本質は「顧客DBと分析」にあり
「インサイドセールス”だけ”では回らない!成果を出すための運用体制」と題した第1部に登壇したのはイノーバ株式会社CEOの宗像淳氏。コンテンツマーケティングを中心に顧客のマーケティング・セールス活動を支援している同社から見た、営業の状況やインサイドセールスの重要性について述べた。
「そもそも各営業担当者が売上を達成するのはとても大変なことなんですよ。お客様に会わなくてはいけないし、提案書も作らないといけない。時間は限られているのに、受注の処理もしなくてはいけない。そうなると営業は達成に向けて大型案件の1本釣りをするように動くようになります。しかし、1件に時間をとられすぎて、案件の仕込みができていないという状況に陥ってしまうのです。営業の責任者も、上から数字は課せられるけど、人手やリソースは限られているというジレンマを抱えていると思います」(宗像氏)
宗像氏は、「ピンチはチャンスですから、やり方はあると思っています。セールスフォースのザ・モデルをはじめとしたアメリカ式営業のいいところを借りてしまえばいいと思っています」と続け、これからマーケティング・セールスがおさえるべきは「コンテンツマーケティング」「マーケティングオートメーション(MA)」「インサイドセールス」だと説明。
とくに同社自身も力を入れて取り組んでいるというインサイドセールスについては、顧客と定期接触し、関係を作り、悩みを聞き、そこから商談を創る仕事だと解説。また、インサイドセールスの役割は、効率よく商談を獲得することであるのは間違いないが、本質は「顧客の声を集めて、分析する」ことにあるという。
イノーバでは、数年前からインサイドセールスが集めたデータを実際に分析している。インサイドセールスが顧客から引き出した課題をSalesforce上に貯めていき、リサーチ会社出身のマーケターがテキストマイニングを行っているという。
データ分析の結果、顧客が自社の課題について話すときに「(ウェブ)サイト」というワードをよく口にしていることがわかった。BtoBマーケティングを始めたいと思ってはいるが、その前にまずは自社のウェブサイトを良いものしなくてはいけないのではという課題を抱えている企業が多かったのである。一方、イノーバとしてはウェブサイトの制作会社は既に多く存在しているため、「自社の仕事ではない」「専用のリソースがない」と制作依頼は基本的に断ってきたという。しかしデータを見て、こんなにも課題を抱えている顧客がいたのかと気づき、新サービスとしてローンチすることを決断した。
別のパターンもある。顧客からの要望は多いがサービス化し提案することが難しい場合は、ミスマッチが起きぬようにマーケティングにおける訴求方法を変えたり、そもそもそういう要望を持っていそうな顧客へのアプローチをやめたりした。このように顧客の声が分析可能になることで、マーケティングだけでなく、セールス活動やサービス開発に至るまで、戦略的な打ち手を実行することができるようになる。
インサイドセールスが盛り上がっているとはいえ、分析ができるようにデータをためるには数年を要するため、この面白さを味わっている会社はまだ少ないと宗像氏。これから始める人たちにはぜひ、ここを目指してほしいと強調した。
新しいマーケティング施策をスタートする際には、予算が出せない会社も多いだろう。宗像氏は、1つひとつの予算を少なくしてでも、「コンテンツマーケティング」「MA」「インサイドセールス」のすべてを導入することを推奨。そうすれば確実に数字が上がり、次の予算をとることができるからだという。とくに、インサイドセールスがあれば顧客の課題が分かるようになるため、どんなコンテンツを作ればいいかが分かるようになり、MAを使ってコンテンツを配信して顧客リードを獲得する好循環が生まれる。顧客の声を会社に還元していくことができるインサイドセールスは、会社の中でコマンドセンター(司令塔)として最も重要な役割を担っていくだろうと語った。