01 商談機会が倍増する「販促の設計図」とは?
4つのステップで見る「販促の設計図」
「販促の設計図」とは、見込客との出会いの機会をつくり出し、興味を抱かせて商談にのぞみ、たとえ成約しなくても、次の商談機会を自動的に生み出す仕組みのこと。ここからは、会社の売上をアップすることを目的に、設計図のつくり方、それぞれの施策のヒントをお伝えします。
02 接点を生み出す「発掘」のステップ
売上増に最も貢献する「集客」を仕組み化する
日本のような成熟社会では、常に供給が需要を上回るため、消費者がどのように商品にたどり着くのかをイメージすることが大切です。つまり、セールスよりもマーケティングが重要ですが、これはB2Bでも同じこと。商品や販売方法など売る側の都合ではなく、顧客の属性・心理・行動から逆算し、最適な告知をするための全体像が必要です。これを「販促の設計図」といい、最も重要な部分が、この「発掘」のステップです。
基本的なスタンスとして、現代の見込客は「売り込み」を嫌います。自ら情報収集し、自ら商品を選択したいのが特徴です。そのため、最初の行動はPCやスマホで気軽に探せるネットサーフィンが一般的です。顧客との接点をもちたい企業は、検索キーワードに連動したリスティング広告、あるいは顧客に対してお役立ち情報を伝えるコンテンツSEOという手法を使います。
また、リアルな方法として、展示会やセミナーに足を運ぶとか、同業者や知人に相談するケースも多いでしょう。もちろん、うまくタイミングさえ合えば、マス広告やプレスリリースで接点をもつことも可能です。一方、企業側から顧客へ告知する方法として、テレアポやダイレクトメールもありますが、「売り込み色」が強く警戒される傾向にあります。営業トークの流れをつくる、コピーライティングのスキルを高めるなど、それなりの工夫が必要です。
発掘のステップは、一般的に「集客」といわれるもので、最も売上に貢献するため、どの企業でも関心が高く、集客コンサルタントなどという職業もあるようです。「はじめに」でも書きましたが、筆者自身、起業してから集客では多くの失敗をしてきました。競合企業も集客には力を注いでいるわけですから、相当なアイデアと粘り強い試行錯誤が求められています。
03 興味を抱かせる「誘引」のステップ
その後の商談を優位にする、魅力あるコンテンツを訴求
「発掘」のステップで見込客との接点を生み出した後は、顧客とのファーストコンタクトを迎えるため、いかに興味・関心を高めるかが大切です。競合他社と比べ、その後の商談を優位に進める意味でも、「誘引」のステップにはアイデア力が求められます。
リスティング広告をクリックし、商品のランディングページで即購入。あるいは、ダイレクトメールを見て、すぐに商品を申し込む。B2Cではあり得るケースも、B2Bの顧客には当てはまりません。B2Bの商品は高額で、簡単に決裁できないという組織の都合があるため、商品に興味をもった顧客は、お問い合わせや資料請求をする前に必ずコーポレートサイトを訪問します。つまり、商品と同様、その商品を提供する企業にも価値を求めるのです。
これは非常に重要なポイントで、例えば、商品のランディングページは格好いい。ダイレクトメールのセンスが良くて気になった。ところが、コーポレートサイトを訪問したとき、印象が悪ければどうでしょうか。せっかく問い合わせや資料請求しようと思っていたワクワク感が、一気に萎えてしまいます。また、ランディングページやコーポレートサイトへ訪問した顧客に、足跡(顧客情報)を残してもらうのも大切。このための魅力あるオファーがノウハウブックで、顧客が商品選びに必要な知識やヒントを得られるコンテンツを掲載します。
特にB2Bの場合、3~5社くらいの企業に声をかけ、場合によってはコンペやプロポーザルで発注先を決定します。そのため「誘引」のステップでは、「あなたの会社とぜひ取引がしたい」と感じさせなければなりません。資本力や実績で大手企業に劣る中堅・中小企業にとって、「誘引」のステップには、大手企業以上にアイデアを注ぐ必要があります。
04 商談を創出する「獲得」のステップ
「そのうち客」を育てながら、「いますぐ客」を成約する
「誘引」のステップで、コーポレートサイトから問い合わせや資料請求をしてくれた見込客を、自動的にリスト化する仕組みがあると便利です。メール送信された顧客情報をエクセルで管理する企業も多いと思いますが、この方法では入力に手間がかかるうえ、営業活動の全体像をとらえにくいというデメリットがあります。また、データを共有しにくく、管理者が進捗を把握できません。さらに、この後の「追跡」のステップでの見込客リストへの対応が面倒です。データベースでも構いませんが、マーケティングオートメーション(以下MA)を導入することをおすすめします。
ところで、見込客には「いますぐ客」と「そのうち客」が存在します。「いますぐ客」は欲しい製品・サービスが明確で、すぐにでも商談にのぞみたいお客様のこと。納期も決まっているケースが多く、ニーズが顕在化しています。商品を提供する企業としては、売上につながる可能性が高く、スピーディーな対応が求められます。受注すれば「既存客」となり、さらなる売上増が期待できますし、取引にいたらなければ「失注客」となります。
一方、「そのうち客」は少々、厄介な存在です。予算も納期もあいまいで、そもそも購入する気があるかどうかも不明。単なる“冷やかし”もあり得ます。割と多いのは、情報収集の段階である場合。取引先を変更したいとか、上司に指示されて商品の検討を始めたというケースです。
「獲得」の段階では、「いますぐ客」に対してファーストコンタクトを取り、受注にむけた準備を進めます。ところが、「そのうち客」と「失注客」にはつい対応を怠りがちです。彼らは後々、「いますぐ客」に育ったり、新たな「見込客」になったりします。そのとき、自動的に声がかかるようにする仕組みが、次の「追跡」のステップです。
