営業部門もテクノロジー活用を避けられない
企業内において、何かの改善を行うにあたりITの活用なしに実施することは近年考えられなくなってきていると思います。たとえば、工場の生産力向上も、店舗の効率的な運営も、経理部門の決算早期化もすべてテクノロジーの活用によって支えられています。いままでテクノロジーの活用があまり進んでこなかった営業の領域でも「Saels Tech」や「セールス・イネーブルメント」という言葉がこの1年くらいで急激に広まってきており、営業部門にもテクノロジー活用の足音が着実に近づいてきていると感じます。
本連載は前後編で構成します。前編となる今回は営業のテクノロジー化の歴史を10年単位で振り返りながら、営業部門のテクノロジー活用がどのように進化してきたかについて解説していきたいと思います。
1.営業現場へのテクノロジーの採用~販売記録とデジタル化(1995~2005年)
まず営業現場へテクノロジーが取り入れられ始めたのはいつごろでしょうか。80年代からコンピューターを活用した売上の実績管理などは行われていましたが、当時は営業活動自体への適用はされていませんでした。90年代に入り、Windows95の登場やインターネットの普及などインフラ面で大きな変化があり、企業の中にひとり1台のPCが配布されるようになったことが営業活動にテクノロジーが取り入れられるきっかけとなりました。
当時はカタログを中心に営業トークで商談を進め、さらに必要であればその場でノートなどに手書きで説明し補足をするなど、営業個人に依存した“職人技”の商談スタイルが中心でした。それを変えたのがいわゆるプレゼンテーションツールの登場です。
当時はプレゼンテーションという“発表”をするためというよりも、図形を用いた説明資料を作成することを主眼に利用され、Microsoft PowerPoint(Microsoft社)やFreelance(Lotus社)、花子(ジャストシステム社)といったツールが登場しました。これにより従来の職人技の営業スタイルから、製品紹介資料や提案資料などを作成し、それをもとに商談を行うスタイルに転換されていきました。
高度な資料の作成が可能になることで、顧客へより情報を伝えやすくなるだけでなく、いままで個人の中にしかなかった抽象的な営業ノウハウが資料というかたちで可視化され、ノウハウが共有されやすくなり全体的な営業活動の質の向上に大きく寄与しました。
またいまや当たり前となっているSFA/CRMによる活動・顧客管理も1990年代初頭に米国で登場しました。1993年にSiebel System社が、1998年にはSalesforce社が設立され、営業支援システムの普及が始まりました。
普及の背景には終身雇用の考えを持たない米国企業では営業の入れ替えも頻繁に行われるため、できるだけ個人の依存比率を落とし、人員が変わっても安定した営業品質を保てるよう営業プロセスの記録化とその管理を進める必要がありました。そしてこれらを実現するために、営業現場へのテクノロジーの採用が推進されていきました。
このように営業現場にテクノロジーの採用が始まったことは、いままで先輩・上司からの“口伝”でしかなかった営業ノウハウが資料や案件管理の定性情報として可視化・共有され始めたという大きな変革であり、営業担当者全体の販売力の向上に寄与しテクノロジーはセールスにおいて重要な役割となっていきました。