働き方改革やリモートワークなどこれまでの働き方が急激に変化しようとしている今、この春に新社会人となった方はどのように仕事をしていけばいいのか不安を感じることが少なくないはずです。上司や先輩も試行錯誤の中、それでも基本の型となるビジネスマナーは身につけておいて損はありません。
特に日常的にSNSやチャットアプリの利用が多くなり、電話・通話を使うことが減っている方の中には、社内での電話対応に恐怖を感じていることも。電話対応は、言わば一時的に会社の代表として相手とコミュニケーションすることに他なりません。
電話を受けて最初に何を言えばいいのか、担当者につなぐときはどうすればいいのか、相手の氏名や社名を聞き取れなかったらどうすべきか。不慣れでプレッシャーもあるかもしれませんが、一方で受け答えの形式を習得しておけば難なくこなせる業務でもあります。
こうした不安を解消できるビジネスマナーの教科書として、SalesZineを運営する翔泳社から発売されている『これだけ知っておけば大丈夫!「ビジネスマナー」のきほん』(監修:松本昌子)をおすすめします。
今回は「6章 電話応対を身につけよう」の一部を抜粋して紹介しますので、ぜひ参考にしてみてください。実際に使える例文や失礼のない言葉、担当者への取り次ぎやクレーム対応についても説明しています。
なお、本書では電話対応の他にも、あいさつや言葉遣い、身だしなみ、仕事の進め方、来客対応、訪問時の振る舞いやメール作成など、企業で働くために絶対に身につけておくべき基本的なマナーを解説しています
通常、電話で話すとき、電話の向こうの人はあなたが新人だということを知りません。それだけに、あなた自身の応対が、組織の代表として判断され、その応対が第一印象になります。電話を受けるときもかけるときも丁寧に、信頼できる人物や組織だと思ってもらえるような電話の応対を心がけましょう。
電話で話すときのポイント
(1)明るい声ではきはきと
顔が見えないぶん、明るく、少し高いトーンで話すと印象がよくなります。口を指が3本入るくらいの大きさに開けることを意識して、大きく動かします。早口にならず、ゆっくりと話すことも大事です。
(2)姿勢を正す
背筋が伸びていると声がはっきり出ます。ほおづえをついたり、うつむいたりすると声が出にくくなります。電話中は相手に集中し、周囲の人に話しかけるのもやめましょう。
(3)相手のことを考える
電話ではとくに「迅速」「正確」「簡潔」であることが求められます。また、相手のことを考えた丁寧な応対を心がけましょう。
(4)メモと筆記用具を準備しておく
電話のまわりにはペンとメモ用紙を用意します。電話を受けるときだけでなく、かけるときにもメモは必要です。時計とカレンダーもすぐ見られるようにしておきます。
電話のメモを準備しておく
電話を受けるときにも、かけるときにもメモは必要です。伝言メモはキレイな字で書くようにしましょう。とくに数字やアルファベットの書き分けや日時、固有名詞の間違いなどに注意しましょう。
3コール以内に出るのはなぜ?
