インサイドセールスが注目される理由
インサイドセールスとは、日本語で「内勤営業」と直訳できるように、顧客のもとに訪問せず非対面で営業活動を行う手法や職種のことを指します。主に、電話やメール、チャット、Web会議システムなどを活用し、オフィスだけでなく自宅でも業務を行えるため、柔軟な働き方ができることでも注目されています。
また、インサイドセールスはマーケティングから引き継いだリード(見込み顧客)に対して適切なアプローチを行い、一人ひとりの購買意欲が高まった段階で商談を創出して、フィールドセールスにつなげる役割を担います。そのため、手当たり次第に商談を行う必要がなく、受注につながる確率が高い商談に注力できるため、少子高齢化で人手不足の日本企業にとって大きなメリットが期待されているのです。
インサイドセールスの将来性やキャリアパス
インサイドセールスは、少子高齢化が進んでいく日本では大きな将来性があると言われています。電話やメールなどを活用して効率的にアプローチを行い、受注確度の高い商談を創出できるため、少人数でも効率的に営業活動を回して生産性を向上できるでしょう。
また、企業によっては商談や受注に関わる顧客対応も、フィールドセールスに代わってインサイドセールスが行うこともあります。そうした場合、顧客は手軽に契約や手続きができるため、顧客にとってもメリットがあるでしょう。そのため、価値観や購買活動が多様化していく中で、インサイドセールスの必要性が高まっていくと言えます。
このように将来性のあるインサイドセールスですが、インサイドセールス担当者にとってもキャリアの選択肢が広がるというメリットがあります。インサイドセールスを極めてリーダーやマネージャーとして活躍するだけでなく、顧客対応のスキルを磨いてフィールドセールスとしてキャリアを築いたり、顧客へのアプローチの戦略スキルを高めるとマーケティングとしてのキャリアも考えられます。
このように、インサイドセールスは、担当者にとっても将来のキャリアパスの幅が広がるというメリットがある営業手法・職種なのです。
インサイドセールスが辛いと感じる理由
インサイドセールスとは、電話やメールなどを活用して非対面で営業活動を進める手法です。多くの企業では、マーケティングから見込み顧客(リード)を引き継ぎ、適切な情報発信とコミュニケーションで見込み度を高めてから、最適なタイミングでアポイントを獲得(商談化)してフィールドセールスへと引き渡す役割を担います。
実際の商談や受注をしないため楽な仕事だと思われることもありますが、インサイドセールスはその役割ならではの苦労や悩みもあるため、辛いと感じることも少なくありません。インサイドセールスの仕事を辛いと感じる理由には、主に以下のようなものがあります。
顧客からの冷たい態度が辛い
インサイドセールスは、マーケティングがセミナーや資料ダウンロードなどで獲得した見込み顧客を引き継ぎ、最初のアプローチを行います。しかし、引き継いだ見込み顧客の中には見込み度の低い層もいるため、電話をかけてもすぐに断られたり、メールの返信が返ってこなかったりすることもあるでしょう。
また、インサイドセールスは見込み度の低い層に対して継続的にアプローチして見込み度を高めていく役割もあるため、断られても粘り強くアプローチしなければなりません。ただし、再アプローチのタイミングを誤ると相手から不快に感じられてしまい、厳しい言葉を浴びることもあります。
このような見込み顧客からの冷たい態度から、辛さを感じる人もいるのです。
他部門の板挟みになって辛い
インサイドセールスは、一般的にはマーケティングから引き継いだ見込み顧客をフィールドセールスへトスアップする部門です。
インサイドセールスがうまくいかずなかなか案件化できないと、マーケティングからは「せっかく多くの見込み顧客を獲得したのに、無駄にしている」と不信感を抱かれることがあります。また、商談化できたとしても受注につながらなければ、フィールドセールスからは「見込み度の低い商談を引き継がないでほしい」とダメ出しされることもあるでしょう。
このようなマーケティングとフィールドセールスからの板挟みが、辛いと感じる要因となります。
顧客数や業務量が多すぎて辛い
インサイドセールスは、マーケティングから引き継いだ新規の見込み顧客にアプローチするほかに、見込み度の低い層や一度断られた見込み顧客などにもアプローチします。そのため、一人で抱える顧客数が多くなり辛さを感じるのです。
インサイドセールスは、従来のテレアポのようにコールスクリプトに沿って営業リスト順に架電していくのではなく、しっかりと相手のことを把握したうえでアプローチします。そのためには、マーケティングから情報を共有してもらったり、WebサイトやSNSなどで情報収集をしたりしなければなりません。つまり、顧客数が多くなると業務量も増えるため、ストレスにつながるのです。
業務の進め方がわからないため辛い
