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企業の競争力を高める「営業DX」とは? 日本の営業組織の未来を探る powered by SalesZine

2024年4月18日(木)14:00~15:30

常に高い売上目標を達成し続けなければいけない営業組織。先行きの見通しが立たない時代においても成果を挙げるためには、過去の経験にとらわれず、柔軟に顧客や時代に合わせて変化し続けなければなりません。変化に必要なのは、継続的な学びであり、新たなテクノロジーや新たな営業の仕組みは営業組織の変化を助け、支えてくれるものであるはずです。SalesZine編集部が企画する講座を集めた「SalesZine Academy(セールスジン アカデミー)」は、新しい営業組織をつくり、けん引する人材を育てるお手伝いをします。

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The Model×Salesforceで営業を効率化 ミスミの新規事業meviyが挑む仕組みづくり

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 機械部品販売のパイオニアであるミスミグループは、1963年創業という老舗企業である。1977年に機械部品を規格化してカタログで販売する手法を開発し、国内外31万社以上の顧客を持つ。2016年には、カタログではカバーできない部品をウェブ上でオーダーできる新規サービス「meviy(メヴィー)」の提供を開始し、顧客を拡大している。一方、長らく「カタログが営業担当者の役割を果たす」というスタイルであったため、meviy事業ではゼロから営業組織を立ち上げることになった。そこで抱えていた課題を、「The Model」の概念とSalesforceの活用推進で解決したという同社。新しい営業の手法に柔軟に対応した同社の取り組みの軌跡と、Salesforce活用のポイントをうかがった。

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1977年のカタログイノベーションで「営業なしでも売れる」仕組みを実現

――最初に吉田さん、深田さんの今の役割を教えてください。

吉田 ミスミはカンパニー制を採用しており、ファクトリーオートメーションなど工場で稼働する設備や装置の機械部品を扱うメーカー事業や、他社ブランドを扱う流通事業などがあります。2018年に「meviy」サービスを展開するカンパニー「ID企業体」が新設されまして、私はそこの社長として事業を全般的に見る立場です。

深田 私は「ID企業体」のマーケティング推進室リーダーとして、Salesforce Sales Cloud、Pardotの活用推進を軸に営業・マーケティングの効率化を進めています。

 
(左)株式会社ミスミグループ本社 ID企業体 マーケティング推進室/リーダー 深田武晴さん
(右)株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長 吉田光伸さん

――ミスミさんは1977年、営業が不要な仕組み「カタログイノベーション」で業界を大きく変えました。第1のイノベーションの背景にはどのような課題があったのでしょうか。

吉田 当時、機械部品を買いたいお客様は、部品の形状や材質、各部分の長さなどを書き込んだ設計図面を作成してFAXで送り、見積もりを依頼していました。1週間後に部品メーカーから見積もりが返ってきて、そこで初めて価格や納期がわかる。それから電話で営業と交渉をして注文し、納期は2週間後という世界だったのです。創業者の田口弘は、注文を受ける部品の多くに共通している部分があることに気づき、基本的な部品を規格品として販売することにしました。部品の要素から規格表を作り、価格と納期をすべて記載してカタログにしたのです。カタログで選べる機械部品に関しては設計図面も不要で、見積もりを取ることもなく、短納期で手に入るということで製造業ではミスミのカタログが大ヒットしたというわけです。

 現在、カタログで扱っている商品は約3,100万点で私の知る限り世界最大です。何十年もカタログを毎年作って見込み客を含むお客様に送付しており、カタログは営業担当者としての役割を果たしてきました。現在はグローバルでも、約31万社以上のお客様がいます。世界中のものづくりの現場に確実短納期で部品を提供させていただいているという意味で、当社は「ものづくりの社会インフラだ」と考えています。お客様から「電気、ガス、水道、ミスミ」と言っていただくこともあるくらいです。

