「営業とは明るくあるべき」という思い込み
──あらためまして『トップセールスが絶対やらない営業の行動習慣』の上梓、おめでとうございます。本書は『トップセールスが絶対言わない営業の言葉』に続くシリーズ第2弾として渡瀬さんが企画されています。どのような課題感から「行動習慣」をテーマに選ばれたのでしょうか。
以前から、「行動習慣=無意識の行動」によって損をする人が多いなと感じていたんです。営業という仕事への「思い込み」のせいで、無意識に成約を逃す行動をとってしまう。これは非常にもったいない。こうすれば絶対に売れるというような売上に直結するテーマではありませんが、シリーズとして出版できないかと企画しました。
──渡瀬さん自身、リクルートでトップセールスを経験されていますね。入社当初は売れない時代もあったとうかがいました。成果を出せるようになったきっかけとは何だったのでしょうか。
リクルートでは、『リクナビ』の前身である『B-ing』や『とらばーゆ』といった求人雑誌に広告を掲載してもらう広告営業をしていました。「厳しい環境の中で自分の営業力を試したい」という思いで入社したのですが、半年間まったく売れなくて。自分なりにたくさん努力をしても結果が出ず、本当に苦しみました。
今思えば、思い込みに基づいて行動していたんです。リクルートは元気な人が多く、トークや場の盛り上げ方も上手い。そんな営業が次々と受注を決めるのを間近で見て、「営業は明るく元気で、トークが上手くないと売れないんだ」と思い込んでしまったんです。頑張って同じスタイルに挑戦したものの、やはり売れませんでした。
そんなとき、営業リーダーが「俺の営業を見に来ないか」と声をかけてくれたんです。オフィスで見る限り、リーダーも明るく元気な人。商談のときもそのように振る舞うのかと思いきや、まったく予想外の営業スタイルを見せられました。冗談で笑わせようともせず、お客様の話にぼそぼそと返事をする、おとなしい営業。その日は3件商談に行って、3件とも成約しました。「あれ、思っていたのと違うぞ」と。明るく元気に話さなくてはとばかり考えていたけれど、ほかの方法もあるのかもしれない。そこで視界が開けたんです。
それから同僚たちの商談に同行させてもらい、それぞれの営業スタイルを観察しました。以前は場の盛り上げ方やトークの上手さばかりに注目していましたが、営業リーダーとの同行以降、場を盛り上げているのは何のためか、この質問はどういう意味か、言動の目的を掘り下げて観察するようになりました。するとなんとなく、それらの「行動習慣」に共通している“売れる仕組み”がわかってきたんです。それまでは商品の良さを説明をしたり決め台詞を言ったりと「自分が話すこと」を意識していましたが、警戒しているお客様に本音で話してもらうにはどうしたら良いかという考え方にシフトしました。自分に合うかたちに置き換えて実践してみたところ、結果が出始めました。