システムの「つまみ食い」が営業組織にもたらす弊害
――今もなお経済環境は変化し続けていますが、コロナ禍のピーク時を振り返り、営業組織が直面した変化を総括していただけますか。
大きくふたつの変化がありました。ひとつはイベントが開けなくなったこと。もうひとつがお客様との対面での商談ができなくなったことです。その結果、当社でも全体の3分の1を占めていたイベントやセミナーによる新しいお客様との接触機会が失われました。デジタルマーケティングやオンラインの営業活動で引き続き接触は可能ではありますが、オンラインの営業が合う業種とそうではない業種があることもわかってきました。お客様に対面で製品の良さを伝えることができなくなった。それがここ数ヵ月で起きたことです。
――その変化の中、営業組織の選択肢としてテクノロジーを導入する動きはあったのでしょうか。
まず、自宅で営業活動ができる環境を整えるためにSFAやオンライン商談システムの導入が課題となった組織もあったと思います。既存のお客様との関係については、オンライン会議の柔軟なスケジュール設定が可能になったことで、かえって生産性が向上したという意見もありますよね。ただし、効率的に時間を使うため、商談中のゴール設定は不可欠になっていますね。その次に営業組織が取り組んだのは、これまで接点の合った見込み顧客を分析し、もう一度アプローチすることだったと思います。ここにはCRMだけでなくMAなどのシステム整備が必要となったでしょう。加えてやはり困るのは新規顧客の開拓ですよね。当初の足踏みから気持ちを切り替え、各社がウェビナーを積極的に実施する方向へとシフトしていきました。
――急な変化に対応すべく各社が個別にITを導入してしまう「つまみ食い」が起きる可能性もあるように思います。パートナーを含むエコシステム全体で営業組織を支援してきたSalesforceが考えるDXを早期実現するための「SaaSMix」の考え方について教えていただけますか。
「できるだけ早くシンプルに手をつけやすいところから取り組む」というアプローチは、ともすれば理想的なモデルの実現から遠ざかることになりかねません。というのも、ツール同士の連携では相性の良い組み合わせがあり、選択を誤ってしまうと、投資に見合った効果を得られないからです。目の前の問題を解決するためにツールを単独で導入したくなる気持ちは理解できますし、最終的には何らかのツールを導入することになるのですが、本当に解決しなければならないビジネス課題を見失わないようにしてほしいと思います。事業環境が混沌としている今ほど、自社の課題解決に資するかという視点のもとSaaSを組み合わせてデジタル基盤をつくる「SaaSMix」の考え方が重要になります。そのために、私たちはSalesforce製品とパートナーのソリューションがセキュアに連携できることを保証しているのです。