悩みを打ち明けることでぐっと距離は縮まる
「悩みがないのが悩みですよ。あっはっはっは!」といった能天気な人は別として、ほとんどの人は、仕事の悩みはもちろんのこと、精神面、肉体面、金銭面など……何かしらの悩みや問題を抱えているものではないだろうか。そして悩みをひとりで抱え込めばストレスが溜まっていく。どんどん悪い方向へ進んでしまう。
ぜひ「実は悩んでいることがありましてね」と人に相談を持ちかけてみて欲しい。人は誰かに頼られると嬉しいし、その人を仲間と認識する。リアルの場でも良いし、ZoomやTeamsなどの画面越しでも良い。こうして悩みを「ユーティライゼーション」すれば、悩みを相談することで解決策のヒントが得られるだけでなく、その相手との関係を深めることもできる。まさに一石二鳥の方法だ。
先日のこと。新型コロナウイルスの感染拡大が下火になり、久しぶりに集まりに参加した(と言っても、夜の飲み会ではなくランチ会だったのだが)。その集まりに知人がUさんという中年男性を連れてきた。Uさんは社交的な感じではなく、どちらかというと人見知りするタイプ。どことなくよそよそしく、周りの人たちと馴染めずにいたのだ。
そんなときのこと。私に高校生の娘がいると知ってUさんが話かけてきた。
私「まあ、そうですね。Uさんはお子さんはいらっしゃいますか?」
Uさん「ええ、うちは娘ふたりで、高校生なんです」
私「そうですか。一緒ですね」
Uさん「小さい頃はパパ派だったのですけど、最近はめっきりですよ」
私「高校生になればそんなものです」
Uさん「最近は何を話したら良いのか悩んでいまして。なんとか仲良くできる方法はないでしょうか」
私「うちはけっこう仲が良いほうで、よく一緒に買い物に行ったりします」
Uさん「本当ですか、ぜひその秘訣を教えてください」
その後、周囲の人たちも相談の輪に加わり、Uさんを中心に話が盛り上がった。それからは周りの人たちとも馴染み、仲良く話をしていた。
Uさんは「高校生の娘がいる」という自己開示をしたあと、さらに「最近は何を話したら良いか……」と悩みを打ち明けた。その瞬間、相談を受けた私はもちろんのこと、その周りの人との距離が一気に縮んだ。このエピソードは、まさに自分のマイナス情報をユーティライゼーションして新しい人間関係をつくった好例だ。
もし、悩みを語らず「どこの誰で、何を考えているかわからない」ままであれば、いつまで経っても打ち解けることはなかっただろう。プライベートな情報を開示したり、悩みを相談したりするという行動をとることで関係が深まる。これを意識的に利用して欲しい。なぜなら、これは営業とお客様との関係にも言えるからだ。