電話やメールによる営業手法は以前から存在していますが、インサイドセールスという一つの職種・部門として確立されるようになった歴史は古くありません。特に日本では、コロナ禍でテレワークが広まったタイミングで、インサイドセールスも広がりました。
そのため、社内にノウハウが蓄積されていなかったり、研修体制が十分ではなかったりする企業もあります。企業によっては、インサイドセールスを初めて導入するため、ゼロから作り上げていかなければならないということもあるでしょう。
このような背景から、インサイドセールスの業務の進め方がわからず、どのように成果を出していけば良いのかわからないという人もいます。新しい営業手法のインサイドセールスだからこその辛さと言えるでしょう。
単純なテレアポ業務になっていて辛い
インサイドセールスは見込み度を高めていくために、見込み顧客一人ひとりに対して最適なアプローチをして関係性を構築していく仕事です。しかし、その本質を理解できていないと、単純なテレアポ業務になりかねません。
インサイドセールスで見込み度を上げていき関係性を構築していきたいと思っている人にとっては、トークスクリプトに沿って自社の紹介をしてアポイントを獲得していく業務は、やりがいを見いだせないと感じることもあるでしょう。
KPIが適切ではないため成果が出なくて辛い
インサイドセールスは比較的新しい営業手法のため、どのようなKPIを設定すべきかわからずに進めてしまう企業もあります。その結果、以下のような事態が起こりえます。
- どれだけ多くのアポイントを獲得したかだけで成果を判断される
- 実際の営業活動と合っていないKPIを設定している
- 目標値が高すぎて達成できない
このように、KPIが適切でないと成果につながりにくくなり、辛さを感じる要因となるのです。
自社や顧客に貢献できているのかわからなくて辛い
インサイドセールスは営業職の一つですが、フィールドセールスのように商談や契約といった、直接的な売上を作る業務を担当するわけではありません。そのため、自分の努力が自社に貢献できているのかわかりにくく、モチベーションが低下する人もいます。
また、インサイドセールスは非対面で営業活動を進めることから、顧客から嬉しい言葉をかけられることも少ないかもしいれません。フィールドセールスなら「君だから契約した」「とてもわかりやすいプレゼンだった」など、感謝や賞賛の言葉をかけられることもありますが、インサイドセールスはそうした機会は少ないため、顧客に貢献できているか判断しにくいのです。
インサイドセールスのやりがい・楽しいと感じる理由とは
インサイドセールスは辛いと感じることもありますが、やりがいも大きい仕事です。見方を変えるだけでやりがいにつながるため、本章で紹介する内容を参考にしてモチベーションアップにつなげましょう。
目標に達したときの達成感がある
目標を達成できずに辛いと感じることもありますが、適切なKPIを設定することで目標達成が可能になり、大きな達成感を得られます。成果を出せたことで、モチベーションアップにつながるでしょう。
また、インサイドセールスだけの努力ではなく、マーケティングやフィールドセールスとも一丸となって成果を高めていくため、全員で同じゴールを達成できたときの喜びはひとしおです。
自身の営業スキルが磨かれる
インサイドセールスは、見込み顧客の見込み度に合わせて最適なアプローチをしていくため、営業スキルが向上します。また、見込み顧客から冷たい態度を取られても、場数をこなしていくことで「次にどのようなセールストークを繰り出すと見込み顧客の関心を引けるか」といった成功パターンができあがり、上手に切り返せるようになります。
日々の業務で培った営業スキルは、インサイドセールスの業務だけでなく、フィールドセールスやカスタマーサクセスへのキャリアチェンジの際にも役立つでしょう。
顧客の課題解決を手助けできる
インサイドセールスは一方的な押し売りではなく、見込み顧客の課題やニーズをヒアリングしたうえで自社商品・サービスの導入メリットや活用方法を提案します。課題解決のサポートにつながる仕事のため、人の役に立っているという意識で仕事に臨めるでしょう。
柔軟な働き方ができる
インサイドセールスは非対面のため訪問する必要がなく、場所を問わない点がメリットです。そのため、育児や介護などの事情がある人や、遠方の人など、オフィスに出社できなくてもリモートワークで働けます。
プライベートと仕事を両立したり、遠方でもやりたい仕事に就けたりするため、ワークライフバランスが充実してやりがいを感じながら仕事ができるでしょう。
インサイドセールスの辛さ解消対策【担当者編】
インサイドセールスが辛いと感じたまま仕事を続けていると、モチベーションが下がったり心の不調を感じたりする原因になりかねません。インサイドセールス業務に楽しさややりがいを感じるための対策を紹介します。
PDCAを習慣化し成功パターンを見つける
