営業の業績管理は難しい
売上金額、契約数、利益率などの業績管理は、営業マネージャーの最も大事な業務のひとつです。しかし、月次、四半期、年間の業績を数値だけ見て満足したり、反省したりしているだけでは、業績管理をできているとは言えません。
そもそも、売上を決めるのは顧客です。製品をつくれば売れた時代であれば、生産量に応じて売上予測ができました。しかし、今はVUCA(Volatility:変動性・不安定さ、Uncertainty:不確実性・不確定さ、Complexity:複雑性、Ambiguity:曖昧性・不明確さ)という言葉に現されるように、複雑な市場環境、多様化する顧客ニーズ、不確実な経済動向などの影響で、予測がたてにくい時代になっています。だからと言って「なんとなく」売上目標を決めてしまうと、その目標達成のためのアクションも「なんとなく」になってしまいます。
マネジメントの原則「測定すること」「プロセスに分解すること」に立ち返る
ここで、マネジメントの原則に立ち返ってみましょう。
「測定できないものに責任を負うべきではない(測定できないものはマネージできない)」
これはピーター・ドラッカーの言葉だと言われており、計測して数値を見てコントロールすることの重要性を述べています。
そして、PDCAサイクルの生みの親で品質管理学者のエドワード・デミングは「プロセスを記述できなければ、あなたは自分が何をやっているのか理解できていない」と発言しています。統計的品質管理の第一人者であるデミングは、戦後の日本で品質管理を普及させた人物で、PDCAサイクルは当初彼の名前からデミングサイクルと呼ばれていました。彼は、生産工程の細かいプロセスへの分解、統計的手法により問題のあるプロセスの特定、問題を解消しトータルの品質を向上するという品質管理を提唱しています。
売上予測よりも多く売れたとき、「よかった」で終わらせずに、その原因がどのプロセスや要素にあったのか特定できていますか?販売に至るまでのプロセスを分解し、そのプロセスのどこに成功要因があるのか特定できるようにするのが品質管理的アプローチです。これは、結果が悪かったときでも同様です。
両者の主張を踏まえるならば、業務をプロセスに分解できること、そのプロセスを測定し数値で評価することがマネジメントの原則であり、KPIマネジメントもこの原則にのっとっています。
KPIマネジメントが実施できている場合、組織の戦略目標がプロセスや要素に分解されてチームや個人の目標になります。よって組織のゴールと個人やチームの目標が合致するので、部署、メンバーが同じ方向を向いてパフォーマンスを発揮できます。一方で、ゴールから分解したKPIマネジメントが実施できていない場合は、部署、メンバーが個別の方針を持ち、勝手な方向に進んでしまいがちで効率が悪くなります。KPIマネジメントができている組織はできていない組織に比べて、少なくとも10%はパフォーマンスが上がると言われています。