 「営業をしない」と言ってもボイスオブカスタマー(VoC:お客様の声)は常に集めていて、それを集約した形で新製品に落とし込んでいます。ミスミの組織哲学に「スモール・イズ・ビューティフル」があり、これは「創る」「作る」「売る」の機能をワンセットでチームに持たせていることにも現れています。一般的な日本企業は、製造と営業が機能別の組織になっていますが、それらをワンセットにすることでお客様からのニーズを素早く商品に反映できています。

――2016年にスタートした第2のイノベーション、3Dデータで精密機械部品の調達ができるオンラインサービス「meviy」開始のきっかけについても教えて下さい。

吉田 実は、meviyの構想自体は1985年から始まっています。カタログのビジネスモデルは非常にイノベーティブでしたが、ものづくりの現場では、独自の形状を持つ部品を必要とすることも多く、ここまで取り扱い部品を増やし続けてもカタログだけで購入できる部品は半分ほどなのです。カタログで選べる部品は早く届きますが、カタログで選べない複雑な部品はこれまでと同様に設計図面を作成し、FAXで見積もりを依頼し、長い製造納期を待つこととなります。お客様側は部品がすべて揃わないと設備や装置を完成させられませんから、複雑な部品に関しては「待つ」時間が発生してしまっていることで、ものづくりのスピードが速くならないという大きな課題がありました。この課題に対し、我々ミスミはものづくりの社会インフラである企業として長年研究開発を重ねながら解決策を模索してきました。

 meviyはこの「カタログでは選べない、図面を書いてFAXを送らなければならない部品」をターゲットとしたクラウドサービスです。設計データをウェブサイトからそのままアップロードするだけで、部品の形状などを自動的にAIが認識し、3秒ほどで価格と納期を表示します。お客様が注文ボタンを押せば、設計データが工場の機械に転送され、加工が始まります。この工程も、以前は人間が1時間ほどかけて、紙の設計図面を見ながら加工を行う機械にプログラムを入力していましたが、meviyでは設計データからプログラムを自動生成して工場の加工機械に転送することで、デジタルデータだけで見積もりから加工までを一気通貫で行っています。

 

 meviyを使うことで、カタログにはない部品を発注する際にも、設計データさえあれば即時見積もり、最短で即日出荷が可能になりました。受注してその日のうちに加工して出荷することができるのは、世界でもミスミだけだと思います。

製造業だからこそ気がついた 新規事業の営業活動に潜むムダ

――世界的にも画期的なサービスが誕生したわけですね。一方、営業活動に置いては従来の「カタログが営業担当者」とは違うスタイルを構築する必要があったのでしょうか。

吉田 meviyは2016年からサービスを開始し、2018年にカンパニー化、2019年からマーケティングを含めたセールスプロモーションを本格的に開始しています。カタログは毎年改定していくことで新商品の告知もできていましたが、本事業ではゼロから営業組織やマーケティング組織を立ち上げることから始める必要がありました。

 しかしミスミには今までの事業でお取引いただいてきた31万社以上のお客様のリストがあります。そのお客様に対して、カタログではカバーできない商品をスムーズに注文できる新しいサービスをご案内する営業活動が中心となります。「カタログが営業担当者」のときも営業がお客様先にうかがって、新商品の機能などを説明することはありましたが、meviyはまったく新しいソリューションですから、お客様にご理解いただくことに苦労しました。クラウド上に設計データをアップロードすることに不安を感じるお客様も少なくありませんでしたし、当初は認知してもらうことを第一に、既存のお客様にお知らせをしたり、展示会に出たりすることから行いました。

――営業活動を本格的に開始した2019年から、Salesforceを活用され始めたのでしょうか。

吉田 Salesforceは以前から導入していたのですが、正直使いこなせていない状態でした。営業の結果を記録として残す“箱”としての使い方にとどまっていたのです。ただ、私たちは製造業ですから、さまざまなプロセスを厳しい目で見て、無駄を排除することが身についています。その感覚で、営業においても多くの無駄が見えてきました。

 たとえば、営業担当者が客先への訪問から受注に至るまでのすべての業務を担当していたり、インサイドセールスがあらゆるステータスのお客様にひたすら「ぜひお試しください」という電話をしていたりしました。しかし、ものづくりで言う「工程」、つまり営業プロセスがあまり設計されていなかったため、一度お試しいただいたお客様が次のステップに進んでいただかないままになってしまうということが起こっていたのです。

