Salesforceに蓄積したデータを
営業活動に活かす「KonaSearch」とは?
――SFA・CRMシステムとして日本でも多くのユーザーを擁する「Salesforce」ですが、蓄積したデータを営業活動に有効に活用するためには、どのような仕組みが必要なのでしょうか。
理想を言えば、「SalesforceのデータをGoogle的な感覚で対話的に検索して活用できる」ことではないでしょうか。それも検索のための検索ではなく、「業務のために検索する」という目的に合わせたダッシュボードで閲覧できれば、より快適にデータを業務に活用しやすくなります。
最初に、Salesforceで検索がどのような流れで処理されているのかご説明しましょう。検索は、インデックス処理とクエリ処理によって行われます。インデックス処理は、Salesforceで①レコードが作成されると、②入力されたデータはトークン化され、③検索インデックスに展開されます。
クエリ処理は、①ユーザーが検索すると、②クエリ文字列がトークン化され、③そのトークンにマッチした情報のありかがインデックスで照合されます。④それらが関連性の高い順番に並べられ、最後に、⑤検索結果を閲覧する際の権限の確認が行われ、ユーザーのアクセス権限に基づいた結果が返されます。
検索処理の基盤となるデータのトークン化に使われているのが、ベイシス・テクノロジーのテキスト解析プラットフォームである「Rosette」です。各言語の形態素を解析し、適切なトークン化を行うことで、オープンソースの全文検索システム「Apache Solr」の適合率を向上させています。
しかし、Salesforceは多くのユーザーが共通のインフラを利用するマルチテナントアーキテクチャの下で稼働しています。処理負荷の高い検索が行われることは、他のユーザーに影響を及ぼすため、検索対象や検索件数に制限がかけられています。おそらく、日本語に対しては標準的なインデックスのみを展開しているため、あいまい検索などの柔軟な検索が難しい面もあります。また、検索クエリの処理パフォーマンスも最適化されていません。
KonaSearchは、Salesforce同様Solrでインデックス処理を行っているのですが、Google クラウドプラットフォーム上で処理が行われるので、マルチテナントアーキテクチャの影響を受けることなく、高速に検索クエリを処理することができます。なお、Googleプライベートクラウド上のデータは、AES25ビット暗号化キーで暗号化されています。膨大なデータを扱う場合は、複数のSolrサーバーで負荷分散することでスケーラビリティを確保します。Salesforceのアクセス権限情報も Solrにあらかじめインデックスしてあり、クエリ時にユーザーアクセス情報とともに照合処理を行うので、検索クエリのパフォーマンスが大幅に向上しています。
Salesforceの標準画面上では、案件、取引先、見積といったオブジェクトごとに、しかもひとつのタブでひとつのレコードしか見ることができません。一方、KonaSearchでは、ユーザーダッシュボード上で複数のレコードが同時に表示されます。さらに、関連するオブジェクトのデータも一緒に表示できるので、情報を多角的に俯瞰できます。ダッシュボードは、ユーザーの業務用途に応じてカスタマイズできます。
KonaSearchでは、Salesforceのあらゆるオブジェクト、フィールド、添付、Chatterなどを検索対象に指定できます。まず「検索ボックス」に検索したい文字列を入力すると、内部で検索クエリが発行され、すべての結果が瞬時に取得され、「情報閲覧テーブル」に表示されます。そこで、「フィルター」で検索対象のフィールドの値や範囲を指定し、絞り込みます。「ファセット」も絞り込みに使うのですが、現在ヒットしている検索件数がフィールドの値ごとに表示されているので、対話的な絞り込みに適しています。 検索クエリが高速に処理されるので、ユーザーダッシュボード上での操作は、まったく別次元の検索エクスペリエンスを提供します。
たとえば、「価値創造」というキーワードで検索すると、その単語を含んだすべてのレコードが返されます。フィルターで「上場年月日」などを指定してデータを絞り込み、ファセットで「業種」フィールドの値ごとの件数を確認し、業種を取捨選択しながら絞り込んでいくというように使えます。なお、情報閲覧テーブルには、ベースとなるオブジェクトのレコードが検索関連性の高い順に表形式で表示されます。関連するオブジェクトのフィールドの値も表示することができるため、フィールドごとにソートすることも可能です。
このようにSalesforceのあらゆるオブジェクトやファイルから有効な情報を取得し、さらに必要な情報を絞り込むことができれば、新たな知見や気づきが得られ、営業自身が具体的な施策やアクションに結びつけられるようになるでしょう。加えて、検索クエリと提供されたデータのセットは検索されるほど機械学習により、マッチング精度がより高くなります。