「KKKKのK(勘、気合い、経験、根性の個人商店)」からの脱却
自身の育った営業環境を「4KのK(勘、気合い、経験、根性の個人商店)」と称し、法人向けクラウド名刺管理サービス「Sansan」導入後もなかなか名刺データが集まらなかったと語った久保氏。自社のDX推進を振り返る際、定着には相当の工夫とパワーを要したと強調した。
社内での定着にあたって、最初に久保氏が必要要件として挙げたのは、「実際の営業現場を良く知っている担当社員を推進チームにアサイン」「トップ(今回のケースでは営業統括部長)との合意形成」など、「人」に関する事柄だ。
「まず、営業現場に実際に使ってもらうべく、営業トップである営業統括部長としっかりと協力を取り付けました。具体的には、課長が集まって案件進捗を管理する会議で、エクセルのかわりにSFAでの報告を行ってもらいました。そうして上を押さえつつ、最初のトライアルは自分の元部下が課長を務めるチームに担当してもらいました」(久保氏)
トライアル初期の段階で行ったのは「協力してもらう」ための土壌を整えるだけはない。定着チームは、数十もの会議に出席するなど、操作方法などのトレーニングも抜かりなく行ったと振り返る。なぜ変革しなければならないのか、という点を共有し、ときには営業現場に寄り添ったメッセージを発信しながら、デジタル施策の定着に努めた。
定着の過程で発生した失敗に関する話題では、「マネージメントレイヤーが変われないことで問題が発生した」と語った。新しいツールを導入したのにもかかわらず、従来の案件管理入力、エクセルでの日報打ち、上司への口頭報告も並行して継続していたため、かえって現場社員の業務量が増加してしまっていたのだという。
一方、マネージメントの取り組みが功を奏した場面も紹介された。直接的なメリットが、わかりやすく現場に示されたことで、ツール活用の定着が本質的に進んだ事例だ。
「とある営業チームの話で、もともとは毎日17時半に夕礼を行っていましたが、ある時から、『この活動レポートに内容をしっかり書き込んでさえいれば、夕礼への出席は不要』というルールを設けたそうです。すると、それまで案件の入力を嫌がっていた営業メンバーも、積極的に入力をするようになった。これにより、入力は徹底され、残業時間も減少したそうです」(久保氏)