目的が「売る」でなくなれば情報収集の優先度が上がる
[IT業界の方からの質問]
他社情報や業界についてインプットする時間と営業時間のバランスはどのように取られていますでしょうか。 私が所属している部署は、営業先が個人商店様が中心となり、デイリーでの成約が必要とされております。そのためインプットの時間を設けることで行動時間が減ることに不安があります。 一方、法人様(主にSMB)での成約も課題としてはあるため知識補填の重要性を感じております
日経新聞を毎日くまなく読んだり、書籍やウェブニュースから日々学んだりすることが必要だと思っている人も多いと思います。一方現在、論文を書くためにさまざまなトップセールス、マネージャーにインタビューを実施しており「知識を蓄える」領域についても触れるのですが、特別な勉強をしたり、時間を費やしたりしていると明言する人はひとりもいません。
大きくふたつの理由があると考えています。ひとつは、情報収集はトップセールスにとっての基本動作であり、あえてやっていると感じていないから。もうひとつは、それよりも数多くのお客様との会話や議論を通じて知識を得ているからです。
そのうえで、今回のご質問に先に回答しましょう。結論から言うと、インプットの時間の確保はどうにかするべきです。たとえば、アポとアポの間の時間。オフラインであれば移動時間も必ずありますよね。
お客様の公開情報はもちろん、ご質問者さんのような個人商店を対象にする営業であれば、その地域の世帯や家族構成のデータ、人口の増減データなどが政府や自治体から取得できますから、お客様自らは普段取得しないけれど、役に立つのではないだろうかという発想を持って情報収集をすることが重要です。
とはいえ、それでも「時間が割けない」と考えていらっしゃる方は「情報取得」と「お客様先に行く行為」を比較したときに、前者の優先順位が著しく下がってしまっているのでしょう。当然、お客様との時間は大切です。しかし、2回め、3回めも「また来てね」と言ってもらえる関係をつくろうと考えれば、お客様と会う時間と同じくらい、提供できる情報を用意する時間が重要だと考えられるのではないでしょうか。
つまり「どんな情報をお伝えするとお客様は喜んでくださるだろう」という問い、これがすべての出発地点です。トップセールスは「どうすれば売れるだろう」ではなく、お客様視点の問いを持ち、自分なりの回答を見つけに行っています。「売る」ではなく「喜んでいただく」「役に立つ」を目的にすると、考え方も準備の仕方も自ずと変わってくるかなと思います。