顧客と付き合い続けることを学んだ新卒時代
――学生時代から営業経験を積まれていたと伺いました。キャリアのスタートについて教えてください。
韓国の大学に4年間通ったのですが、学費・生活費・渡航費すべてを自分で工面していました。学生ビザなので、韓国ではバイトができません。夏と冬の長期休みに日本へ帰国し、1ヵ月の間に現金50万円以上稼ぐ必要があり、方法を模索するなかで電話回線の飛び込み営業の仕事に出会ったのがきっかけです。
商材自体は好きで売っていたのですが、バイトの営業担当ではその後のお客様のアフターフォローまで行うことができませんでした。月に100万円以上稼ぐこともありましたが、自分の学費・生活費のためと言っても、同じトークで新規開拓ばかりを繰り返す営業にやりがいや意義を感じられなくなってしまう瞬間がありました。早い段階で「なぜ自分は仕事するのか」と自身に問う良いきっかけになったと思っています。
――顧客への長期的な支援ができないことに悩まれたのですね。新卒入社する会社でも営業を希望された理由はありますか?
営業は、特殊なスキルがなくてもコミュニケーションをとり、傾聴ができれば誰でもチャレンジできる仕事です。飛び込みで度胸がつき、数をこなせるという自信はありましたし、ある程度結果も出してきていたので、自分に合っている仕事だとは思っていました。ただ、当社で経験したサービスはどれも、売ったあともお客様とお付き合いしながら長く使っていただくサービスなので「飛び込んで売る」能力自体はあまり通用しませんでしたね。
――営業職としてこれは忘れられないというエピソードはありますか?
新卒のとき僕は、飲食店の広告でマネタイズする新規事業の営業として銀座エリアを担当しました。ちょうどリーマンショックのタイミングで、1ヵ月でエリア内のお店が800店舗潰れるような状況のなか、とある店長に会ってお話を聞いてみると、涙を流されて「話を聞いてくれて、役立つ情報を提供してくれて本当に嬉しい」と。そのご縁でお客様を紹介してもらったこともあり、トップセールスになることができました。若くて営業としてのレベルはまだ高くなかったかもしれませんが、お客様と一緒にいろいろなものをつくる経験を1年めからできました。
2年めは、大阪に転勤しHOMES事業(現LIFULL HOME'S)を担当しました。事業として成長していたこともあり、問い合わせをいただいてからお客様に提案することや既存のお客様をフォローすることが多く、もっと自分発信でお客様の役に立つことができないかと考えていました。そこで、京都でも影響力のある企業を訪問した際になぜそんなに結果を出せるのか、商売のコツについて学びたいと伝えたところ、社長から「お客様と信頼関係を築く」ことなどを教えていただきました。逆に社長からは、業績は良いが「ITに弱い社員へのフォロー」や「社内のコミュニケーションの活性化」に悩みを抱えていることを打ち明けていただけました。
IT企業としての知見は持っていたので、社長に全社員を集めてもらい「ITの活用事例」をプレゼンしたり、「こんなことをすればコミュニケーションが活性化すると思いますよ」という提案を持っていったりしました。半年後くらいに社長から電話がかかってきて「いつも遊びにきてくれているが、君のところのサービスくらい紹介しなさい」と言っていただき、少し高値だけれどもっとも効率よく効果検証できるプランを提案したところ「君がそう言うなら、やるよ」と言ってもらえたことは嬉しかったですし、自信がつきました。