「顧客からの態度が冷たい」「成果が出ない」などの理由で辛いと思う場合、PDCAを行って自身の業務を振り返ってみると原因が見つかるかもしれません。自身の業務を見つめなおしてみると「このとき、こう返したらうまくいったかもしれない」という改善点や、「あのセールストークは顧客からの反応が良かった」などの成功ポイントが見つかることがあります。こうしたPDCAから成功パターンを導き出すことで成果につながりやすくなるでしょう。
新しい知識やスキルを習得する
自身の知識やスキル不足が原因で、業務に辛さを感じてしまうケースも見受けられます。たとえば、顧客からの質問にうまく受け答えできないことが多い場合は、商品・サービスに関する知識を深める必要があります。また、常にアンテナを張り巡らせ、業界動向の把握や最新トレンドなどを情報収集し、インプットすることも大切です。新たな知識やスキルの習得により、モチベーションが向上し、仕事にも自信が持てるようになるでしょう。
チーム内の成功事例を参考にする
チーム内のメンバーによる成功事例は、自身の業務に役立つ多くのノウハウやナレッジがあります。一人で業務をしていると、業務の進め方やセールストーク、提案資料などが属人化してしまい、どの点が悪いのか・良いのかも判断できません。
しかし、チーム内の成功事例を参考にすると、自分に足りない点やできていない点に気づくことができるため、業務の辛さを解消するきっかけになる可能性があります。
インサイドセールスの辛さ解消対策【マネジメント編】
インサイドセールスの辛さを解消するには、担当者の意識を変えるだけでなく、マネジメント層の工夫も重要になります。マネジメントのポイントを解説するので、ぜひ参考にしてみてください。
他部門との情報共有の仕組みを構築する
マーケティングとフィールドセールスの間にあるインサイドセールスだからこそ、他部門との情報共有は必須です。スムーズに情報を共有できないと、対応スピードが遅れたり、最適なアプローチができなかったりするため、成果につながりません。
- ツール同士を連携してデータを同期する
- ビジネスチャットやグループウェアで即座に連絡を取れるようにする
- 定期的に部門間でのミーティングを実施する
このように、他部門と情報共有できる仕組みを作りましょう。
KPIを見直し成果を見える化する
目標を達成できずに辛さを感じている担当者もいるため、KPIは定期的に見直す必要があります。自社の運用に沿ったKPI項目を設定できているか、達成可能な目標値か、といった点に注意し、適切なKPIを設定しましょう。
目標達成が難しそうな担当者に対し、アドバイスやフィードバックなどを行うことも重要です。
また、適切なKPIを設定してアポイント数や受注件数などの成果を見える化できれば、担当者は自身の貢献度を把握できます。会社に貢献していることがわかれば、モチベーションが高まりやりがいを感じられるでしょう。
教育体制の整備・定期的な1to1ミーティングの実施
インサイドセールスの営業スキル向上には、適切な教育が必要となります。各担当者によって得意・不得意が異なるため、一人ひとりに最適な教育を実施できるような教育体制が求められます。
以下は、インサイドセールスの教育として用いられる方法の一例です。
- 商材理解を深めるための座学
- 先輩社員の業務見学
- ロールプレイング
- コンサルティング会社などが行っている外部セミナーの受講
- eラーニングシステムの導入
このような方法を活用し、自社の組織に合った教育を行いましょう。
また、部下が仕事を辛いと感じているかどうかは日々の業務では見えにくいため、把握しないうちに部下のストレスが蓄積されていて、体調を崩したり退職したりすることもおこりえます。そのため、定期的に1on1ミーティングを行って状況を確認し、適切にケアすることが重要です。
マニュアル化やツール導入を検討する
組織内で営業ノウハウを共有するためには、営業マニュアルを作成してノウハウを一元的に集約しましょう。
マニュアル化の手間を削減したい場合には、ツール導入も一つの方法です。マニュアル化をサポートしてくれるマニュアル作成ツール、ノウハウ共有に特化したナレッジベース、営業活動の効率化を実現するSFA(営業支援システム)などがあります。
他社の成功事例を参考にする
インサイドセールスの体制やKPIなどの設計に課題を抱えている場合、他社の成功事例を参考にしましょう。担当者たちのモチベーションを高め、成果につなげているポイントを把握できるはずです。
こちらの記事では、インサイドセールスが成功している企業の事例を10社紹介しています。ぜひ参考にし、自社の組織体制や業務フローの構築にお役立てください。
インサイドセールス成功事例10選!メリットや成功ポイントも紹介
まとめ
インサイドセールスの仕事が辛いと感じる理由は多岐にわたるため、まずは「自分がなぜ辛さを感じているのか」を分析することが重要です。辛い理由を把握できたら、次は見方を転換してやりがいを見いだすことで、仕事に対するモチベーションをアップできます。
また、マネジメント層の工夫次第で、インサイドセールスの仕事の辛さを軽減してあげることが可能です。組織全体で業務内容や体制を見直し、インサイドセールスの成果を高めていきましょう。