 
株式会社ミスミグループ本社 常務執行役員 ID企業体社長 吉田光伸さん

――Salesforceを本格的に活用しようと考えたきっかけは、何だったのでしょうか。

吉田 どうも非効率な営業をしているのではないか、セールスやマーケティングのプロセスに問題があるのではないかと強い危機感・課題感を感じていたときに、2019年9月に開催されたSalesforceのイベント「Salesforce World Tour Tokyo 2019」に参加する機会がありました。そこで営業効率を最大化する「The Model」の概念を学び、「私たちが求めているのは、まさにこれだ」と直感的に感じました。

 

 The Modelは、お客様の状態をステージに分けて、それに合わせた役割分担を行い、それぞれのシングルミッションの中で生産性、効率を上げて、全員でお客様の成功を目指すという概念やプロセスです。ミスミの営業の現状に照らし合わせると、継続的に接触できていないお客様がいる、定着化に向けたご支援ができていないケースがあるなど、抜け漏れの多い状況が明確になりました。The Modelの枠組みを導入することで営業効率を劇的に向上し、より多くのお客様に価値をご提供できると考えました。

 そこで、meviyカンパニーの一大プロジェクトとして、トップマターでThe Modelの導入を決定しました。ミスミに合うThe Modelの導入を考えると必然的にその概念を体現するSalesforceの活用も必須になりました。

標準化・一元化・自動化が活用の柱 Salesforceスキルは必須の時代に

――ミスミさんならではのThe Modelをどのように急速に進めていったのでしょう。

深田 せっかくSalesforceという素晴らしい武器を持っているのに、十分な活用ができていなかったことをあらためるべく、「標準化」「一元化」「自動化」の3つの柱をベースに開発を進めていくことにしました。

 まずは標準化です。今までは営業担当者が見込み客の開拓から購入後のフォローまでを幅広く担当していました。これでは営業の負担が増える一方ですから、The Modelをベースに役割分担を明確にし、「このステージにいるお客様には誰が何をするのか」を定義して標準化していきました。

 お客様のステージに合わせて担当者が引き継いでアクションをしていくので、フォローの漏れがなくなり、業務の流れもスムーズになります。また、営業業務をステージで分けて標準化することは、人を育てることにも有効です。役割を明確にして業務をある程度絞ることで、人材が早く育ち、即戦力になっていきます。

 

 一元化は、情報基盤を統合し、業務の効率化を目指すものです。当時のmeviyカンパニーはベンチャー企業のような状態で、複数の業務が同時に進行していました。常にシステムやファイルが付け足されていくことでデータが複雑になっており、業務に必要な情報を集めるために、複数のシステムにアクセスする必要がありました。この無駄をなくし効率化するために、Salesforceを中心に情報の一元化を行いました。

 

 Salesforceで情報を一元化することで、お客様に電話をかけるときの事前調査の時間が短縮されています。以前は1件あたり30分ほどかかっていたのが、10分ほどになりました。生産性が劇的に向上し、お客様へのコンタクト数も大きく増加しました。

 
株式会社ミスミグループ本社 ID企業体 マーケティング推進室/リーダー 深田武晴さん

  自動化については、MA(マーケティングオートメーション)のPardotを活用したナーチャリングの自動化に取り組みました。シナリオというものを組んで、お客様の行動に合わせた自動メール送信を実現しています。以前はナーチャリング用のシナリオが10個程度で、しかもデータが分断していたためターゲットとなるお客様の細かいリスト化や調整ができない状態でした。今回、情報基盤を統合することでターゲットを絞る軸を増やすことができ、お客様がどの状態にいるのかがデータでわかるようになったため、そのタイミングに合わせてシナリオを活用できるようになりました。今では約30本のシナリオが自動的に回る状態になっています。

 

