「先発完投型」から「チーム」で挑む営業組織へ
高橋(SalesZine編集部) テクノロジーを導入することと、活用して成果につなげることには大きな違いがあります。その壁を乗り越えて営業力強化や事業成長を実現するための秘訣についてお話をうかがい、ヒントを探りたいと思います。
まずは、皆さんが営業DXに挑んだきっかけを教えてください。友廣さんはなぜデジタルセールス組織の立ち上げに挑戦されたのでしょうか。
友廣(富士通) 外資系企業と比較して、日本企業の営業スタイルは「先発完投型」であり「労働集約型」だと感じていました。人さえいれば生産性が上がる、言い換えれば、1人ひとりの負担や成果に左右されやすい仕組みと言えます。
この営業スタイルを分解して分業型にすることによって、生産性や営業利益率を上げられないだろうかという仮説のもと立ち上げたのが、富士通のインサイドセールス機能を担う「デジタルセールス組織」です。セールスとマーケティングが足並みをそろえて売上にコミットするという意味でも、挑戦的な取り組みと言えますね。
高橋 外資系企業での経験と言う点では、山中さんも共通するところがあるかと思いますが、いかがでしょうか。
山中(ロート製薬) そうですね。かつて所属したIBMなどの外資系企業では、CRMやSFAを提案するベンダー側として働いていたのですが、事業側に回ると見える景色が変わるものですね。外資系企業と日本企業という観点に加えて、ベンダー側と事業側、両方の経験が活かされたと思います。
これまで経験した改革の中で、パナソニック コネクトの取り組みについてお話しすると、全社的なポートフォリオ改革にともないプロダクトの製造・販売からソリューション営業へシフトしたことが、営業DXに取り組んだ大きなきっかけです。
ソリューション営業では、幅広いステークホルダーからお客様の課題をプロアクティブに把握し、解決策を提案しなければなりません。先発完投型の個人戦では無理がありますから、営業は「チーム戦」へシフトする必要があります。チームで勝つ営業組織を実現するプロセスやプラットフォームをつくるため、DXを含む営業改革に取り組みました。
高橋 ありがとうございます。SFAやCRMの導入では、情報システム部門との連携も必要不可欠と思います。TBMさんではどのようなきっかけで営業DXに挑戦したのでしょうか。
梁田(TBM) TBMについてかんたんに紹介すると、環境配慮型素材「LIMEX」の開発・製造・販売事業と、使用済みのプラスチックおよびLIMEXを原料とした再生素材の循環を促進する「資源循環事業」のふたつのサステナビリティ領域の事業を中心に展開しているディープテックベンチャーです。
拡大フェーズに入り、これまでのように個人商店型でトップセールスだけが売上の土台をつくるのではなく、営業の「型」化によって再現性を高め、分業型で営業活動を行う必要が生じました。そのためには事業戦略を踏まえた適切なソリューションの導入が必須であり、テクノロジーやデータをあつかう情報システム部門がメインとなって、各事業部のトップと連携しながら営業DXに取り組み始めたのです。