「AIの価値を誰もが享受できるように」 追加料金なしですべてのAI機能を提供
冒頭に登壇したグレアム・ゲッデス氏は、「Zoomの強みのひとつは、お客様とパートナーが何を必要としているかに耳を傾け、共に革新を続けること」と語った。この考えのもと、現在Zoomがフォーカスするのは、AI、従業員体験(EX)、カスタマーエクスペリエンス(CX)、シームレスなワークフローの4つ の領域だ。会場内にはそれらの領域に特化した展示ブースも設置されていた。
すべての製品にAIを活用しながらスピーディに多様な機能を進化・統合する同社。クラウド電話Zoom PhoneやZoom Meetingといったコア機能を軸に、EXやCXにおける提供価値を拡大している。
具体的な機能の紹介に先立って、グレアム氏はZoomのプロダクト開発を支えるいくつかの理念を紹介した。
ZoomのAIでは独自の大規模言語モデルだけでなく、MetaやOpenAIといった業界をリードする第三社のモデルや、顧客企業独自のモデルを取り込むこともできるフェデレート型アプローチをとっている。これが低価格で高品質なプロダクトの提供を可能にしているのだ。
またグレアム氏はAIによる仕事効率化のメリットを誰もが享受できるようにすべきだと強調する。この考えは、2023年9月に発表された生成AIアシスタント「Zoom AI Companion(以下、AI Companion)」が、Zoomの有料サービスアカウントのユーザーに追加料金なしで提供されることにも表れている。
責任あるAIの提供と顧客のプライバシーの保護の重要性についても触れ「管理者は、生成AI機能を好きなときに有効または無効にすることができます。私たちは業界の標準を確立し、お客様のコンテンツやデータを使ってAIやサードパーティのモデルをトレーニングすることはありません」と話した。こうした思想のもと、ビデオ会議ソリューションからスタートしたZoomは、AIを活用したパワフルなコミュニケーションプラットフォームへと進化している。
AIで「遅れた会議へのキャッチアップ」もかんたんに
次に登壇したスミタ・ハシーム氏は、近年Zoomが発表した革新的な最新製品を紹介した。
注力テーマのひとつであるCXの領域では、コンタクトセンター向けソリューション「Zoom Contact Center」や、インテリジェントな会話型AIとチャットボットソリューションを融合した「Zoom Virtual Agent」、CXチーム管理のための「Workforce Management」を提供している。また今日本で注目されている製品、クラウド電話「Zoom Phone」は現在、47ヵ国で利用できるようになっている。
さらにEXの領域では、従業員のエンゲージメント向上と社内コミュニケーションを促進するプラットフォーム「Workvivo」を提供する。こうした製品のアプリケーションは拡がり、現在インテグレーションできるアプリの数は2,400以上にのぼるという。こうした全体像をもつ同社の革新をいっそう推し進めるのが、Zoomプラットフォーム全体で連携される生成AIアシスタント「AI Companion」。AI Companionは提供開始からわずか3ヵ月足らずの間に、全世界で280万件のミーティング要約の作成を達成した注目の機能だ。
ここでZVC JAPAN 技術営業部執行役員の八木沼剛一郎氏が登壇し、デモンストレーションを通してAI Companionの特徴的な機能を紹介した。
デモンストレーションでは、お客様の提案に向けた準備のための社内会議がすでに始まっているところに、八木沼氏が途中参加する設定で始まった。一部の人が会議に途中参加したために、それまでの流れを説明しなければならず、時間をロスした経験があるビジネスパーソンは少なくないだろう。こうした課題に対しAI Companionは、その時点までの会議の内容を要約することが可能だ。
デモンストレーション画面のチャット欄を見ると、八木沼氏が会議に参加する前に話されていたことや、八木沼氏の次のアクション(○○日にクライアントを訪問/イベント資料の用意など)が確認できる。また、ビデオ会議終了後は、スマートレコーディング機能によってクラウドレコーディングがチャプターごとに自動分割され、会議の内容を振り返ることができる。重要な情報は強調表示することも可能だ。
革新を続ける「Zoom Phone」そして最新製品「Workvivo」
ここで再びスミタ氏が登壇し、革新を続けるZoomの製品についてより詳細に紹介した。
スミタ氏がまず重要な製品と位置づけるのは、Zoom Phoneだ。AI CompanionはZoom Phoneでも利用可能で、コール内容の要約や次のステップの提示、ボイスメールやSMSタスクの抽出といった機能を提供する。また、統合されたダッシュボードで通話料を管理することもできる。