05 機会を再現する「追跡」のステップ
営業スタッフに任せずに、定期的な顧客フォローを仕組み化
「発掘」のステップで見込客を集め、「誘引」のステップで興味を抱いてもらう。「獲得」のステップでは、「いますぐ客」と「そのうち客」に分けてアプローチします。最後は「追跡」のステップです。取引にいたった「既存客」には、クロスセルやアップセルをふくめた取引の継続をねらい、「失注客」「そのうち客」に対しては、新たな案件の発生や業者変更の検討が生じたときに備え、フォローを継続する必要があります。
顧客フォローとして、定期的な面会や電話も悪くはないのですが、「働き方改革」が進められている昨今、勤務時間中の生産性を高めようと、定まった用件のない面会や電話の時間は排除する傾向にあります。そのため、顧客フォローには工夫が必要です。「追跡」のステップでは、MAによる顧客管理システムが威力を発揮します。定期的な情報配信として、アナログは「ニュースレター」、デジタルなら「メールマガジン」が有効です。
ニュースレターは別名「広報誌」ともいい、年数回発行する8~24ページほどのパンフレットのこと。取引先や見込客にとって役立つ記事を編集し、顧客企業の担当者あてに郵送します。既存客なら、別の部署やグループ会社を紹介してくれることも。また、失注客やそのうち客に対しては、再度の商談へのきっかけづくりとなります。メールマガジンは取り組みやすい手法で、配信する企業も多いですが、読まれにくく迷惑メール扱いとなるケースがほとんどです。そのため、読み応えのあるコンテンツをつくるなど、相応の覚悟が必要です。
商談・提案の後、顧客フォローを営業スタッフ任せにするのではなく、会社として仕組み化するのがポイント。「追跡」のステップでは、売上の最大化にむけたフォローを継続します。
06 設計図のなかで重要な6つのパーツ
数々の失敗・成功からつかんだノウハウ
自動的に売上につなげる「販促の設計図」をつくるため、重要なカギとなる6つのパーツがあります。
- コーポレートサイト
- リスティング広告
- コンテンツSEO
- ダイレクトメール
- ノウハウブック
- ニュースレター
各パーツの詳細は後の章で紹介しますが、ここでは筆者の体験を通じて、6つに力を注ぐ理由についてお話しします。
起業するとき、「下請けをやらない」「営業はいらない」と決めていました。そのとおりにはなったものの、いま思えば、若さゆえの傲慢で思い上がった考え方だったと思います。一方、いくら質の高い仕事ができても、お客様がやって来なければ会社がつぶれることも理解していましたし、取引先を見つけるためにいろいろな方法を試しました。
1人200社のターゲットリストを用意し、テレアポをしたときは、社員たちがノルマをこなす一方、筆者はストレス耐性がなく、3社で白旗を掲げることに。FAXDMを送ったときは「紙のムダだから、やめてくれ」と叱られたこともあります。60万円をかけて掲載した新聞広告の反応はゼロ。上場企業との接点を得るため、高額の年会費を払って業界団体に参加しても、取引にはいたりませんでした。そんな失敗ばかりでしたが、成功した試みもあったのです。
それは、ダイレクトレスポンスマーケティングです。簡単にいうと、広告宣伝を通じて見込客に手を挙げてもらい、商談につなげるという方法。具体的には、上場企業や中堅企業を対象に、お役立ち情報や当社のサービスを紹介するダイレクトメールを郵送しました。成功した後もマーケティングに関する本を読み、反応率の高いダイレクトメールとは何かを学んでいったのです。これは、会社が成長する転機となりました。
次々とパーツを増やし、「販促の設計図」が完成
ダイレクトメールに反応があった企業をリスト化し、電話で商談につなげ、新規アポイントを増やしていきました。ところが、当時は社員5人で、人脈も実績もない中小企業です。まともに商談の仕方を習ったこともありません。そのため、発注してもらえたのはわずかで、大手企業からは皆無。信用力のなさを痛感することになりました。しかし、せっかくアポイントの機会をもらった優良顧客です。今後、別の案件での提案の機会を生み出そうと考え、ニュースレターの発行を決めました。一定の成果があり、初回アポから4年後に、仕事を発注してくれた企業もあります。
また、創立当時、簡易なホームページをつくってはいたものの、売上増への貢献にはほど遠い状態でした。そこで、取引先拡大をめざし、コーポレートサイトをリニューアルすることになります。できるだけ多くの実績を掲載し、信頼構築に努めました。そして、次の転機が訪れます。それは、会社を大きく前進させたリスティング広告です。
ある日友人から、「リスティング広告はやらないんですか? きっと成果が出ますよ」と提案され、「何なの、それは?」という感じで知ったのがきっかけでした。当社の主要サービスの1つ、社内報の広告を出稿してみると、問い合わせが激増し、オファーとして郵送したノウハウブックは、お客様から「わかりやすい」と人気を博し、商談を有利に運ぶことに役立ちました。2012年、Googleによるアップデートが適用され、「コンテンツの質」が評価されるようになったのを機に、顧客にとって有益な情報をオウンドメディアで発信する、コンテンツマーケティングが登場しました。
当社も2015年に広告・広報の情報を提供するオウンドメディア「adLive.Co」をリリース。コンテンツSEOを開始しました。いまでは、検索上位に登場する記事も増え、メールマガジンの本文から記事にリンクさせるなど、受け皿としての機能も十分に果たしています。
「販促の設計図」は、これら6つのパーツが基本。自動的にお客様が集まる仕組みをつくるには、これら6つのパーツへの投資が必要です。