かかってきた電話は3コール以内に出るのが原則です。3コールは大体10秒ぐらいに相当し、それ以上待たされると「待たされている」と感じてしまうそうです。せっかくお電話いただいた方を待たせないためにも、3コール以内に出ることを心がけましょう。やむを得ず4コール以上になった場合は、「お待たせいたしました」の一言を添えましょう。
基本の電話の受け方
電話応対は、相手の顔が見えないぶん、相手の声を聞き取り、迅速に応対することが求められます。基本のパターンを押さえて、感じのよい電話応対を身につけましょう。固定電話の回線が複数あり、代表電話にかかってきた場合は「会社名」を、部署等の直接番号にかかってきた場合は「社名と部署名」を名乗るとよいでしょう。
(1)電話を取る
受話器はメモを取りやすいように利き手と反対側で取ります。始業間もない時刻なら「おはようございます」と取るのもOK。「お電話ありがとうございます」という場合もあります。
(2)相手の名前などを復唱して確認する
相手の名前や会社名を聞き取り、「〇〇社、△△様でいらっしゃいますね」と復唱し、「お世話になっております」と応えます。
(3-1)自分にかかってきた場合
次のように言って話しはじめます。
「○○です。お世話になっております(お電話ありがとうございます)」
(3-2)取り次ぐ相手がいる場合
取り次ぐ場合は、「〇〇部の△△ですね」と取り次ぎ先を復唱して確認してから「少々お待ちください」と電話を保留にして取り次ぎます。取り次ぐときには電話相手の名前や所属、相手から用件を聞いたときには、それも伝えます。
(3-3)取り次ぐ相手が不在の場合
下の「取り次ぐ相手が不在時の文言集」を参考に答えます。伝言や連絡先は必ずメモを取り、相手から後ほど連絡をもらう場合も電話があったことをメモに残します。
「あいにく〇〇は席を外しております。戻りましたらこちらからご連絡いたしましょうか」
「あいにく〇〇は外出しておりまして、△時に戻る予定でございます(あるいは、本日は戻らない予定でございます)」
「あいにく〇〇は他の電話に出ております。終わりましたらこちらからご連絡いたしましょうか」
「あいにく〇〇がただいま打合せ中です。お急ぎでしょうか」
(4-1)電話を切る
あいさつして電話を切ります。基本的にかけたほうが切りますので、相手が切るのを待ってから切りましょう。もしも先に切る場合は、手でフックを押しながら切ります。メモは取り次ぎ先のデスクに届けます。
(4-2)自分が取り次いでもらったとき
「はい、お電話替わりました。○○です。お待たせしました。お世話になっております」と言ってから、電話に出ます。
迷ったときの応対
電話を受ける際には、さまざまな応対が求められます。いろいろなシーンを想定して、どのように応対すればよいかを考え、シミュレーションしてみましょう。
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相手の声が小さいとき
「申し訳ございません。お電話が遠いようです。もう一度おっしゃっていただけますか」
聞き取れないことを、素直に伝えます。
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担当者の携帯電話の番号を聞かれたとき
「〇〇より折り返しご連絡いたします」
個人の携帯電話番号は基本的に教えません。相手が急ぎであれば、連絡先を聞いた上で該当者から折り返し電話をする旨を伝え、該当者に連絡を取ります。
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就業時間外の電話
「本日は失礼いたしました」
どう答えたらいいかわからないときには「少々お待ちください」と保留にして、先輩や上司に相談しましょう。
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相手の名前を聞き漏らしてしまったとき
「恐れ入りますが、もう一度お名前をお聞かせいただけますでしょうか?」
率直に名前を尋ねます。
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問い合わせに答えられないとき
「私ではわかりかねますので、後ほど確認してご連絡いたします」
わからないときにはごまかさずに答え、必ず後で連絡します。
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間違い電話
