強いブランド力を誇るも、コロナ禍で「勘と経験」は通用せず
「NEW SALES で営業を変える」には、ナレッジワークが主催する「NEW SALES OF THE YEAR 2023」において「クリエイティブストラテジー賞」を受賞した日清食品と、「チャレンジスピリット賞」を受賞したベルシステム24が登壇した。NEW SALES OF THE YEARは、企業としての生産性向上、個人の満足度向上を目指し、「新しい営業」へ進化した企業を「顧客志向」「組織力」「テクノロジー」の3つの観点で選定するアワードだ。
セッション前半では日清食品による約2年間の営業変革事例が共有された。1958年にチキンラーメンの発売と共に創業した日清食品は、2023年で65周年を迎え、即席麺におけるトップシェアを誇る。渡辺氏は、「非常に恵まれた環境」にあるからこそ存在していた営業側の意識を共有した。
「私は日清食品が3社めです。当社のセールスには『カップヌードルは強いブランドだから大丈夫』という意識がまずありました。『与えられた製品を提案すればある程度採用してもらえる』という実情があり、『自分たちには強いブランドがあるから大丈夫』『勘と経験がすべてである』と感じているセールスが非常に多かったのです」(渡辺氏)
同社の営業スタイルはスーパーなどの店舗を訪問し、新製品を提案するというもので、「何品採用されるか」「何ケース購入してもらえるか」が商談におけるイシューだった。ところがコロナ禍以降、景色は一変。スーパーでは入店制限が行われ、メーカーとの商談が禁止された時期もあったという。スーパー自体も人手不足への対応のためデジタル化を進めており、得意としていた勘と経験の営業が通用しない状況に陥ったのだ。
そこで同社が取り組んだのが、「売り子からの脱却」。取り組んだ内容について渡辺氏は3つの観点で解説した。ひとつめが「営業の意識改革と教育」。意識改革の一丁目一番地として、まずは事業部の名称を変更した。
「社長に提案し、営業本部から『ビジネスソリューション本部』へと名称変更しました。意図はシンプルで、『営業』から想起される凝り固まった考え方を払拭すべく、現場の担当者が『営業』という言葉をなるべく使わないようにしたかったのです。たとえば、顧客と名刺交換をした際に、「どんな部署なの?」と問われれば、ビジネスソリューション本部のミッションを口に出さざるを得ません。そういう状況をつくったのが改革の第一歩でした」(渡辺氏)