 事業が急成長していくとき、どこかの時点でやり方を変える必要があります。私はちょうど、個の力に頼ったスピード重視のやり方から、組織としてスケールしていくやり方への転換点を経験でき、この転換点においてThe Modelの仕組みの導入は非常にうまくフィットしたと感じています。

――Salesforceを使って良かったと感じた点について教えてください。

深田 Salesforceは、営業・マーケティング組織にとってデファクトスタンダードのツールになりつつありますから、使いこなすスキルを持っていれば転職やキャリアチェンジしてもすぐに戦力になる営業・マーケターになることができるはずです。単に記録を残すだけでなく、自分でいろいろとアイデアを考えて形にできるツールであるSalesforceを使えることは、自社の営業やマーケティングメンバーのキャリアを考えても、身につけておくべき必須スキルであると感じています。

吉田 個人的に、BtoBの営業・マーケティングのために作られているツールはまだまだ少ないと感じています。BtoBの取引は非常に複雑で、企業と個人の紐づけをしっかりデータとして残していかなければなりません。Salesforceでは標準の機能ですから、経営者から見ても非常に使いやすいです。

――ミスミさんは戦略的にSalesforceを活用すると決め、ビジネスを効率的に回すことを実現しました。これだけ活用し成果を得られた理由は何でしょう。

吉田 経営の観点では、The Modelの考え方、フレームワークに尽きると思っています。これは、ものづくりのプロセスに非常に近い考え方なのです。受注やお客様の数がものすごく増えていき、ベンチャーのような自転車操業のフェーズから、組織的に体系立ててお客様に対応していく変化の中で、The Modelがとても腹落ちしました。

――今年は新型コロナ感染症の拡大対策で、たいへんな思いをしている企業も多いと思うのですが、ミスミさんはいかがでしたか。

吉田 新型コロナの影響で、私たちもお客様も業務がリモートにシフトしていきました。ただ、meviyを利用することで出社せずともお客様はクラウド経由で部品を発注できます。営業活動もリモートでの商談が基本になっていますが、そういった意味でも、場所に縛られない働き方にSalesforceのクラウドシステムが大きく寄与しています。

――最後に、新しい営業の仕組みにチャレンジしている方々に向けて、アドバイスやメッセージをいただきたいと思います。

深田 システム構築や運用の担当者は、調整ごとも多く、社内のユーザーからは反発を受けることもあり、正直最初はあまりワクワクしないかもしれません。しかし、マーケティングの観点では、必要なデータが入手できずに効果測定に時間がかかってしまうことは避けたいですよね。初めは苦しいこともあるかもしれませんが、半年、1年間がんばって、欲しいデータがすぐ手に入るシステムを作り上げることができれば、時間を有意義に使えます。Salesforceを中心にした営業・マーケティングのシステムを作っていくことができれば、組織にとってもきっと良い未来が待っていると思います。

吉田 私たちは、The Modelの概念にもとづき、標準化・一元化・自動化の3本柱とSalesforceの活用で営業スキーム、営業プロセスを大きく変革しました。結果、meviyのユーザーは5万人を突破、対前年比で3倍と急拡大することに大きく貢献できたと思います。根源にあったのは、きちんと自社の営業のスタイルやプロセスがどうあるべきかを顧客目線で考え直すきっかけを得られたことでした。The ModelとSalesforceを導入すれば、自分たちの業務を効率化でき、労働生産性を上げることでサービス開発や顧客との時間を長く持つことができるようになりますから、必ず企業としての競争力を上げることができるはずです。

 

――製造業ならではの視点と、変化への柔軟な姿勢が非常に勉強になりました。これからのSalesforce活用の深化も楽しみです。本日はありがとうございました!

[オンデマンド動画]さらに詳しくミスミの取り組みを知りたい方はこちらから!

 今回インタビューした吉田さんは、先日開催された「Salesforce Live Sales & Service」にも登壇! その際のオンデマンド動画が公開されました。さらに詳しくミスミの営業改革を知りたい方は、ぜひこちらのページ下部からお申し込みのうえご覧ください。

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【AD】本記事の内容は記事掲載開始時点のものです 企画・制作 株式会社翔泳社

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