「恐れ入ります。番号をおかけ違いのようですが、こちらは〇〇社で、電話番号は□□□です。どちらへおかけでしょうか」
番号や組織名、部署名を確認します。
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上司や同僚の家族からかかってきたとき
「いつもお世話になっております。同じ部署の○○です」
上司や同僚は「さん」づけ、あるいは役職名で名前を呼び、取り次ぎまたは伝言やかけ直しなどの意向を聞きます
組織の内情や個人的なことは上手に言い訳を
電話を取り次ぐ際に、個人的なことなど、明確に伝える必要がないこともあるでしょう。また、取り次ぐ理由がわからない電話などは、上手に断ることも重要です。
●「取り次ぐ相手が遅刻したり、トイレに行ったりしている」
「席を外しております」「外出中です」などと伝えた上で、伝言やかけ直しなどについて聞きます。
●取り次ぐ相手が休んでいる
休んでいる理由を言う必要はありません。不在にしていることと出社のめどを伝え、「替わりに承りましょうか」など、自分が答えられる範囲で応対しましょう。
●セールスの電話・いたずら電話
セールスの電話は断り、静かに切ります。いたずら電話は「業務中ですので失礼します」と一言で切りましょう。しつこければ上司に相談し、替わってもらうのも方法です。
電話で話す内容を知っていれば怖くない
仕事における電話の機能は次のとおりです。これらを意識していれば、電話の受け答えも自然にうまくできるようになるでしょう。
- 相手の今の状況を知る(相手の部署、用件を含めて)。
- こちらの状況を知らせる(名前や部署、用件、取り次ぐ相手がいるか 不在かなどを含めて)。
- 相手が今、この電話で望んでいることを確認
- 相手が望む状況にどこまで応えられるかを伝える
- こちらが今、この電話で、あるいは仕事で望んでいるかを伝える
クレーム電話への対応
電話でのクレームは、まずは謝罪、相手の話をよく聞く、相手の名前や連絡先を聞く、内容を復唱する、適切な担当者につなぐ、というステップを踏みます。誠意を持って対応するよう心がけましょう。
(1)相手の言い分を聞き、まず謝る
「ご迷惑をおかけして申し訳ございません。恐れ入りますが、もう一度状況を詳しくお聞かせいただけないでしょうか」
(2)相手の名前や連絡先を聞き、復唱する
「私、○○と申しますが、恐れ入りますが、ご連絡先をお聞かせいただけませんでしょうか」
(3-1)担当者がいる場合
適切な担当者に取り次ぎます。担当者にはクレームであること、相手の名前や所属、連絡先、聞き取った内容を伝えます。
「担当者に替わりますので、少々お待ちください」
(3-2)担当者がいない場合
電話の相手に担当者が不在で、後ほど連絡することを伝えます。自分の名前を相手に伝えて、電話を切り、すぐに担当者に伝言メモや電話などで連絡します。
「担当者から折り返しお電話いたします」
クレーム電話でとくに注意したいこと
- 何よりも相手の気持ちに配慮し、真面目な態度で
- 自分で判断できないことは勝手な判断をせず、担当部署や上司に相談する
- 話は最後まで聞く
- 名前や連絡先を復唱して、間違えないよう
- 声のトーンを落とす
- 否定的な言葉、遮る言葉を使わない
- 笑い声が聞こえると 印象が悪いため、周囲にも合図して静かにしてもらう
基本の電話のかけ方
電話をかける際は、相手の所属部署、名前、話したい内容などをまとめてから電話をかけるようにしましょう。相手が出たら、自分の会社名と名前を伝えてから、相手の名前を伝えます。相手が不在の場合は、戻り時間を確認しましょう。
(1)メモや資料を用意
電話をかける前に、メモ用紙や筆記用具、資料を用意し、カレンダーや時計も見られるようにしておきます。あらかじめ話す内容を確認し、話題にする順番を決めておきます。
(2)電話をかけ、自分の名前を名乗る
電話がつながったら、最初に自分の所属と名前を言います。電話はかけたほうから名乗るのが原則です。
「〇〇社の△△です。いつもお世話になっております」
「はじめまして。突然お電話で失礼いたします。私(わたくし)、〇〇社の者の△△と申します」
(3)取り次いでもらう
相手に取り次いでもらうときには、「ありがとうございます」「よろしくお願いいたします」などとあいさつします。
「恐れ入りますが、△△部の〇〇様はいらっしゃいますか?」