またZoom Team Chatでは、チャットとビデオ会議をシームレスにつなげ、ミーティング前・中・後にも継続的にチャットができる。文章の補完や返信のサポートといった機能もあり、個人単位でもチーム単位でも、リッチな外部コラボレーションを実現する。
さらにスミタ氏は「どの業界であっても、従業員のエンゲージメント向上やハイブリッドワークでのつながり、それを通じて醸成される企業カルチャーは、ビジネスと従業員の結びつきを強めるために重要です」と強調。この従業員エンゲージメントすなわちEXを向上させる製品として、Workvivoを紹介した。
Workvivoは、社内のコミュニケーションとエンゲージメントを統合し、情報が集まり、社員がつながる組織のデジタルハブとなることをコンセプトとしている。近年増加しているリモートワークと出社を組み合わせたハイブリッド型勤務に対しては、オフィスでのワークスペース予約機能を提供し、今後さらに増えるであろう出社に向けて継続的に最適化している。2024年には、予約したワークスペースまでのオフィス内での道順を案内する機能も実装予定だ。
また、会議参加者の名前を明示する「Zoom Rooms」の名前タグ機能や、レコーディングによる非同期型ビデオ機能の「Zoom Clips」など、働き方やタイムゾーンをまたいだコミュニケーション支援の機能を多数提供する。こうした機能はDTEN、Jabra、Logitech、Neat、HP Polyの認定済みのハードウェアと連携することでより効果的に活用できる。
CXとEXの両軸に広がる機能強化
スミタ氏は続いて、Zoomの最新イノベーションのひとつである「Zoom Docs」を紹介した。2024年に日本での提供開始を予定しているZoom Docsは、AIを搭載したモジュール式のワークスペースで、文書の作成やWiki、業務の委任、プロジェクトトラッキングなどさまざまな用途でリアルタイムな共同作業を可能にする。ドキュメントにZoom Meetingsやサードパーティからのコンテンツを統合できるだけでなく、AI Companionによる情報の要約や作成機能を活用することで、単純作業をスキップしてプロジェクトの内容に集中できるようになる。
EX向上を実現するこれらの新製品・機能だけでなく、2024年にはCXにおいても新しい製品・機能の提供を予定している。この領域では2022年から2023年にかけて600以上の機能をローンチしてきたが、その驚異的なスピードだけでなく、拡張性やセキュリティ、強靭さなどもZoomの特徴であるとスミタ氏は強調する。
「Quality Management」では、コンタクトセンターと顧客とのやりとりを追跡・分析し、担当者のパフォーマンスを測定したうえで改善すべきポイントを特定できる。また「Workforce Management」では、人材を適切なタイミングで配置したり、予測機能を活用して現場の工数を予測し、過度な負荷の高まりを回避したりできる。こうした機能はカスタマーエクスペリエンスの質を高めるだけでなく、従業員のエンゲージメント向上にも貢献する。
これらの製品はZoom APIを活用してサードパーティアプリと統合することで、さらに活用の幅が広がる。CRMなどのSaaSだけでなく、最近ではウェアラブルデバイスへの組み込みによる活用も見られる。これにより生産ラインや医師といった最前線で働く人たちが、手をふさぐことなくZoomの各種コラボレーション機能を活用できるようになってきているという。Zoomでは、ユーザーがこうしたサードパーティアプリを活用した適切なソリューションにいち早くたどり着けるよう、2,400以上のアプリをすでに提供している。
また、Zoomは「Microsoft Teams」との連携も進めている。OutlookカレンダーからZoom Meetingsを柔軟にセットできるほか、Zoom Phoneの連絡先とシームレスに連携することも可能だ。
競合サービスの導入よりも削減できるコストの優位性
最後にスミタ氏は、「Zoomのプラットフォームが提供する利用体験は、ビジネスにどのようなインパクトを与えているのか」という問題に触れ、Zoomの維持管理費用が低いこと、またAI Companionの活用によってさらなるコスト削減が可能になったことを強調した。具体的には、導入・トレーニングコストの34%削減、年間管理費用の33%削減などを見込んでおり、500ユーザー規模の導入であれば競合サービスの導入に比べて大幅なコストを削減できると試算している。
Zoomの統合されたプラットフォームはこうした数字の観点だけでなく、生産性、顧客および従業員の幸福度、提供サービスの質などあらゆる定性的な価値の向上にも寄与すると話し、スミタ氏はプレゼンテーションを締め括った。
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