「コミュニケーションのくせ」を知るソーシャルスタイル
リクルートマネジメントソリューションズ「新入社員意識調査」(2020)によれば、新卒入社者が身につけたい・伸ばしたいと思っている能力のうち、もっとも多いのがコミュニケーション能力(62.6%)となっています。新型コロナウィルス感染症の拡大により、リモートでのコミュニケーション機会が増加し、コミュニケーションの難易度が高まっています。とくに営業部門など、対外折衝を必要とする職種は大きな環境変化に直面しています。
コミュニケーションスキルは、ヒアリングやプレゼンテーションなど多岐にわたりますが、現実には相手との相性によって結果が大きく左右されます。「この前は同じ説明でも上手くいったのに……」と人による反応の違いに悩んだ経験がある読者も多くいることでしょう。誰しも、話しやすいタイプの相手もいれば、こちらが委縮してしまうような苦手なタイプもいます。興味深いのは、人によって得意・不得意のタイプが異なることです。このような人のコミュニケーションのタイプを行動科学の観点から分析し、日常に応用したのが「ソーシャルスタイル理論」です。筆者は多くの営業組織の強化に携わってきました。
今回はこの理論を使ってコミュニケーションを円滑にする方法と営業組織において業績を向上させた事例を紹介します。
ソーシャルスタイルとは、1970年代に米国のデイビッド・メリル博士らが提唱をした理論(『Personal styles & effective performance.』(Merrill, D. W., & Reid, R. H. /CRC Press.))であり、世界中のビジネスに応用され、注目を浴びています。この理論は人の性格がある特徴的な行動に表れるというもので、行動傾向(言動のくせなど)を見ることで相手にとって心地よいコミュニケーション方法を把握し対策を示したものです。「感情を表す/抑える」と「意見を主張する/聞く」のふたつの観点から4スタイルに分類し、相手に合わせた対応をすることで円滑なコミュニケーションが可能になります(図1)。また、自身がどのタイプか、コミュニケーションのくせを知ることは対人スキルを高めるうえでとても有効です。
行動科学の分野で開発されたこの理論は、多くの企業においてスキル開発や組織の生産性向上のために応用されています。最近では、対面だけでなくコールセンターなど、非対面でのビジネスにも展開されています。顧客とのコミュニケーションの場面で相手の反応だけでなく、性格的特徴を意識できると、コミュニケーションの精度は格段に高まり、互いにストレスが軽減し、円滑なやりとりが可能となります。このことは多くの営業組織の活動に極めて重要な影響をもたらします。