(4)相手と話す
社名と名前を名乗り、原則的には結論から話します。話が長くなるとき、相手が急いでいる場合にはかけ直します。電話が長いと判断される時間の目安は3分間です。
「お忙しいところ恐れ入ります。〇〇の件でご連絡いたしました。今お時間よろしいでしょうか」
「かしこまりました。では後ほどかけ直しいたします。何時ごろがご都合よろしいでしょうか?」
(5)相手が不在のとき
不在の際は、折り返す(場合によっては電話があったことだけを伝えてもらう)、伝言をお願いする、かけ直してもらうなどを依頼します。
「かしこまりました。では後ほどかけ直します。恐れ入りますが、何時ごろお戻りでしょうか?」
「恐れ入りますが、伝言をお願いしてよろしいでしょうか」
(6)電話を切る
電話はかけたほうが先に切るのが原則です。ただし相手が取引先、目上であれば自分がかけたとしても相手が切ったのを確認してから切るほうがいいでしょう。
相手が不在のときの3つの選択
電話の相手が不在の場合、自分から改めて電話をかける、用件を伝言してもらう、折り返し電話をもらう、といった選択があります。それぞれを見てみましょう。
自分から改めて電話をかける
こちらからの依頼、謝罪をする場合では、必ず自分から改めて電話をかけます。なかなか相手がつかまらない際は、電話があったことを伝えてもらうといいでしょう。
用件を伝言してもらう
つかまりにくい相手に対してや、急いで伝えたい内容は、伝言として残しておきます。重要な案件であれば、必ず確認が必要になります。
折り返し電話をもらう
行動が不規則な相手や、先方から「こちらからお電話いたしましょうか?」と提案があった場合はお願いしましょう。
電話があったことを伝えてもらう
込み入った用件、確認すべきことがある場合で、連絡を取りたいことをアピールするには、この方法が一番シンプルで効果的です。
電話を折り返すのはどっち?
電話を折り返すのは、受けるほうか、かけたほうかと悩むことがあるかもしれません。まず、かけたほうに用事があってかけたのであれば、「かけ直す」のが基本です。とはいえ、自分が不在だった場合は、相手にお手数をおかけしてしまったのですから、受けた側でも「かけ直す」という配慮は必要です。内容や状況によってスマートに対応しましょう。
意外に電話で依頼される道案内
取引先や顧客が自分の組織を訪問する際に電話でアクセスを聞かれることがあります。普段から目安となる建物について答えられるようにしておき、スマホやタブレットで見たときに「アクセス」が自分の組織のホームページ上のどこに掲載されているかも確認しておくといいでしょう。「今、どちらにいらっしゃいますか」「どのような交通手段をお使いですか」などと的確な質問をして誘導します。
ふだん使う言葉はビジネスではNG
電話の周囲では静かに
電話は集音効果が高く、周囲の話し声や物音を拾います。電話相手に、こちらの笑い声、怒鳴り声、雑談などが聞かれてしまうと、組織の印象を悪くします。特にクレーム電話の応対時などは、周囲の話し声などが、さらにトラブルを招くことになりかねません。誰かが電話で話している場合、その周囲では静かにしておきましょう。
「すみません」はNG
謝罪などでよく使われる「すみません」はビジネスシーンにおいてはNGです。「申し訳ございません」「お手数ですが」「恐れ入りますが」に必ず置き換えるようにしましょう。
なお、「申し訳ない」は、敬語ではありません。また、「ごめんなさい」は、相手に許してもらうことを要求する言葉なので、ビジネスシーンの謝罪では使えません。
自分からできる仕事をしよう
新入社員や若手の転職者は、入社してすぐに即戦力として仕事ができるわけではありません。それでも自分からできる仕事はたくさんあります。
例えば、電話応対をするために、自分の組織の取引先リストを作っておきましょう。取引先にどんな会社があるのかは、先輩などに聞いておきます。また、一度受けた電話の話し手は取引先リストに加えておき、二度目に電話がかかってきたときには、スムーズに取り次げるようにしておきましょう。
また、組織の一員として、電話の相手から組織について質問された場合に、すぐ答えられるようにしておきましょう。電話の相手からすれば、「知っていて当然」のことは、「知りません」では済まないのです。
所属する組織について知っておくべきこと
▼設立年月日
▼代表者名
▼社員数
▼経営理念
▼住所/電話番号
▼最寄駅
▼主な事業
▼社員の平均年齢