1回の契約単位が12ヵ月というところが多く、実行にかける時間が短くなるほど、1回実行してみてうまくいかなければ「残り時間も少ないので解約はやむなし」と判断されてしまいます。
では計画策定の時間を短くすれば良いかと言うと、そうとも限りません。実行可能性が低かったり、論理に飛躍がある計画を立てたりしてしまうと、実行の質も低くなります。そうなると実行の時間が多かったとしても、解約される可能性は高くなります。計画策定の問題を予め防いでおかないことには、オンボーディングが終わっても一向に目標が実現せず、解約される可能性が非常に高くなってしまうのです。
では、どうすれば計画策定の時間を短く、かつその内容を筋の良いものにできるでしょうか?